まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「喜びの世界(Joy to the World)」スリー・ドッグ・ナイト(1970)

 おはようございます。

 今日はスリー・ドッグ・ナイトの「喜びの世界」を。1971年のビルボード年間チャート1位になった”超”大ヒット曲です。


Joy To The World

 

    "ジェレマイアはウシガエルだった 仲のいい友達だったよ

     ヤツの言うことは一つもわからなかったけど

     一緒にワインを飲んだ

  ヤツはいつだってすごくうまいワインを持ってるんだ

  歌おうぜ!

 

 *この世界に喜びを 男子も女子もみんな

 深海の魚たちにも喜びを

 オマエとオレにも喜びを

 

 もしもオレがこの世界の王だったら

 何をするか教えるよ

 車(the cars)も柵(the bars)も戦争(the war)も捨て去って

 オマエと甘く愛し合うのさ

 歌おうぜ!

 

 *Repeat

 

 オレは女たらしだって知ってるよな

 むちゃくちゃ楽しみたいのさ

    贅沢大好きで 快楽主義者で 一途なろくでなし

 そう、一途なろくでなしさ

 

 *Repeat                             (拙訳)

 


    最初の一行 ”Jeremiah was a bullfrog”(ジェレマイアはウシガエルだった)でいきなり度肝を抜かれます。

 ジェレマイアは人名で元は旧約聖書に出てくる預言者”エレミア”だそうです。

 最初の歌詞も”Jeremiah was a Prophet”(ジェレマイアは預言者だった)

 という史実に基づいたものだったそうですが、スリー・ドッグ・ナイトのメンバーが気に入らず、書き直させてハマったのが”ウシガエル(Bullflog)”だったそうです。

   これがこの曲のツカミとしてかなり効いていて、大ヒットの隠れた要因になったんじゃないかと僕は思っています。

 

 ”Bullflog”はスラングで”ヒモ”という意味があるらしく、また”酔っ払い”と訳している方もいたり、解釈は様々なようです。

 僕は正確な解釈よりも、聖書に由来を持つジェレマイアとBullfrogという語の組み合わせのインパクトの方が重要な気がして、ここではそのまま直訳にしています。

 

 他にも例えば”Rainbow Rider”と言う言葉が出てきて、現在では完全に“ゲイ”を指すスラングのようですが、1970年当時はそこまで強い意味を持つ言葉は歌詞に使わないだろうと思い、いろいろ調べてみて”快楽主義者”という訳に落ち着きました。

 

 と、あくまでも押韻やノリが最優先な英語歌詞を、僕のような(?)生真面目な日本人が訳し始めるとツイツイ深読みして泥沼に入ってしまうのですが、この曲はあくまでも”なんだかすごく楽しい”曲というのでいいんじゃないかという気がしてきます、、、。わざわざ、有名なクリスマスソング「もろびとこぞりて」と同じタイトルにしてますし。

 

 スリー・ドッグ・ナイトはダニー・ハットン、チャック・ネグロン、コリー・ウェルズという個性の違う3人のボーカルに4人の演奏陣を加えたグループ。当時のロックバンドのほとんどがオリジナル曲をやる中で、外部のソングライターの優れた楽曲を見出してきてカバーするというスタイルはめずらしいものでした。

 

 

 この「喜びの世界」を書いたのはホイト・アクストンというフォーク、カントリー系のシンガー・ソングライター。俳優としても数多くの映画、テレビに出演している人です。

 彼はこの曲を「The Happy Song」というTVの特別番組のために書きましたが採用されず、スリー・ドッグ・ナイトの前座として回っているときに彼らに聴かせたそうです。

   スリー・ドッグ・ナイトのレパートリーは3人のボーカルがそれぞれ選んで他の二人の同意を得たら採用で、選んだ人間がメインボーカルをとるというシステムだったようです。

 ホイト・アクストンから「喜びの世界」を聞かされた3人はいいとは思わなかったようですが、その中でチャック・ネグロンはこういう「バカげた歌」がバンドを盛り上げるために必要かもしれないと思い直し、アルバム用にもう1曲必要だったこともあってレコーディングすることにしました。

 

 そのアルバム「ナチュラリー」からは最初別の曲(「One Man Band」)がシングルカットされますが、まあまあのヒット(全米19位)で終わり、その後「喜びの世界」を翌1971年にシングルカットすると500万枚を超える特大ヒットになったのです。

 

  そして同年ホイトもすかさずセルフ・カバーしています。


HOYT AXTON - "Joy to the World" (1971)

 

 

 最後にカバーを1曲。

 今年5月に亡くなった”ロックンロールのパイオニア”の重要な一人、リトル・リチャードがやはり同じ1971年にカバーしています。「The King of Rock and Roll 」という”まさに”というアルバムに収録されています。

 確かに彼にぴったりな歌ですね。


Little Richard / Joy To The World 1971