まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「そよ風のバラード (Seasons In The Sun)」テリー・ジャックス (1974)

 おはようございます。

 今日はテリー・ジャックスの 「そよ風のバラード (Seasons In The Sun)」です。

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Goodbye to you, my trusted friend
We've known each other since we were nine or ten
Together we've climbed hills and trees
Learned of love and ABC's
Skinned our hearts and skinned our knees


Goodbye my friend, it's hard to die
When all the birds are singing in the sky
Now that the spring is in the air
Pretty girls are everywhere
Think of me and I'll be there

 

We had joy, we had fun
We had seasons in the sun
But the hills that we climbed
Were just seasons out of time

 

Goodbye Papa, please pray for me
I was the black sheep of the family
You tried to teach me right from wrong
Too much wine and too much song
Wonder how I got along


Goodbye Papa, it's hard to die
When all the birds are singing in the sky
Now that the spring is in the air
Little children everywhere
When you see them, I'll be there

We had joy, we had fun
We had seasons in the sun
But the wine and the song
Like the seasons, have all gone


We had joy, we had fun
We had seasons in the sun
But the wine and the song
Like the seasons, have all gone

 

Goodbye Michelle, my little one
You gave me love and helped me find the sun
And every time that I was down
You would always come around
And get my feet back on the ground


Goodbye Michelle, it's hard to die
When all the birds are singing in the sky
Now that the spring is in the air
With the flowers everywhere
I wish that we could both be there


We had joy, we had fun
We had seasons in the sun
But the stars we could reach
Were just starfish on the beach


We had joy, we had fun
We had seasons in the sun
But the stars we could reach
Were just starfish on the beach


We had joy, we had fun
We had seasons in the sun
But the wine and the song
Like the seasons, have all gone


All our lives, we had fun
We had seasons in the sun
But the hills that we climbed
Were just seasons out of time、、、

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君にさよなら、僕の信頼できる友達
9歳か10歳の頃から知っていて
一緒に丘や木に登って
愛とABCを学んだものさ
心がちょっと傷ついたり、膝を擦りむいたりしながら

 

さよなら僕の友達  死ぬのはつらいよ
鳥たちは空で歌っているというのに
今やあたりに春は満ちて
まわりはきれいな女の子でいっぱいだ
僕のことを思ってくれれば、僕はそこにいるよ

 

僕たちは喜び、楽しみながら
太陽の季節を過ごした
だけど、僕たちが登った丘は
そこだけ違う季節だったんだ

 

さよならパパ、僕のために祈ってよ
僕は家族の中じゃ黒い羊だったね
あなたは僕に善悪を教えようとした
あんなにたくさんワインを飲んで歌って
僕が大丈夫か不思議だったよね

 

さよならパパ、死ぬのはつらいよ
鳥たちは空で歌っているというのに
今やあたりに春は満ちて
まわりは小さな子供たちでいっぱいだ
あなたが彼らに目をやれば、僕はその中にいるよ

 

僕たちは喜び、楽しみながら
太陽の季節を過ごした
でも、ワインもあの歌も
季節が去るように、みんな消えてしまった


僕たちは喜びや楽しみを満喫して
太陽の季節を過ごした
だけど、ワインも歌も
季節のように、すべて消えてしまった

 

さよならミッシェル、僕のかわいい人
君は僕を愛してくれて、太陽を見つけさせてくれた
僕が落ちこむたびに
君はいつも来てくれて
僕を立ち直らせてくれた

 

さよならミッシェル、死ぬのはつらいよ
鳥たちは空で歌っているというのに
今やあたりに春は満ちて
いたるところで花が咲いている
二人でそこにいられたらいいのにと願うよ


僕たちは喜び、楽しみながら
太陽の季節を過ごした
手が届くはずの星たちは
ただの浜辺のヒトデだったのさ

僕たちは喜び、楽しみながら
太陽の季節を過ごした
手が届くはずの星たちは
ただの浜辺のヒトデだったのさ

 

僕たちは喜び、楽しみながら
太陽の季節を過ごした
だけど、ワインも歌も
季節が行くように、みんな消えてしまった

 

僕たちの人生はずっと、楽しかった
太陽の季節を過ごしたんだ
だけど、僕たちが登った丘は
そこだけ時のない季節だったんだ、、

 (拙訳)

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 タイトルが「SEASON IN THE SUN」、邦題も「そよ風のバラード」と爽やかなタイトルがついていますが、歌詞を読んでみると、まだ若くして死のうとしている主人公が友達や父親や恋人に語りかける内容になっていることがわかります。

 考えてみれば、太陽の季節は短く儚く去ってしまうもので、作者はそこに若者の死を重ねたのでしょうし、邦題も、バラードじゃない曲調に、あえて「バラード」とつけたのは、そよ風の爽やかさに対比させるように”悲しみ”を思わせる”バラード”という言葉を置くことで、この曲の特徴を表そうとしたのかもしれません。

 

  オリジナルはベルギー出身でフランスで大成功したシャンソン歌手ジャック・ブレルが1961年に発表した「ル・モリボン(Le moribond)」。邦題は「瀕死の人」、英語のタイトルは「The Dying Man」で、和訳を読んでみると、主人公の死のうとしている気持ちをより直接的に歌われています。

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 この曲に英語詞をつけたのが、昨日このブログに登場した「ジーン」を作ったロッド・マッケン(マッキューン)でした。

    ロッドは1960年代初めにフランスに渡り、そこでブレルに出会い一緒に行動していたようです。そして、彼はブレルの曲に英語詞をつけ、彼の音楽を世界に広めることに大きく貢献することになります。

 ロッドは「ル・モリボン(Le moribond)」に歌詞をつけ、真っ先に自らがレコーディングしています。

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 歌の冒頭の歌詞は”Adieu  Émile(さよなら エミール)”と、ブレルのオリジナルと同じでフランス語のままだったんですね。

 キングストン・トリオやフォーチュンズもカバーしていますが、やはり”Adieu  Émile”と歌っています。

  しかし最大の違いはミッシェルさんが出てくるところ、もともとはこうだったんですね。

 

Adieu, Francoise, my trusted wife,
Without you I'd have had a lonely life.
You cheated lots of times but then,
I forgave you in the end
Though your lover was my friend.

”さよなら、フランソワーズ、信頼する妻よ

君がいなかったら、孤独な人生になっていたはずさ

君は何度も浮気したけれど、最後に許すことにするよ

たとえ、君の恋人は僕の友達だったとしてもね”

 

 元々、ブレルは親友に妻を奪われ失意した老人の歌として、この曲を書いたそうで、それをロッド・マッケンは忠実に英語詞にしていたようです。

 

 また、この曲はビーチ・ボーイズがアルバム「サーフズ・アップ」の時にレコーディングしてお蔵入りしていたことがファンには知られていて、その音源が今年発売された未発表音源集「FEEL FLOWS」で初めて世に出ました。

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 このレコーディングでビーチ・ボーイズからプロデューサーとして依頼されたのがテリー・ジャックスです。

 テリーはカナダ出身のシンガー・ソングライター

1960年代にポッピー・ファミリーというグループを結成し「ボビーの別れ道(Which Way You Goin' Billy?)」(1970)は全米2位の大ヒットになりましたが、曲を書いてプロデュースしていたのがテリーでした。

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 ビーチ・ボーイズと交流のあった彼は、プロデュースを依頼されるとこの「Seasons in The Sun」はどうかと、自分のアレンジしたデモを聴かせたところ、やってみようということになりました。

 しかし、テリーの話によると、ブライアン・ウィルソンは自分以外の人間がビーチ・ボーイズのプロデュースをすることに脅威を感じてテープを盗もうとしたようで、毎晩エンジニアがテープを持って帰るようになったり、マイク・ラヴやデニス・ウィルソンもかなりエキセントリックな行動をとっていて、まともなのはアル・ジャーディンとカール・ウィルソンだけという状況で、テリーは神経衰弱状態になり、曲を仕上げることができないままギヴアップしてしまったようです。

 

 しかし、テリー自身はあきらめきれず、他のアーティストにもこの曲をプレゼンしましたがうまくいかず、自分の声がこの曲に合っていると思えなかったため、しばらくこの曲は放置されることになってしまいます。

 ところがある日、家に来た新聞配達の少年に今どんな曲を作ってるかたずねられ、彼はこの曲のデモを聴かせると、少年は大絶賛したそうで、自信を持った彼は自分で歌ってレコーディングすることにしました。

 そして、その際、友人と妻が浮気をしたという歌詞を彼が書き換えるわけです。

君が僕に太陽を見つけさせて、立ち直らせてくれた、という風に。

 ここが大きいポイントですよね。生々しさがなくなり、この歌の無垢で純粋なイメージが強くなったのです。

 

 ちなみに、この曲のレコーディングにはまだ無名だったデヴィッド・フォスターが参加していたそうです。

 

 この「そよ風のバラード」がアメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリアなどで軒並みNO.1の大ヒットになると、彼は縁起を担いだのでしょうか次回作として、再び、原曲:ジャック・ブレル 英語詞:ロッド・マッケン コンビの作品を選びました。

それを最後に。

 曲は「行かないで(If You Go Away)」。シャーリー・バッシー、ダスティ・スプリングフィールドスコット・ウォーカーなどたくさんのアーティストがカバーしています、テリーのヴァージョンは全米68位でした。

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