まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲を選曲しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ラスト・ワルツ」エンゲルベルト・フンパーディンク(1967)

 おはようございます。

 今日は昨日登場したトム・ジョーンズと並ぶ1960年代イギリスの国民的歌手、エンゲルベルト・フンパーディンクです。


The Last Waltz

   パワフルなトム・ジョーンズを”松崎しげる”とするならば、落ち着いたエンゲルベルト・フンパーディンクは”尾崎紀世彦”といったところでしょうか。

   実はトム・ジョーンズの売り出しに成功したばかりのマネージャー、ゴードン・ミルズが次に手がけたのが彼でした。

 彼のほうがトムよりも4つ年上で、1950年代半ばからすでに歌手として活動していましたが成功をつかむことができませんでした。以前ルームメイトだったこともあり彼をよく知っていたゴードンは、彼に本名の”ジョージ・ドーシー”から”エンゲルベルト・フンパーティング”へと改名するよう薦めます。”トム・ジョーンズ”もゴードンの考えた芸名でした。ちなみに、”エンゲルベルト・フンパーディンク”はオペラ”ヘンゼルとグレーテル”で知られる19世紀には活躍したドイツのクラシックの作曲家の名前です。

 

 ”トム・ジョーンズ”はありふれているけど覚えやすい名前でしたが、”エンゲルベルト・フンパーディンク”は無茶苦茶レアでインパクトのある名前ですから、ベクトルとしたら真逆ですね。

 ただ、”パンチの効いた”シンガーのトムに対して、下積みが長く地味目だった彼にはインパクトの強い芸名をつける、というのは正解だったのでしょう。

 

 ゴードンはトム・ジョーンズと同じレコード会社”デッカ”との契約をまとめます。

 デビュー曲は「Dommage Dommage」で、ベルギーだけでヒットしたそうです。

   


Engelbert Humperdinck - Dommage, dommage

 そして、彼に突然チャンスが訪れます。イギリスの人気TV番組「トゥナイト・アット・ロンドン・パラディウム」に出演予定だったディッキー・ヴァレンタインという歌手が病気のため代役で出演することになり、セカンドシングルの「リリース・ミー」を歌ったのです。


Engelbert Humperdinck - Release Me [Old Video Edit] 1967

  これはエディ・ミラーという人が書いたカントリー・ソングのカバーでしたが、TVの反響は絶大で、イギリスのヒットチャートではビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー/ペニー・レイン」を蹴落として1位を獲得、イギリスのヒットチャートのランク・イン最長記録を更新し、最終的にミリオンセラーになります。

 そして、絶好調の彼は同じ1967年にもう一枚の全英NO.1ヒットでミリオンセラーとなる曲をリリースします、それがこの「ラスト・ワルツ」です。

 

 作曲、編曲はトム・ジョーンズの「よくあることサ(It's Not Unusual)」と同じレス・リード。とても同じ人が書いたとは思えないほど曲調は違いますが、かなり卓越した作曲家だったのでしょう。

 レスは幼い頃、戦時中で父親が軍隊にいて、母親たちは毎週金曜の夜になると地元のYMCAのダンスパーティーに行っていて、自分はそこで”ラストワルツ(パーティーの御開きの曲)”である「I'm Taking Home Tonight」という曲がかかるのを待っていた、という話を作詞家のバリー・メイソンにしたところ、彼が君もラスト・ワルツを書いてみたらと提案され作ったのだそうです。

 僕は昔からこの曲のAメロがすごくバート・バカラックっぽいなあと思っていたのですが、ネットを調べていたらレス・リードはこんなことを言ってました。

「僕はバートバカラックの影響をすごく受けていて、バカラックっぽい雰囲気の曲をテープに入れてバリーに渡したんだ」

 

 彼はトム・ジョーンズ同様今なお現役で、2012年には、1956年から現在まで続く老舗の音楽祭”ユーロ・ビジョン・ソング・コンテスト”で75歳でイギリス代表に選ばれ話題を呼びました。それをきっかけに2010年代に入ってイギリスでは彼の人気が再燃、 2018年に出たクリスマス・アルバムは全英5位まで上がっています。

 昨年11月には日本公演も行っていたようです。

  トム・ジョーンズ同様、エネルギッシュな男は生命力も強いんでしょうね、、。

Last Waltz

Last Waltz