まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ラスト・ワルツ(The Last Waltz)」エンゲルベルト・フンパーディンク(1967)

 おはようございます。

 今日は昨日登場したトム・ジョーンズと並ぶ1960年代イギリスの国民的歌手、エンゲルベルト・フンパーディンクです。


The Last Waltz

 

I wondered should I go or should I stay
The band had only one more song to play
And then I saw you out the corner of my eyes
A little girl alone and so shy


I had the last waltz with you
Two lonely people together
I fell in love with you
The last waltz should last forever


But the love we had was goin' strong
Through the good and bad we'd get along
And then the flame of love died in your eye
My heart was broke in two when you said goodbye


I had the last waltz with you
Two lonely people together
I fell in love with you
The last waltz should last forever


It's all over now
Nothing left to say
Just my tears and the orchestra playing
La la la la la la la la la laaa

 

I had the last waltz with you
Two lonely people together
I fell in love with you
The last waltz should last forever

 

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僕は立ち去るべきか、残るべきか
バンドがやるのはあと1曲だけ
僕の瞳の片隅に君がいた
ひとりぼっちの女の子、とてもシャイな


君と最後のワルツを踊った
孤独なふたりが一緒になって
僕は君に恋をしたんだ
ラストワルツは永遠に続くはず


でも僕らの愛は強くなっていた
いいことも悪いことも乗り越えて
そして、愛の炎は君の瞳の中から消えた
僕の心はふたつに折れてしまったのさ
君がさよならを告げた時


君と最後のワルツを踊った
孤独なふたりが一緒になって
僕は君に恋をしたんだ
ラストワルツは永遠に続くはず


もうすべてが終わった
何も言うことは残っていない
あるのは僕の涙とオーケストラの演奏だけ
ララララー

 

君と最後のワルツを踊った
孤独なふたりが一緒になって
僕は君に恋をしたんだ
ラストワルツは永遠に続くはず        (拙訳)

 

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「ラスト・ワルツ」の楽譜はこちら

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   パワフルなトム・ジョーンズを”松崎しげる”とするならば、落ち着いたエンゲルベルト・フンパーディンクは”尾崎紀世彦”といったところでしょうか。

 

   実はトム・ジョーンズの売り出しに成功したばかりのマネージャー、ゴードン・ミルズが次に手がけたのが彼でした。

 

 彼のほうがトムよりも4つ年上で、1950年代半ばからすでに歌手として活動していましたが成功をつかむことができませんでした。以前ルームメイトだったこともあり彼をよく知っていたゴードンは、彼に本名の”ジョージ・ドーシー”から”エンゲルベルト・フンパーティング”へと改名するよう薦めます。

 ”トム・ジョーンズ”もゴードンの考えた芸名でした。ちなみに、”エンゲルベルト・フンパーディンク”はオペラ”ヘンゼルとグレーテル”で知られる19世紀に活躍したドイツのクラシックの作曲家の名前です。

 

 ”トム・ジョーンズ”はありふれているけど覚えやすい名前でしたが、”エンゲルベルト・フンパーディンク”は無茶苦茶レアでインパクトのある名前ですから、ベクトルとしたら真逆ですよね。

 ただ、”パンチの効いた”シンガーのトムとは対照的に、下積みが長く地味目だった彼にはインパクトの強い芸名をつける、というのは正解だったのでしょう。

 

 ゴードンは彼をトム・ジョーンズと同じレコード会社”デッカ”との契約をまとめます。

 デビュー曲は「Dommage Dommage」で、ベルギーだけでヒットしたそうです。

   


Engelbert Humperdinck - Dommage, dommage

 

 そして、彼に突然チャンスが訪れます。イギリスの人気TV番組「トゥナイト・アット・ロンドン・パラディウム」に出演予定だったディッキー・ヴァレンタインという歌手が病気のため代役で出演することになり、セカンドシングルの「リリース・ミー」を歌ったのです。


Engelbert Humperdinck - Release Me [Old Video Edit] 1967

 

  これはエディ・ミラーという人が書いたカントリー・ソングのカバーでしたが、TVの反響は絶大で、イギリスのヒットチャートでは、今では史上最高のシングルAB面との呼び声も高い、ビートルズの「ストロベリー・フィールズ・フォーエバー/ペニー・レイン」を蹴落として1位を獲得、イギリスのヒットチャートのランク・イン最長記録を更新し、最終的にミリオンセラーになります。

 

 そして、絶好調の彼は同じ1967年にもう一枚の全英NO.1ヒットでミリオンセラーとなる曲をリリースします、それがこの「ラスト・ワルツ」でした。

 

 作曲、編曲はトム・ジョーンズの「よくあることサ(It's Not Unusual)」と同じレス・リード。とても同じ人が書いたとは思えないほど曲調は違いますが、かなり卓越した才能の持ち主だったのでしょうね。

 

 レスは幼い頃、戦時中で父親が軍隊にいて、母親たちは毎週金曜の夜になると地元のYMCAのダンスパーティーに行っていて、自分はそこで”ラスト・ワルツ(パーティーの御開きの曲)”である「I'm Taking Home Tonight」という曲がかかるのを待っていた、という話を作詞家のバリー・メイソンにしたところ、彼から”君もラスト・ワルツを書いてみたら”と提案されて作ったのだそうです。

 

 僕は昔からこの曲のAメロがすごくバート・バカラックっぽいなあと思っていたのですが、ネットを調べていたらレス・リードはこんなことを言ってました。

 

「僕はバートバカラックの影響をすごく受けていて、バカラックっぽい雰囲気の曲をテープに入れてバリーに渡したんだ」

 

 さて、彼はトム・ジョーンズ同様今なお現役で、2012年には、1956年から現在まで続く老舗の音楽祭”ユーロ・ビジョン・ソング・コンテスト”で75歳でイギリス代表に選ばれ話題を呼びました。それをきっかけに2010年代に入ってイギリスでは彼の人気が再燃、 2018年に出たクリスマス・アルバムは全英5位まで上がっています。

 昨年11月には日本公演も行っていたようです。

  トム・ジョーンズ同様、エネルギッシュな男は生命力も強いんでしょうね、、。

 

 

 

 最後は彼とトム・ジョーンズが共演している映像を見つけました。

 しかも、悪ふざけでフンパーディングがトムの「よくあることサ(It's Not Unusial)」を歌い、トムが「ラスト・ワルツ」を歌っています。

 二人ともすごい力量のシンガーですが、その”濃さ”も半端じゃないですよねw

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 追記:

下記のコメント欄で、読者の”馬鹿楽”さんから教えていただいた、ポール・アンカが書いた「二人の恋(We Made It Happen)」という曲が、バカラック調で良かったので、ぜひご紹介したく、動画を貼らせていただきます。

 

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イギリスの凄腕マネージャー、ゴードン・ミルズが手がけたアーティスト

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