まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ロコモーション(The Loco-Motion)」リトル・エヴァ(1962)

 おはようございます。

 今日はリトル・エヴァの「ロコモーション」です。

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Everybody's doing a brand new dance now
(Come on, baby, do the Loco-motion)
I know you'll get to like it if you give it a chance now
(Come on, baby, do the Loco-motion)

My little baby sister can do it with ease
It's easier than learning your ABCs
So come on, come on, do the Loco-motion with me

You gotta swing your hips now
Come on, baby, jump up, jump back
Well, I think you got the knack, whoa, whoa


Now that you can do it let's make a chain now
(Come on, baby, do the Loco-motion)
A chuga chuga motion like a railroad train now
(Come on, baby, do the Loco-motion)

Do it nice and easy now, don't loose control
A little bit of rhythm and a lotta soul
Come on, come on, do the Loco-motion with me


Move around the floor in a Loco-motion
(Come on, baby, do the Loco-motion)
Do it holding hands if you do get the notion
(Come on, baby, do the Loco-motion)

There's never been a dance that's so easy to do
It even makes you happy when you're feeling blue
So come on, come on, do the Loco-motion with me

 

You gotta swing your hips now
That's right, you're doing fine
Come on, baby
Mmm, jump up, jump back
You're looking cool
Mmm, jump up, jump back

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みんな最新のダンスを踊ってる
(さあ、ベイビー、ロコモーションしよう)
あなたも今、やってみたら、きっと好きになれるわ
(さあ、ベイビー、ロコモーションしよう)

 

私のちっちゃな妹でも簡単にできるわ
ABCを覚えるよりやさしい
だから、さあ、さあ、私とロコモーションしようよ

 

腰を振って、さあ
ベイビー、飛び上がって、後ろに飛んで
まあ、コツをつかんだみたいね

 

できるようになったから、前後一列に繋がろう
(さあ、ベイビー、ロコモーションしよう)
機関車みたいにシュッシュッポッポって動きよ
(さあ、ベイビー、ロコモーションしよう)

 

落ち着いてやるのよ、ちゃんとコントロールして
ちょっとのリズムとたっぷりのソウルで
さあ、さあ、私と一緒にロコモーションしようよ

 

ロコモーションでフロアを動きまわろう
(さあ、ベイビー、ロコモーションしよう)
もし、そうしたかったら、手をつないで
(さあ、ベイビー、ロコモーションしよう)

 

こんなにも簡単なダンスはなかったわ
ブルーな気分のときにも、ハッピーにしてくれる
だから、さあ、私と一緒にロコモーションしようよ

 

さあ腰を振って
その感じよ、上手ね
さあ、ベイビー
飛び上がって、後ろに飛んで
カッコいいわ
飛び上がって、後ろに飛んで、、        (拙訳)

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 アイドルはもちろんのこと、数年前に大ヒットした星野源の「恋」もそうでしたが、ポップスにおいてダンス、振つけの重要性が昨今とても大きくなっているように感じますが、考えてみるとポップスというのは当初からダンスと密接に関係のあるものでした。

 今回は、1960年代の踊れるポップスの代表曲「ロコモーション」をとりあげます。

 テンポの速いデジタルビートが氾濫している今の時代からしたら、ずいぶんゆっくり感じてしまいますが、、。

 ロコモーションという言葉は、日本人にも結構なじみがあると思います。サザンオールスターズは「いなせなロコモーション」、オレンジレンジはこの曲のフレーズを引用した「ロコローション」なんていうのを出していましたね。

 

 ちなみに、ロコモーションってなんなんでしょう?

  検索すると「移動する」などと出てきますが、 ” Locomotive”が「機関車」なので、"Locomotion"=「機関車の動き」という意味だと思われます。なので、この曲では、昔の日本の子供がやるような”しゅっしゅぽっぽ”みたいな振付がつけられました(手は握りこぶしになっているので、しゅっしゅっぽっぽとは違いますが)。曲名は”Loco-Motion”と、LocoとMotionの間にハイフンが入れることで、Locomotive(機関車)のMotion(動き)だというのを強調しているのでしょう。あと、Locoは「狂った」という意味もあるので、”いかれた動き”みたいな意味もさり気なくこめられていたのかもしれません。

 いい大人に、しゅっしゅっぽっぽ、って踊ろうよっていうと歌なんですから、十分にイカれてますよね(苦笑。

 

 それから、この曲が作られた時代背景を。

 1962年は大きな社会現象にまでなるダンスヒットが生まれた年です。チャビー・チェッカーの「The Twist(ツイストNo.1)」という曲です。

 


The Twist - Chubby Checker

 2013年にビルボード誌が過去55年間のヒット曲ベスト100を選びましたが、なんと1位になったのがこの「The Twist」でした。体をくねらせるダンスと相まって、空前絶後の大ブームになったわけです。

  1962年には他にも特大のダンス・ヒットがありました。ツイストの踊りの1種でジェイムス・ブラウンをルーツとする”マッシュポテト”というダンスがあって、それをフィーチャーした「Mashed Potato Time」という曲でディー・ディー・シャープという人が歌っていました。


Dee Dee Sharp - Mashed Potato Time

 マッシュポテト、荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」を踊るときの足の動きですね。

 さて、そうなると、音楽関係者はこぞって次のダンス・ヒットを作れ!とばかりにソングライターたちにオーダーをします。

 その中で、キャロル・キングとジェリー・ゴフィンという作家夫婦もいました。彼らは、ディー・ディー・シャープに歌ってもらうために「ロコモーション」を書きました。

 「マッシュポテト」の次を狙って書かれたのが「ロコモーション」だったわけで、ちょっと脱線しますがサザンオールスターズのシングル「いなせなロコモーション」のサビには”踊ろよマッシュポテト”というくだりがあって、桑田氏がこの裏話を知っていたのかどうかわかりませんが、時代的にちゃんと正確な歌詞なんだなあ、と感心してしまいました。

 

 さて、キャロルとジェリー夫妻には小さな子供がいてベビーシッターを雇っていたのですが、彼女は女性ボーカル・グループでコーラスをやっていた、なかなかの歌い手でした。彼らは自分たちのデモをよく彼女に歌わせていたそうで、この「ロコモーション」のデモも歌うことになりました。

 

 また、彼らがボビー・ダーリンというシンガーのステージで聴いたサックスの演奏に感銘を受けて、同じようなスタイルをデモに使うことにします。そのサックスはちょうど汽笛を思わせるサウンドになりました。そして、ドラムロールがエンジン音みたいになって、まさに汽車っぽい演出が出来上がったのです。。

 

 しかし残念ながら、ディーディー・サイドからはこの曲は却下されてしまいます。曲がダメだったということじゃなく、ディーディーのレーベル(チェビー・チェッカーも所属していました)”カメオ・パークウェイ”は曲作りからレコーディングまで自分たちのスタッフで賄う方針だったからのようです。

 

 ただ、そのデモの出来がすごくよかったので、少し手直ししてそのままリリースすることになります。キャロルとジェリーがいた”アルドン・ミュージック”という会社は、採用されなかった曲を自前でリリースするレーベル”ディメンション”を作るのですが、その第一号がこの「ロコモーション」でした。それだけ、売れる確信があったということなのでしょう。

 

 そして、この曲は全米1位の大ヒット。ベビー・シッターだった仮歌の女性はアルドン・ミュージックのドン・カーシュナーな発案で”リトル・エヴァ”という芸名をつけられ、一躍有名人になりました。まさに、シンデレラ・ストーリーですね。


Little Eva - Loco-motion(1962)

 

 アメリカでの大ヒットを受け、同じ1962年にフランスではシルヴィ・ヴァルタンがカバーして、フランスでNO.1になっています。フランスを代表する歌姫の一人である彼女はデビューが1961年、この「ロコモーション」は最初期のヒットになります。

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  1974年にはグランド・ファンク・レイルロードハード・ロック調でカバーしてこれまた全米1位に輝いています。プロデュースはトッド・ラングレン。少し前にSmapが出ていたソフトバンクのCMで使われていたので覚えている方も多いかと思います。

 

 グランド・ファンク・レイルロードのイメージを明るくさせる曲を探していた矢先、バンドのギタリストのマーク・ファーナーがこの「ロコモーション」を口ずさみながらスタジオに入ってきて、他のメンバーが♩カモン・ベイビー・ドゥ・ザ・ロコモーション〜🎶とコーラスをつけたそうで、それを聴いたトッドがこれだ!と思いメンバーにこの曲をやるよう説得したそうです。

 

「ちょっとひねった感じもしたし(笑)。レイルロードの名で知られていたバンドが<ロコモーション>をうたうわけだからね。ぜひともやるべきだと思ったんで、すぐさま作業に取りかかった。基本的に彼らは、ぼくのやりたいようにやらせてくれたよ」

     (「トッド・ラングレンのスタジオ黄金狂時代」)

 なるほど、このカバー、レイルロード(線路)とロコモーション(機関車)という”鉄道繋がり”だったことも、アメリカでウケた理由なんですね。

 コーラスの最高音部のファルセットはトッド自らが歌っていいるそうです。


Grand Funk Railroad - The Loco-Motion

 1988年にはカイリー・ミノーグがユーロ・ビートでカバー。こちらは全米3位。

ロコローション」という曲をやったORANGE RANGEが聴いたのは、このヴァージョンだったらしいです。


Kylie Minogue - The Loco-motion - Official Video

 「デイドリーム・ビリーバー」や「君の瞳に恋してる」などポップスが長く愛されるには、印象の強いカバー・ヴァージョンが必要だと以前このブログで書きましたが、この曲にもやはりそれがあてはまるようです。

 

 

 

 

 

 

ラッキー・ラヴ (2012リマスター・エディション)

 

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