まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ロコモーション(The Loco-Motion)」リトル・エヴァ(1962)

 おはようございます。

 アイドルはもちろんのこと、数年前に大ヒットした星野源の「恋」もそうでしたが、ポップスにおいてダンス、振つけの重要性が昨今とても大きくなっているように感じますが、考えてみるとポップスというのは当初からダンスと密接に関係のあるものでした。

 今回は、1960年代の踊れるポップスの代表曲「ロコモーション」をとりあげます。

 テンポの速いデジタルビートが氾濫している今の時代からしたら、ずいぶんゆっくり感じてしまいますが、、。

 ロコモーションという言葉は、日本人にも結構なじみがあると思います。サザンオールスターズは「いなせなロコモーション」、オレンジレンジはこの曲のフレーズを引用した「ロコローション」なんていうのを出していましたね。

 

 ちなみに、ロコモーションってなんなんでしょう?

  検索すると「移動する」などと出てきますが、 ” Locomotive”が「機関車」なので、"Locomotion"=「機関車の動き」という意味だと思われます。なので、この曲では、昔の日本の子供がやるような”しゅっしゅぽっぽ”みたいな振付がつけられました(手は握りこぶしになっているので、しゅっしゅっぽっぽとは違いますが)。曲名は”Loco-Motion”と、LocoとMotionの間にハイフンが入れることで、Locomotive(機関車)のMotion(動き)だというのを強調しているのでしょう。あと、Locoは「狂った」という意味もあるので、”いかれた動き”みたいな意味もさり気なくこめられていたのかもしれません。

 いい大人に、しゅっしゅっぽっぽ、って踊ろうよっていうと歌なんですから、十分にイカれてますよね(苦笑。

 

 それから、この曲が作られた時代背景を。

 1962年は大きな社会現象にまでなるダンスヒットが生まれた年です。チャビー・チェッカーの「The Twist(ツイストNo.1)」という曲です。

 


The Twist - Chubby Checker

 2013年にビルボード誌が過去55年間のヒット曲ベスト100を選びましたが、なんと1位になったのがこの「The Twist」でした。体をくねらせるダンスと相まって、空前絶後の大ブームになったわけです。

  1962年には他にも特大のダンス・ヒットがありました。ツイストの踊りの1種でジェイムス・ブラウンをルーツとする”マッシュポテト”というダンスがあって、それをフィーチャーした「Mashed Potato Time」という曲でディー・ディー・シャープという人が歌っていました。


Dee Dee Sharp - Mashed Potato Time

 マッシュポテト、荻野目洋子の「ダンシング・ヒーロー」を踊るときの足の動きですね。

 さて、そうなると、音楽関係者はこぞって次のダンス・ヒットを作れ!とばかりにソングライターたちにオーダーをします。

 その中で、キャロル・キングとジェリー・ゴフィンという作家夫婦もいました。彼らは、ディー・ディー・シャープに歌ってもらうために「ロコモーション」を書きました。

 「マッシュポテト」の次を狙って書かれたのが「ロコモーション」だったわけで、ちょっと脱線しますがサザンの「いなせなロコモーション」のサビには”踊ろよマッシュポテト”というくだりがあって、桑田氏がこの裏話を知っていたのかどうかわかりませんが、時代的にちゃんと正確な歌詞なんだなあ、と感心してしまいました。

 

 さて、キャロルとジェリー夫妻には小さな子供がいてベビーシッターを雇っていたのですが、彼女は女性ボーカル・グループでコーラスをやっていた、なかなかの歌い手でした。彼らは自分たちのデモをよく彼女に歌わせていたそうで、この「ロコモーション」のデモも歌うことになりました。

 また、彼らがボビー・ダーリンというシンガーのステージで聴いたサックスの演奏に感銘を受けて、同じようなスタイルをデモに使うことにします。そのサックスはちょうど汽笛を思わせるサウンドになりました。そして、ドラムロールがエンジン音みたいになって、まさに汽車っぽい演出が出来上がったのです。。

 しかし残念ながら、ディーディー・サイドからはこの曲は却下されてしまいます。曲がダメだったということじゃなく、ディーディーのレーベル(チェビー・チェッカーも所属していました)”カメオ・パークウェイ”は曲作りからレコーディングまで自分たちのスタッフで賄う方針だったからのようです。

 ただ、そのデモの出来がすごくよかったので、少し手直ししてそのままリリースすることになります。キャロルとジェリーがいた”アルドン・ミュージック”という会社は、採用されなかった曲を自前でリリースするレーベル”ディメンション”を作るのですが、その第一号がこの「ロコモーション」でした。それだけ、売れる確信があったということなのでしょう。

 そして、この曲は全米1位の大ヒット。ベビー・シッターだった仮歌の女性はアルドン・ミュージックのドン・カーシュナーな発案で”リトル・エヴァ”という芸名をつけられ、一躍有名人になりました。まさに、シンデレラ・ストーリーですね。


Little Eva - Loco-motion(1962)

 1974年にはグランド・ファンク・レイルロードハード・ロック調でカバーしてこれまた全米1位。少し前にSmapが出ていたソフトバンクのCMで使われていたので覚えている方も多いかと思います。

 このカバー、レイルロード(線路)とロコモーション(機関車)という”鉄道繋がり”だったことも見逃してはいけないですね。

 


Grand Funk Railroad - The Loco-Motion

 1988年にはカイリー・ミノーグがユーロ・ビートでカバー。こちらは全米3位。

オレンジレンジが聴いたのはこのヴァージョンらしいです。

 


Kylie Minogue - The Loco-motion - Official Video

 「デイドリーム・ビリーバー」や「君の瞳に恋してる」などポップスが長く愛されるには、印象の強いカバー・ヴァージョンが必要だと以前このブログで書きましたが、この曲にもやはりそれがあてはまるようです。

 

The Loco-Motion

The Loco-Motion

 

 

ロコ・モーション

ロコ・モーション

 

 

 

The Loco-Motion

The Loco-Motion