まいにちポップス

1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、勝手な推理、などで紹介していきます

「ドント・ゲット・ミー・ローング(Don't Get Me Wrong)」ザ・プリテンダーズ(1986)

 おはようございます。

 今日はザ・プリテンダーズの「Don't Get Me Wrong」。調べてみたら邦題が当初「ドント・ゲット・ミー・ローング」でした。”Long”じゃなくて ”Wrong”だってことを当時の日本の担当者はなんとか伝えたかったんでしょうね。発音に合わせるんだったら「ゥロング」が近いんでしょうけど、それだとちょっと奇怪ですしね。

 


The Pretenders - Don't Get Me Wrong - HD

  このPVに出てくるドラマの映像は「The Avengers」という1960年代にイギリスで放映されたスパイのものTV番組で、日本では「おしゃれ㊙︎探偵」というタイトルで放送されていたそうです。

 近年映画が大ヒットしているアメコミと同じタイトルですが違っているようで、ちなみにこちらは1998年にユマ・サーマンなどが出演してリメイクされています。

 

 さて、歌詞はこんな感じです。

 

 ”勘違いしないで あなたが通るたび

 たとえ私が眩しそうな顔をしていても 

 ネオンの光を見てるだけだから

 

 勘違いしないで  たとえ声をかけられて私があなたの車に乗っても

 海上の月の不思議な力が  潮の満ち引きを乱しているせい

 勘違いしないで

 

 勘違いしないで 私が落ち着かないのは

 花火のことを考えてたから それだってあなたが笑えば消えてしまうけど”

                              (拙訳)

  この曲を和訳されているサイトをいくつか見ると、”ツンデレ”という視点でこの曲を捉えているものがいくつかあって、なるほどなあ、と思いました。

 

 この曲を作って歌っているザ・プリテンダーズのクリッシー・ハインドはパンク・ブームが吹き荒れる1978年のロンドンのロック・シーンに颯爽と現れて以来、現在まで活躍し続けるレジェンドです。

 

 彼女は子供の頃の自分は、決して女の子っぽくなくいつもおてんばだった、と以前のインタビューで答えています。

「裁縫には本当に夢中になって、人形に着せる服とか作ったわ、でも他の女の子たちがキックボールで遊ぶ男の子たちを見に行くとになると、私は、自分が馬だってフリをしたものよ」

 

 このエピソードは、この曲の歌詞の”素直になれない”ことから感じる可愛らしさと繋がっているように思えます。

 

 ツンデレは”テクニック”ですが、この曲の主人公は”どうしようもなくそうしてしまう”もので、彼女のパーソナリティと直結した率直さなんだと思います。その”嘘のなさ”がまた魅力になっていると思います。

 

 プリテンダーズはイギリスでデビューしたバンドですが、クリッシーは アメリカのオハイオ州で生まれ育っています。16歳からバンド活動を始め、19歳で大学を中退し世界を旅し始めます。そして1973年からイギリスに住み始め、有名なロック評論家と付き合うことで彼女も音楽誌のライターの仕事をすることになります。それに並行して、セックス・ピズトルズの仕掛け人だったマルコム・マクラーレンとデザイナーのヴィヴィアン・ウエストウッドが共同で経営するブティックでも働き、そのとき店にはパンクのアーティストが次々と来たようです。

 彼女によると、パンク・シーンは”男社会”では決してなかったとのことで、女だからという差別がなく楽器が引ければいいということもあって、自分もやろうと思ったそうです。

 しかし、ブティックで培ったミュージシャンの人脈があり、仲間はみんなバンドを組めたのに、彼女だけなかなかバンドが組めませんでした。そして、毎晩ギターを抱えてありとあらゆるクラブを巡って、メンバーを探したそうで、そしてようやくできたのがプリテンダーズでした。

 そして、デビューした時、彼女は27歳でした。

 (ヴァネッサ・カールトンは自身が若くして成功したことでの挫折があったせいで”デビュー・アルバム作るのは28歳が最適説”を説いていましたが、その歳に近いクリッシーが息長く成功していることを考えると、あながち間違ってないかもなあ、などと思ってしまいます)

 

 彼女の魅力は、まず声、そしてソングライティングにも長けている、という音楽的な資質はもちろんですが、それを支える”彼女の姿勢”にもあるように思います。

 男に負けまいという過剰な反応はせず、しかし女性であることを高らかに掲げることもない、あくまでもナチュラルで率直であることを貫いています。そして、そこからブレのない説得力が生まれています

 だから、たとえソリッドでエッジの効いたロックンロールの中であっても、とても自然に彼女らしい女性らしさがにじみ出てくるわけです。

 

 モータウン調の売れ線ポップス風に聴こえるこの曲も、それだけでは決して終わっていないように思えます。

 
 最後にこの曲のカバーを二つ紹介します。

 1980年代後半から90年代前半にかけて活動したドイツの ネオ・ロカビリー・バンド”SPEEDOS"。


Speedos - Dont get me wrong

  そして、「キス・ミー」のシックス・ペンス・ナン・ザ・リッチャーのボーカル、リー・ナッシュ。


Leigh Nash - Don't Get Me Wrong (Lyric Video)

 

 

 

ゲット・クロース

ゲット・クロース