まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「マギー・メイ (Maggie May)」 ロッド・スチュワート(1971)

 おはようございます。

 今日はロッド・スチュワートの「マギー・メイ」です。

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Wake up, Maggie, I think I got something to say to you
It's late September and I really should be back at school
I know I keep you amused, but I feel I'm being used
Oh, Maggie, I couldn't have tried any more

You led me away from home, just to save you from being alone
You stole my heart, and that's what really hurts

The morning sun, when it's in your face really shows your age
But that don't worry me none in my eyes, you're everything
I laughed at all of your jokes, my love you didn't need to coax
Oh, Maggie, I couldn't have tried any more

You led me away from home, just to save you from being alone
You stole my soul, and that's a pain I can do without

All I needed was a friend to lend a guiding hand
But you turned into a lover, and, mother, what a lover you wore me out
All you did was wreck my bed, and in the morning, kick me in the head
Oh, Maggie, I couldn't have tried any more

You led me away from home 'cause you didn't wanna be alone
You stole my heart, I couldn't leave you if I tried

I suppose I could collect my books and get on back to school
Or steal my daddy's cue and make a living out of playing pool
Or find myself a rock 'n' roll band that needs a helping hand
Oh, Maggie, I wished I'd never seen your face

You made a first-class fool out of me
But I'm as blind as a fool can be
You stole my heart, but I love you anyway

Maggie, I wished I'd never seen your face
I'll get on back home one of these days

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起きろよ、マギー

僕はあんたに言わなくちゃいけないことがある

9月も終わりだから、マジで学校に戻らなくちゃいけないんだよ

僕はあんたを楽しませてきたけど

利用されていたような気もする

ああ、マギー、これ以上僕はがんばれなかったんだよ

 

あんたは僕を家から連れ出した

ただ、自分を孤独から救うためにね

あんたは僕の心を奪った

そして、それが本当に辛いんだ

朝の陽射しがあんたの顔に当たると、

あんたの年齢がはっきりわかるよ

だけど気にしないさ

僕の目に映るのはあんただけだから

あんたのジョークにいつも笑ったよ
愛しい人よ、あんんたはおだてる必要なんかなかった

ああ、マギー、これ以上僕には無理だったんだよ

 

あんたは僕を家から連れ出した

ただ、自分を孤独から救うためにね

僕の魂を盗んだ、それが余計に苦痛だったんだ


僕に必要なのは 手を貸してくれる友達だったんだ

だけどあんたは恋人になり、母親になった

なんて恋人だ 僕を疲れ果てさせて

あんたがやったことと言えば

ベッドをぶっ壊し、朝になると、僕の頭を蹴ることさ

ああ、マギー、これ以上僕には無理だったんだよ

あんたは僕を家から連れ出した

ただ、ひとりになりたくなかったから

君は僕の心を奪ったから

がんばってみても、あんたから離れられなかった

 

教科書を集めて 学校に戻ることにしよう
でなかったら、親父のキューを盗んで ビリヤードで生きてゆくか

それともメンバーの足りないロックンロール・バンドにいるかもね

ああ、マギー、もう二度とあんたの顔を見ないことを願うよ

あんたは僕を最高クラスのバカにしてくれた

だけどバカと同じくらい、僕は何も見えていなかったんだ

あんたは僕の心を盗んだ、だけどとにかくあんたを愛してるよ

マギー、もう二度とあんたの顔を見ないことを願うよ
僕は近いうちに家に帰るよ             (拙訳)

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 この曲はロッド・スチュワートのソロとしての初めてのヒット曲で、しかも全米、全英ともに5週間連続1位となる破格のヒットとなり、今なお彼の代表作の一つとして知られています。

 

 この曲は当初シングルのB面でした。A面はアメリカのフォーク・シンガー、ティム・ハーディンが1965年に発表した「Rason To Believe」。


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 しかしラジオのDJたちが「マギー・メイ」のほうを気に入り、盛んにオンエアしたためこちらがヒットしたのです。

 シングル盤がポピュラー・ミュージックのメイン・フォーマットであった時代、A面B面の逆転ヒットというのがたまにあって、それもまた面白いものでした。

 「マギー・メイ」の時代では、エルトン・ジョンの「僕の歌は君の歌(Your Song)」(1970年)やスティーヴィー・ワンダーの「マイ・シェリー・アモール」(1969)もそうでした。

 邦楽で僕がよく記憶しているのは、ダウンタウン・ブギウギバンドの「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」とか松田聖子の「SWEET MEMORIES」あたりがB面から”逆転ヒット”になりました。

 

 さて、この曲は、ロッドが当時スチームハマーというブルース・ロック・バンドのギタリストだったマーティン・クィテントンと一緒に作りました。彼の自宅で、クィテントンがコードを弾き、ロッドが歌メロを考えているうちに、彼は民謡の「マギー・メイ」の歌詞を歌い始め、それが、束の間で嫌な記憶となる女性関係を持った10年前のことを思い出させました。彼がラフな歌詞をつけて歌ったデモを作り、そのあとで歌詞に取り掛かり、ノートにアイデアを書き込んで、年上の女性に恋をした男が、心奪われながらと戸惑いを抱くというストーリーにたどり着いたそうです。

   民謡の「マギー・メイ(Maggie Mae)」とは、イギリスのリヴァプールで19世紀から歌われていたもので、”マギー・メイ”という悪名高い娼婦が出稼ぎ帰りの水夫に窃盗を働いて捕まり、街を追い出されたというものなのだそうです。

 

  1950年代にイギリスで大流行した”スキッフル”(ジャズやブルースなどとミックスされたフォーク・ミュージック。イギリスではロックンロールへと繋がってゆきます)のレパートリーとして有名になり、ビートルズは前身バンド”クオリーメン”時代に演奏していたそうで、アルバム「レット・イット・ビー」でも、歌の一部ですが録音し、収録しています。

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Oh dirty Maggie Mae they have taken her away
And she never walk down Lime Street any more
Oh the judge he guilty found her
For robbing a homeward bounder
That dirty no good robbin' Maggie Mae
To the port of Liverpool
They returned me to
Two pounds ten a week, that was my pay

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ああ、汚れたマギー・メイ、彼らは彼女を連れ去ってしまった
そして彼女はもうけっしてライム・ストリートを歩けないさ
ああ、裁判官は彼女を有罪にした
帰港中の船乗りから金を奪ったから
汚れた悪質な強盗犯マギー・メイ
リバプールの港へ
ヤツらはオレを返してくれた
週に2ポンド10セント、それがオレの給料だった)(拙訳)

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   ロッド・スチュワートが曲を作る時に、最初この曲の歌詞をのせていたんですね。

   それから、彼が言う10年前のこととは、彼が16歳の時にある野外のジャズフェスに忍び込んだ時、ビール売りのテントの中で見知らぬ年上の女性から関係を強要されたことがあったということで、それが「マギー・メイ」の歌詞に多かれ少なかれ影響を与えていると音楽誌で彼は語ったようです。

 

 音楽的には、やはりこの曲は弦楽器の魅力が最大限に出ているように思えます。

 アコギはロッドとこの曲を作ったマーティン・クィテントン、そして、12弦とエレキギターとベースをロン・ウッド、そしてマンドリンを当時”リンディスファーン”というグループにいたレイ・ジャクソンが弾いています。

 当初レイは「マンドリン・ウィンド」という曲のためにレコーディングに呼ばれたのですが、録音が終わるとロッドから”アルバムに入るかどうかまだ決まっていないけど”という前置きで「マギー・メイ」のパートを依頼され、歌の最後の方に出てくるあの有名なフレーズを思いついて演奏したのだそうです。

 

 ところが、ロッドはアルバムの演奏者のマンドリン奏者名の表記を「"マンドリンはリンディスファーンのマンドリン奏者が弾いた。名前は私の頭から抜け落ちている"

としてしまいます。

 そして、このことを根に持ったわけではないでしょうが、レイは後年マンドリンのフレーズは曲の一部になっているということで、曲の権利を主張したそうです(訴訟までは起こさなかったようですが)。

 

 ポップ・ミュージックの歴史の中では、最低限のギャラしかもらっていない演奏者が、曲の売り上げを左右するようなフレーズを弾くことは頻繁に起こってきたわけで、その権利をどうするかというのは実に悩ましいことだと思います。

 

 さて、この曲が収録されているアルバム「エヴリ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー」では、この曲の前に「Henry」というマーティン・クィティントンが作って演奏している短い曲があって、そこからの流れで聴く「マギー・メイ」が僕は好きなんです。

 それを最後に。

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