まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ルージング・マイ・レリジョン(Losing My Religion)」 R.E.M(1991)

 おはようございます。

 今日はR.E.Mの「ルージング・マイ・レリジョン」です。


R.E.M. - Losing My Religion (Official Music Video)

 

 ”ああ、人生は思うより大きくて 君の存在よりも大きいんだ

  君は僕ではないけど 

     これから僕が進む距離の長さは  君の目には遥か彼方に見える

  ああ、僕はかなり言い過ぎた   やってしまった

      

     隅にいるのは僕だ  スポットライトを浴びているのも僕だ

  我を忘れて

     なんとか君についていこうとしている

  だけど、それができるかどうかわからない

     ああ 僕はしゃべり過ぎた 本当はしゃべり足りない

 

   君の笑い声が聞こえた気がした

   君の歌声が聞こえた気がした

      君がやろうとするのを見た気がしたと思うんだ

 

    起きている間に僕が囁いたことすべての中から

    僕は告白することを選んでいる

    君から目を離さないようにしながら

       まるで傷つき、道に迷い、目の見えない愚か者みたいに

    ああ、僕はかなり言い過ぎたかな   やってしまった

 

  よく考えて よく考えるんだ 最大のヒントを

     よく考えるんだ  跪くように転んで、失敗してしまったことを

  この空想がもっとエスカレートしたらどうなるだろう?

   また僕はしゃべり過ぎた

 

     君の笑い声が聞こえた気がした

     君の歌声が聞こえた気がした

        君がやろうとするのを見た気がしたと思うんだ

 

        だけどそれはただの夢 それはただの夢だったんだ

 

  隅にいるのは僕だ  スポットライトを浴びているのも僕だ

     理性を失って

       なんとか君についていこうとして

    それができるかどうかわからない

       ああ 僕はしゃべり過ぎた 本当はしゃべり足りない

 

        君の笑い声が聞こえた気がした

     君の歌声が聞こえた気がした

        君がやろうとするのを見た気がしたと思うんだ

  

        だけどそれはただの夢

   挑んで、泣いて、どうしてまた挑む

  それはただの夢 ただの夢 ただの夢  ”  (拙訳)

  

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Oh, life It's bigger
It's bigger
Than you and you are not me
The lengths that I will go to
The distance in your eyes
Oh no, I've said too much
I set it up

That's me in the corner
That's me in the spotlight
Losing my religion
Trying to keep up with you
And I don't know if I can do it
Oh no, I've said too much
I haven't said enough

I thought that I heard you laughing
I thought that I heard you sing
I think I thought I saw you try

Every whisper
Of every waking hour
I'm choosing my confessions
Trying to keep an eye on you
Like a hurt lost and blinded fool, fool
Oh no, I've said too much
I set it up

Consider this
Consider this
The hint of the century
Consider this
The slip
That brought me to my knees
Failed
What if all these fantasies
Come flailing around
Now I've said too much

I thought that I heard you laughing
I thought that I heard you sing
I think I thought I saw you try

But that was just a dream
That was just a dream

That's me in the corner
That's me in the spotlight
Losing my religion
Trying to keep up with you
And I don't know if I can do it
Oh no, I've said too much
I haven't said enough

I thought that I heard you laughing
I thought that I heard you sing
I think I thought I saw you try

But that was just a dream
Try, cry why try
That was just a dream, just a dream, just a dream

 

Writer/s: William Thomas Berry, Peter Lawrence Buck, Michael E. Mills, John Michael Stipe

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マンドリンの「戦メリ」に似たフレーズから作られていったメロディに、ポリスの「見つめていたい」に触発された歌詞がのった<報われない愛の歌>

 

” Losing My Religion”は直訳すると”信仰を失う”ですが、この曲の歌詞を書いたR.E.Mのマイケル・スタイプによるとアメリカ南部特有の言い回しで「何かにひどくフラストレーションを与えられたときに」使うそうです。

 例えば、結婚式でおじさんが立ち上がってスピーチをはじめて、なかなかやめそうもないと感じた時に、

 ”I almost lose my religion”

 などと言うようで、思った以上にカジュアルで日常的なもののようです。

 

  曲名とビデオ・クリップの印象で、”信仰心を失う”歌なのだと僕は長い間思い込んでいましたが、マイケル・スタイプは”報われない愛”についての歌なのだと語っています。

 

   R.E.Mの代名詞とも呼べる大ヒット曲であり、バンドのギタリストのピーター・バックいわく”カルトからリスペクトされるバンドから世界的なビッグ・バンドへと移行する”中核”となった曲でもあるこの「ルージング・マイ・レリジョン」は特殊な成り立ちでできた曲でした。

 

 何と言ってもマンドリンのフレーズが個性的ですが、曲自体がそのワンフレーズから発展していってできたものだったのです。

 

 1980年のバンド結成から10年近くが経ち、バンドのメンバーは何か大きな変化を求めていました。そこでギターのピーター・バックマンドリンをおぼえはじめ、家で練習を兼ねていろんなフレーズを録音していた中に、このフレーズがありました。

 (何かのフレーズに似ているとような気がして、かなりたってからそれが「戦場のメリークリスマス」だったと気づいた、と語っています)

 

 このリフを聴いて気に入ったドラマーと一緒に曲を作ってゆき、そこにベースが加わるという流れで、曲をどんどん膨らませていったようです。メロディ自体はものの5分でできたそうです。

 そして最終的にそれを聴いたのが、バンドのボーカル、ソングライターのマイケル・スタイプで、彼はポータブル・レコーダーとタイプライターに向かい1時間ほどでこの歌詞を書いたといいます。歌詞を書いている時彼は瞑想状態になったらしく、”Losing My Religion"と言う言葉が浮かぶとそこから一気に歌詞ができていきました。

 

 そのときに彼が思い出したのはポリスの「見つめていたい」で、彼はこの曲を”史上最も美しい、気味の悪い歌”だと称し絶賛していて、愛されている対象の人物が歌の主人公の存在に気づいているかどうかもわからない、ストーカーかもしれない、それと同じことを自分もやってみようと思った。

 ただし、彼は”心の脆弱性”(Vulnerability)という主題に、歌を落とし込むことにしました。

 確かに、歌詞をあらためて読んでみると、主人公の気持ちの独白が続いてゆくだけで、本当に相手が目の前にいるのかどうかもわかりません。

 自分で勝手に葛藤し妄想して空回ってゆく思い、そういうことが愛でありラヴソングなのだとマイケルは語っています。

 

 マンドリンの短いリフがきっかけで生まれ、バンドによって音楽的に膨らんでゆき、そこに歌詞でイメージが付与され、その世界観と”Losing My Religion”という言葉から、ビデオ・クリップが新たなイメージを加えてゆく。そして、そこにリスナーはそれぞれが自分なりの解釈を加えてゆくわけです。

 

 ”小さな種”(マンドリンのリフ)が、様々な人間のイマジネーションという栄養を吸収してゆき大きな花になってゆく、そんな映像が浮かぶようです。

 すぐれた楽曲とは、そういう多様なイマジネーションを引き寄せることができるものなのかもしれません。

 

 

          (参考:「SONG EXPLODER 音を紡ぐ者」(Netflix)、Songfacts)

 

 

 

 

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