まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「チェイシング・ペイヴメンツ(Chasing Pavements)」アデル(2008)

 おはようございます。

 今日はアデルの「チェイシング・ペイヴメンツ」を。


Adele - Chasing Pavements

 

 ”もう心は決まっているの 考え直す必要もない

   たとえ私が間違っていても 正しくても

      これ以上見る必要はないの

      これは欲望などではなく これは愛なの だけど

 

   もし世界にこの気持ちを告げるなら

      きっと言い尽くせないわ

   あなたに言っているわけじゃないから

   そしてあなたに言うことが 私がやるべきこと

    もしあなたを愛しているなら

 

      あきらめるべきなの?

   それともただこの舗道を進み続けたほうがいいの?

    たとえどこにもたどりつけなくても

    それともこれは無駄なことなの?

    たとえ私が自分の立場をわかっていたとしても

    そこでやめたほうがいいの?

  あきらめるべきなの?

    それともただこの舗道を進み続けたほうがいいの?

     たとえどこにもたどりつけなくても

 

       もっと自分に自信を持って 空を旋回しながら待つの

  心が壊れそうになりながら 背中が痛みはじめても

  最後はこんな風になるの?それとも

 

  あきらめるべきなの?

     それともただこの舗道を進み続けたほうがいいの?

     たとえどこにもたどりつけなくても

     それともこれは無駄なことなの?

     たとえ私が自分の立場をわかっていたとしても

     そこでやめたほうがいいの?

  あきらめるべきなの?

     それともただこの舗道を進み続けたほうがいいの?

     たとえどこにもたどりつけなくても                           ”(拙訳)

 

 

  

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I've made up my mind
Don't need to think it over
If I'm wrong I am right
Don't need to look no further
This ain't lust
I know this is love but

If I tell the world
I'll never say enough
Cause it was not said to you
And that's exactly what I need to do
If I'm in love with you

Should I give up
Or should I just keep chasing pavements?
Even if it leads nowhere
Or would it be a waste?
Even If I knew my place  should I leave it there?
Should I give up
Or should I just keep chasing pavements?
Even if it leads nowhere

I'd build myself up
And fly around in circles
Waiting as my heart drops
And my back begins to tingle
Finally could this be it or

Should I give up
Or should I just keep chasing pavements?
Even if it leads nowhere
Or would it be a waste?
Even if I knew my place should I leave it there?
Should I give up
Or should I just keep chasing pavements?
Even if it leads nowhere yeah

Should I give up
Or should I just keep chasing pavements?
Even if, it leads nowhere
Or would it be a waste?
Even if I knew my place should I leave it there?
Should I give up,
Or should I just keep on chasing pavements?
Should I just keep on chasing pavements? Or

Should I give up
Or should I just keep chasing pavements?
Even if it leads nowhere
Or would it be a waste?
Even if I knew my place should I leave it there?
Should I give up
Or should I just keep chasing pavements?
Even if it leads nowhere

 

                           Writer/s: ADELE LAURIE BLUE ADKINS, FRANCIS EG WHITE

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  この曲はアデルのデビュー・アルバム「19」からのセカンド・シングルでした。

 「19」は当時の彼女のボーイフレンドとの関係がそのまま反映されているものだったようです。

「彼とは数ヶ月しか付き合ってなかったけど、ちょうどレコード会社と契約して曲を書かなければいけない時期で、ほとんど曲が書けていなかったから、彼について書いたの」

「かなり長い間曲が書けなかった。単なる楽しみのためとか、誰かが私にお金と時間を投資してくれるからという理由で曲を書くのは本当に難しいのよ。無理だった。それから、元カレに会って最初すごくいい感じで、それからはちょっとね、、。

 それから5週間で10曲書いたの。彼のことは今も好きで、彼のおかげでできたアルバムだった。彼が私を利用する以上に私が彼を利用したの。彼も気に入ってくれたわ。嫌なことではなかった。曲がラジオから流れてきたら気に入ってたわ。”オレの歌だ”とか言って。私は”失恋の歌よ、バカね”なんて言ったの」

 

 この「チェイシング・ペイヴメンツ」も彼との関係の中で生まれた歌で、ロンドンのウェストエンドのバーで飲んでいる時にケンカになり彼女が怒って飛び出したことがきかっけになったと「Qマガジン」のインタビューで語っています。

「彼は私を追いかけてこなかったのよ。だからそのまま走ったの。目の前に大きく広がる舗道( pavements)を見つめながら」

 その2日後に彼女はこの曲を書いたそうです。

 また、「ローリングストーン」のインタビューでは、ケンカの原因は彼氏の浮気だったと答えています。

「私は彼がいるパブに行って、彼の顔にパンチしたの。そしたら外に追い出されて、それで、そこから走り去ってゆくときに”chasing pavements”というフレーズが思い浮かんだのよ」

 

 僕はこの「チェイシング・ペイヴメンツ」は、切実ですごくいい曲だと以前から思っていました。でも、それが元カレとつかの間ヨリを戻した間の痴話喧嘩が元になっていると知りちょっと驚いたのは確かです。でも、がっかりしたというより、元ネタはどうあれ、彼女が歌うと”生涯に一度の恋”くらいに聴こえるよなあ、という方向にとらえ直して、かえって感心してしまいました。

 

 それに、生涯に一度の恋などしていたら、曲を書くどころじゃないかもしれないですね。元カレとヨリを戻すくらいが、客観性もある程度キープできて曲も書けそうです(正直どうかわかりませんが、、)。この曲もケンカの直後にタイトルを思いついて、2日後に書きあげたわけですし。

 

   また、曲を共作し、トラックを作ったのがエド・ホワイト。彼のところにやってきてアデルはこう言ったそうです。

「スケールが大きくて、ヒットしそうで、感傷的なバラードを作りたいの」

それに対してエドは「それにはぴったりな奴のところに来たね!じゃあ、やってみようか」と答えたそうです。

 やはりアデルさん、けっこう客観的になれていたみたいですね。

 

 

 ともかく、創作、ソング・ライティングというのは、たとえ”小さな種”でも、そこにイマジネーションが加わることによって大きく花になるんだなあ、とまた僕は思ったわけです。

 

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