まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ディス・ガイ(This Guy's in Love with You)」ハーブ・アルパート(1968)

 おはようございます。

 今日はハーブ・アルパート「ディス・ガイ(This Guy's in Love with You)」です。

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You see this guy, this guy's in love with you
Yes I'm in love who looks at you the way I do
When you smile I can tell we know each other very well

How can I show you I'm glad I got to know you 'cause
I've heard some talk they say you think I'm fine
Yes I'm in love and what I'd do to make you mine
Tell me now is it so don't let me be the last to know

My hands are shakin' don't let my heart keep breaking 'cause
I need your love, I want your love
Say you're in love and you'll be my girl, if not I'll just die

Tell me now is it so don't let me be the last to know
My hands are shakin' don't let my heart keep breaking 'cause
I need your love, I want your love
Say you're in love ,in love With this guy
if not I'll just die

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わかるよね、コイツは、君に恋しているんだよ

そうさ、僕は恋している こんな風に君を見つめてるヤツはいるかな

君が微笑めばわかるんだ 僕らは親密なんだって

 

僕の喜びを君にどう表現したらいい

君のことを知らなくちゃ

だって、君が僕のことをよく思っていると

みんなが話していたのを聞いたから

そう、僕は恋している どうしたら君は僕のものになるんだろう 

今言ってほしい そうなの? 僕を知らないままにしないで

 

僕の手は震えている この心をこわさないで

だって、君の愛が必要なんだ 君の愛が欲しいんだ

言ってほしい、この人と恋に落ちた、って 

もしそうじゃなかったら 死んでしまうよ
                       (拙訳)

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 昨日、このブログでとりあげた「ライズ」はアルパートのトランペッターとしての全米NO.1でしたが、この「ディス・ガイ」はシンガーとしての全米No.1ヒットです。

 

この曲はもともと"This Guy"ではなく、"This Girl"だったと言われています。

アルパートは自身がテレビの特別番組で歌う曲を探していたそうです。

 

ハーブ・アルパート:いつも、偉大な作曲家にする質問があってね。その日、電話でバートバカラックに訊いたのも、同じ質問だったー「引き出しかどこかにしまいこんでいる曲、でなきゃレコーディングがうまく行かなかったのに、ついつい風呂場で口笛を吹いてしまう曲じゃないか?」。すると彼は<ディス・ガール(This Girl's in Love with You>を送ってくれた。わたしはニューヨークのハル(デヴィッド)に電話して、性別を変えてもらえないかと頼んだ。

          (バート・バカラック自伝 ザ・ルック・オブ・ラヴ)

 

 

 しかし、調べていてこの曲を最初に発売したのはアルパートじゃないことがわかりました。

 ダニー・ウィリアムスというイギリスの黒人シンガーがアルパートより少し早くリリースしていました。彼は”イギリスのジョニー・マティス”と呼ばれ、ヘンリー・マンシーニの「ムーン・リバー」をイギリスで大ヒット(1961年全英1位)させています。

 タイトルは「That Guy's in Love」。 

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This Guy”じゃなく”That Guy”なんです。”コイツ”じゃなく”アイツ”。

 一番の歌詞はこうなります。

 

You see that guy, that guy's in love with you
That guy's in love He looks at you the way I do
When he smiles I can tell you know each other very well

(わかるかい、アイツは君に恋してる 

 恋してるアイツは僕と同じような目で君を見つめるんだ

 彼が微笑むと 君たちはとても親密だって僕にはわかるんだ)

 

 最後はこうなります。

 

My hands are shakin' Just look my heart is breaking 'cause
My girl's in love, So much in love
Yes  you're in love , in love with that guy, and I could  just die

(僕の手は震えている 見て、僕の心はこわれそうさ

それは、愛しい彼女は恋してるから、とても強く愛しているから 

そう、君は恋している、恋しているんだアイツに、だから僕はもう死ぬしかない)

 

 完全に失恋の歌だったんですね。

 

 「ディス・ガイ」は訳していて正直何か微妙にしっくりこなかったんです。ひとまず、僕の英語力はさし置いて、なのですが。

 主人公と彼女の距離感がつかめない曖昧な言い方が多いんです。彼女はこっちに気があるようなのに、そうでもないような。

 ところが、「ザット・ガイ」の歌詞はすごくしっくりきたんですよね。

 

 アルパートは自分のTV番組のディレクターから番組で歌うようリクエストされていたといいます。

 ハル・デヴィッドはこう語っていたそうです。

 

「彼は、テレビのスペシャル番組で私たちの曲をやりたいと言ってきたんだ。それは彼が妻に向かって歌う曲で、歌詞は彼が言いたかったことにあまりふさわしいものじゃなかったんだ。彼は私たちに、彼が必要としていることにぴったり合うように歌詞を変えられないかと尋ねてきた。それで私は実行したんだ」

                         (Songfacts) 

 最初で引用した文で、アルパートはただ性別を変えてくれるよう頼んだ、と言っていましたが、ハルの言い方は、ちょっとニュアンスが違いますよね。主人公の男女を変えてそれに合わせて変更させたなら、そう言っているはずですし。

 

 やはり、大失恋の歌「ザット・ガイ」を、”なんとなく相思相愛”の「ディス・ガイ」に変えたとするほうが、しっくりします。

 

 ひょっとしたら、最初の最初は「This Girl」だったのかもしれませんが。そのあたりの情報は残念ながら見つかりませんでした。

 

 とにかく、単語の入れ替えなどの最小限の改編で、曲をまったくちがう内容に変えたハル・デヴィッドの手際は見事と言うしかありません。

 

 さて、アルパートは、当初この歌はTV番組で歌って終わりにするつもりでしたが、視聴者から反響が凄かっらたしく、急遽録音して発売したところ全米1位になった、ということです。

 それがそのTV番組の映像です。

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  この曲がヒットするやいなや、女性シンガーたちはこぞって「This Girl's in Love with You」というタイトルでカバーをしています。

  ナンシー・シナトラがTV番組「エド・サリバン・ショー」で歌ったのが最初だと言われています。

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 他にヒットした1968年だけでも、ペトゥラ・クラークコニー・フランシス、そして、英米それぞれでバカラック・ナンバーを多くヒットさせているダスティ・スプリングフィールドディオンヌ・ワーウィックもカバーしていました。

 

 最後は、この曲を史上最高のラヴ・ソングだと語っている、元オアシスのノエル・ギャラガーのカバーを。

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