まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「アップタウン・ガール(Uptown Girl)ビリー・ジョエル(1983)

 おはようございます。

 今日はビリー・ジョエルの「アップタウン・ガール」を。


Billy Joel - Uptown Girl (Official Video)

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Uptown girl
She's been living in her uptown world
I bet she's never had a backstreet guy
I bet her mama never told her why

I'm gonna try for an uptown girl
She's been living in her white bread world
As long as anyone with hot blood can
And now she's looking for a downtown man
That's what I am

And when she knows
What she wants from her time
And when she wakes up
And makes up her mind

She'll see I'm not so tough
Just because

I'm in love with an uptown girl
You know I've seen her in her uptown world
She's getting tired of her high class toys
And all the presents from her uptown boys
She's got a choice

Uptown girl
You know I can't afford to buy her pearls
But maybe someday when my ship comes in
She'll understand what kind of guy I've been
And then I'll win

And when she's walking
She's looking so fine
And when she's talking
She'll say that she's mine

She'll say I'm not so tough
Just because
I'm in love

With an uptown girl
She's been living in her white bread world
As long as anyone with hot blood can
And now she's looking for a downtown man
That's what I am

Uptown girl
She's my uptown girl
You know I'm in love
With an uptown girl
My uptown girl
You know I'm in love
With an uptown girl
My uptown girl
You know I'm in love
With an uptown girl
My uptown girl
You know I'm in love
With an uptown girl

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アップタウン・ガール

彼女は上流階級に住んでいる

裏通りの野郎なんかと知り合ったことは絶対にない

彼女のママはその理由を絶対に言ってないはずさ

 

ゲットするよ、アップタウン・ガール

彼女はお上品な世界に生きている

熱い血を持つヤツが現れるまで

今や彼女はダウンタウンの男を探している

それがオレさ

 

彼女が自分に与えられた時間をどうしたいのかわかったとき
彼女が目覚めて、心を決めた時

彼女はオレがそんなタフじゃないってわかるだろう

なぜかといえば

恋に落ちたんだ アップタウン・ガールに 

彼女に会ったのは金持ちの世界

お上品なおもちゃや 

お金持ちの坊やからのプレゼントに

飽き飽きしていたのさ 

彼女には選択権がある

 

アップタウン・ガール

そりゃ、彼女に真珠は買ってあげられないさ

だけど、たぶんいつか大儲けしたら

彼女はオレがどんな男だったかわかるだろう

そしてオレが勝つのさ

彼女が歩くと その姿最高さ

そして、彼女がしゃべると

彼女は僕のものだって言うのさ 


彼女は僕がそれほどタフじゃないって言うだろう

それはひたすら

僕が恋しているからさ

 

アップタウン・ガールに

彼女はお上品な世界に生きている

熱い血を持つヤツが現れるまで

今や彼女はダウンタウンの男を探している

それがオレさ

 

アップタウン・ガール

彼女は僕のアップタウン・ガール

恋しているのさ

アップタウンガールに

僕のアップタウン・ガール

恋しているのさ

アップタウン・ガールに、、、


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「アップタウン・ガール」の楽譜はこちら

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 中学生くらいの時にビートルズをリアルタイムで聴いていた”ビートルズ世代”という人たちがいますよね。僕はビートルズ・ブーム真っ只中の1964年に生まれたので、ビートルズは完全に後追いで、うらやましく思ったことは何度もあります。

 

 音楽には時代は関係ないと言う人もいらっしゃるでしょう。でも、リアルタイムでその時代の空気の中で聴くことというのはやっぱり特別なことなんです。何か”マジック”が起こるんです。それは、僕が半世紀も音楽を聴いてきて揺るぎなく感じていることの一つでもあります。

 

 だけど、うらやましがってもしょうがないので、僕らくらいの年代(1964年生まれ)にとって、ビートルズに最も近い洋楽アーティストは誰だろうと考えてみました。で、たぶん、ビリー・ジョエルだと思うのですが、同世代の皆さん、どうでしょう?

(もう少し下だとマイケル・ジャクソンとか言いそうです)

 

 当時、クラスでアリスとかオフコースとか邦楽しか聴かないような女子の中でもビリー・ジョエルは好きっていうこはけっこういたように記憶しています。

 僕は彼の「ストレンジャー」が、初めて買った洋楽のLPです。中二の時でした。そして「ニューヨーク52番街」が次に買ったLPでした。

 そう、かく言う僕こそが、典型的な”ビリー・ジョエル世代”なんです(笑。

 

 ちなみに、僕より少し年下で「イノセント・マン」をきっかけにして洋楽を聴くようになったという人たちも僕は何人か知っています。

 ”ビリー・ジョエル世代”(僕が今回初めて提唱しますが、、、)には「ストレンジャー」&「ニューヨーク52番街」世代と「イノセント・マン」世代のふたつの山があるようです。

 

 彼の音楽には、ポップス、ジャズ、クラシック、ロックンロールなどいろんな音楽が含まれていて、これほど多彩な音楽性の持ち主は珍しいと思います。彼の音楽を聴くことで、いろんなジャンルの音楽への繋がりが見つかるのです。ビートルズがまさにそうでしたよね。

 

 例えばこの「アップタウン・ガール」の入っている「イノセント・マン」は50年代後半から60年代の様々なポップスのスタイルを意図的に演出したもので、そのルーツを探っていくこともまた楽しみでもありました。モータウン、フォーシーズンズ、などオールディーズの参考書になりました。

 

 「アップタウン・ガール」は昨日このブログで取り上げたフォー・シーズンズのスタイルを、ちゃんと聴いてそれとわかるようなやり方で反映させた曲です。

 曲調、サウンド、コーラス・ワークだけでなく、ビリーも普段の歌い方とは異なり、フランキー・ヴァリの特徴的なファルセットや節回しをわざと真似るようにして歌っています。フランキー・ヴァリは日本でいうと北島三郎くらいの大物(ニュアンスは若干違いますが、大瀧詠一さんがそうたとえていました)ですから多くのアメリカ人にはわかるわけです。

 日本ではCMでよく耳にしますし、ひょっとしたら一番有名なビリーの曲かもしれないと思うのですが、多くの人にとってはフォー・シーズンズ云々というのは全く関係なく、楽しいポップスの名曲として残っていると思われます。まあ、それもよし、ですね。単なるオマージュじゃなく、一つの楽曲として普遍的なパワーがあることの証明ですから。さすが、ビリー・ジョエルということでしょう。

 

 リアルタイムの記憶では「イノセント・マン」の前のアルバム「ナイロン・カーテン」がシリアスな思いトーンのアルバムでしたので、急激に明るくなってちょっと戸惑ったのを覚えています。

 モータウンや60年代のポップスのリバイバルというのは、80年代前半の大きな流行でしたから、ビリーもそれにのったのだろうと思いつつ、それにしても、わかりやすすぎないかなあ、という思いは正直ありました。

 

 あらためて、彼のバイオグラフィーを追って確認したら、この頃オートバイ事故で両手に重傷を負ったり、奥さんとの離婚問題もあったりする不幸続きの中で、ポール・サイモンのすすめで訪れたサン・バルテルミー島というところで当時のスーパー・モデル、クリスティーと知り合い交際し始めて、これが彼の大きな契機になっているんですね。

 

 ティーンエイジャーに戻ったような気分でした。女の子にすっかり夢中のティーンエイジャーにね。だから十代のころに聞いたフォー・シーズンズとかモータウン、ソウル、アカペラ、ドゥワップ、馬鹿正直なほどのロマンティックなラブソングといった音楽への敬意も込めて、この楽しい気分を表現したいと思ったのはごく当然の結果だと思います」(「イノセントマン ビリー・ジョエル 100時間インタビュー」)

 

 「アップタウン・ガール」は富裕階級の女の子に恋したダウンタウン・ボーイの歌。

 もともとは「アップタウン・ガールズ」というタイトルで高級住宅街の女性たちを皮肉ったものだったといいます。しかし、クリスティとの出会いでテーマが変わり、彼は昔の自分、若く貧しい男の子に戻って、クリスティのような一見手の届かない女性に恋する設定になったわけです。

 

 それから、フォー・シーズンズとの比較ということでは、彼らの大ヒット曲「悲しきラグ・ドール(Rag Doll)」は、金持ちの男が貧しい女の子に恋をする歌で、「アップタウン・ガール」はその正反対の世界を歌っていると説明しています。

 

こちらが「悲しきラグ・ドール」

www.youtube.com

  この曲を聴き直して「アップタウン・ガール」との比較より気になったのは、

キメの歌詞として”I Love You Just The Way You Are"というフレーズが出てくることです。これは、ビリーの名曲「素顔のままで(Just The Way You Are)」の歌詞そのままですね。ビリーの中に無意識にこのフレーズが残っていたのかもしれません。

 

 ビリー・ジョエルは、伝記などを読むと、シリアスな心の病をずっと抱えていた人物のようです。彼の人生は基本的に沈鬱なトーンで貫かれています。そんな中で、彼が素晴らしい曲をたくさん生み出してくれたことには感謝したいなあと思いますし、とりわけ「イノセント・マン」の”ネアカ”さは、彼の恋が生んだ二度と起こりえない”アクシデント”のようなもので、今振り返ると無茶苦茶”レアな”ものなのだったと気づきます。

 ビリー自身が辛い時期から抜け出して光を見つけたような気持ちになっていたからこそ、「アップタウン・ガール」に代表される「イノセント・マン」の楽曲は、たくさんの人たちを元気づけ、長く愛されるものになったのでしょう。

 

 最後に「イノセントマン」収録曲をいくつかどうぞ。

 

「あの娘にアタック」(Tell Her About It)(1983年全米1位)

***スプリームス、マーサ&ザ・ヴァンデラスなどモータウンへのオマージュ


www.youtube.com

 

アルバム表題曲「イノセントマン」(An Inocent Man)1983年全米10位

***ベン・E・キングドリフターズへのオマージュ

www.youtube.com

「ロンゲスト・タイム」(The Longest Time)(1984年全米14位)

***フランキー・ライモン&ザ・ティーン・エイジャーズやザ・タイムスへのオマージュ


www.youtube.com

 

 

 

 

 

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