おはようございます。
今日は「マイ・ガイ」の半年後にリリースされたモータウンを代表するヒット「マイ・ガール」です。作ったのはやはりスモーキー・ロビンソン(ミラクルズのロナルド・ホワイトと共作)
” 曇りの日に 僕は太陽を浴びているみたいさ
外は寒くても 僕には5月の陽気みたいさ
君は言うだろうね 僕がこんな風に感じさせているのはなぜかって
マイ・ガール 僕の彼女のせいなんだよ
僕はミツバチが羨むくらい 甘い蜜を手にしてる
木々の鳥たちのさえずりより やさしい歌がある
そう、君は言うだろう 何が僕をこんな風に感じさせているのかって
マイ・ガール それは僕の彼女なんだよ
お金も財産も名誉もいらない
一人の男が求められる富をもう全部持っているから
そう、君は言うだろう 何が僕をこんな風に感じさせているのかって
マイ・ガール それは僕の彼女なんだよ
曇りの日に太陽をあびている 僕の彼女が一緒なら
5月の陽気みたいさ あの娘が一緒なら
僕の彼女のことを言ってるんだ ”(拙訳)
テンプテーションズは前身グループを経て1961年にモータウンからデビューしますが、なかなかヒットに恵まれませんでした。
そして、彼らの最初のヒットを書いたのがスモーキー・ロビンソンでした。
1964年、曲は「The Way You Do the Things You Do」、全米第11位になりました。
The Temptations - The Way You Do The Things You Do
そして、この年の12月に「マイ・ガール」がリリースされるわけです。
5月にはメリー・ウェルズの「マイ・ガイ」が大ヒットしていて、どちらもスモーキー作で、自分の彼氏彼女に”ベタ惚れ”の歌ということで、このふたつを”対(つい)”と捉えることもできると思います。
あと、今回発見したのですがテンプテーションズの「マイ・ガール」の前のシングル2曲のタイトルが「The Girl's Alright With Me」、「Girl (Why You Wanna Make Me Blue)」(ともにノーマン・ホイットフィールドのプロデュース)と”ガールもの”だったんです。スモーキーがわざと”ガールもの”にしたのかはわかりませんが、”ガールものシングル3部作”という捉え方もできるでしょう。
Girl (Why You Wanna Make Me Blue)
スモーキーは曲を書くときには、誰が歌うかを強く意識するそうですが、この「マイ・ガール」の場合はメンバーのデヴィッド・ラフィンを想定していました。この頃デヴィッドは新たにメンバーになったばかりで、リード・ボーカルはとっていませんでした。
しかし、ショーで彼の歌声を聴いたスモーキーは、彼にぴったりな曲を書くことができればデヴィッドは間違いなく新しいスターになると思ったそうです。
「デヴィッド・ラフィンは、グループの中の眠れる巨人のような存在だと僕は思ったんだ。メロウでしゃがれた雰囲気のある声をしているからね。僕がすべきことは彼の声にぴったりな曲を書くことだった。そうすればスマッシュヒットになるような気がしたんだ。それで僕はデヴィッド・ラフィンの声に合った曲を作るためにピアノに向かった。そして僕は、彼が大声で歌えると同時にメロディックでスィートなものにしようとしたんだ」
「マイ・ガイ」もメリー・ウェルズの声質を重視して書いた曲だったので、創作の方向性は一緒ですね。
対象を具体的に、詳細に想定して創作したほうが、結果的には”普遍的なもの”ができるということなのでしょう。当初から万人に向けたものにしようとするときっとピントがぼやけてものになるのかもしれないですね。
また、「マイ・ガール」のスモーキーの歌詞は「マイ・ガイ」同様、ものすごくわかりやすいのに、”つかみ”もしっかりあります。
彼は歌詞についてこんなことを語っています。
「曲を書くことにおいて、そこに新しい言葉なんてないし、たぶん新しい考えもないんだよ。新しい音符とかそんなものもね。だから僕は、千回も言い古されてきたようなことを、印象に残るように、または違って聴こえるように言うことを、トライしなければいけないんだ」
ヒット曲について語るとき、どうしても詞曲に集中してしまいますが、アレンジ、サウンドがポップスの場合は特に重要なポイントです。
この曲にしても、あの印象的なイントロや間奏がなかったら、ヒット曲としての目盛りはいくつも下がったように僕は思います。
モータウンの場合、”ファンク・ブラザース”という凄腕ミュージシャンたちの存在が後年クローズアップされ、彼らにスポットライトをあてた「永遠のモータウン」(2002年)という映画も作られました。
「マイ・ガール」のイントロのベースはジェームス・ジェマーソン、ギターはロバート・ホワイト。どちらもシンプルなのに、ものすごく記憶に残るフレーズです。
特にギターは、特に深い意図はなく何気なく弾いたものだったようです。
「永遠のモータウン」の中でこんなエピソードがありました。1992年頃ミュージシャンのアラン・スラツキーがロバートを誘って食事に行った店でウェイターが注文を取りに来たとき、「マイ・ガール」のイントロがちょうど店でかかったのだそうです。興奮したロバートは「あれは、、」とウェイターに言おうとしたのですがすぐに口をつぐんでしまったそうです。
なんで言わなかったのかアランが尋ねると、ロバートは照れながら「言ってもどうせ、イカれた年寄りと思われるだけさ」と答えたそうです。
その2年後にロバートは亡くなってします。「永遠のモータウン」の8年前ですから、
ファンク・ブラザースが再評価には間に合わず、「マイ・ガール」のイントロを弾いていたことは一般に知られないままでした。
現在、ポップスや日本の歌謡曲を再評価する際に、編曲家、演奏者、エンジニアといった裏方にもフォーカスするようになったことはいずれにせよ喜ばしいことだと僕は思います。いささか遅すぎた感もなくはないのですが。
では、この辺でこの曲のカバーを。まず有名なところでオーティス・レディング。
ビートルズもモータウン・フリークでしたが、ストーンズも負けてはいません。
こう言う風にギターのリフも生かされているということは、このリフが紛れもなく”歌の一部”になっているといってもいいのだと思います。
”ハイ・サウンド”で演奏された「マイ・ガール」。歌っているのはアル・グリーン。
Al Green - My Girl (Official Audio)
最後に「マイ・ガイ」と「マイ・ガール」をくっつけた、エイミー・スチュワートとジョニー・ブリストルのデュエット。
Ami Stewart & Johnny Bristol - My guy, my girl 1980