まいにちポップス

1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、勝手な推理、などで紹介していきます

「僕の歌は君の歌(Your Song)」エルトン・ジョン(1970)

 おはようございます。

 今日はエルトン・ジョンの「ユア・ソング」を。


Elton John - Your Song (1970 Original Video) (HD 720p)

 

 ”少しおかしいよね こんなこと感じているなんて

  僕は隠しごとが上手なやつじゃないからね

 お金はたくさん持ってないけど、もしあったら

 二人で暮らせる大きな家を買うよ

 

 もし僕が彫刻家だったら まあそれもないよね

 あとは薬の見世物売りとか

 大したことじゃないって知ってるけど これが僕にできる精一杯

 僕の才能は曲を作ること これは君のために書いたんだ

 

    君のための曲だってみんなに言っていいんだよ

 本当にシンプルかもしれないけど 完成したんだ

 気にしないで 気にしないでほしい

 

 僕が言葉にしたことを

    君がいると人生はどんなに素晴らしいかってね

 

 屋根に座って 苔を蹴り落としながら

 まあ、何行かの歌詞はうまくいかなくてイライラしたけどね

 だけど、書いている間 日差しはとても優しかった

    これは君のようにずっと聴いてくれる人のための曲なんだ

 

 だから忘れちゃってごめん、だけど僕はやってしまうんだ

 そう、グリーンだったかブルーだったか忘れていたよ

 とにかく、大事なのは、僕が言いたいことは

 君の瞳が今まで見た中で一番キレイだっていうことなんだ

 

 

 君のための曲だってみんなに言っていいんだよ

 本当にシンプルかもしれないけど 完成したんだ

 気にしないで 気にしないでほしい

    僕が言葉にしたことを

    君がいる人生はどんなに素晴らしいかってね  ” (拙訳)

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It's a little bit funny, this feeling inside
I'm not one of those who can easily hide
I don't have much money but, boy if I did
I'd buy a big house where, we both could live

If I was a sculptor, but then again no
Or a man who makes potions in a traveling show
I know it's not much but it's the best I can do

My gift is my song and
And this one's for you
And you can tell everybody, this is your song
It may be quite simple but now that it's done
I hope you don't mind
I hope you don't mind
That I put down in words
How wonderful life is, while you're in the world

I sat on the roof and kicked, off the moss
Well a few, of the verses, well they've got me quite cross
But the sun's been quite kind
While I wrote this song
It's for people like you that oh
Keep it turned on

So excuse me forgetting
But these things I do
You see, I've forgotten
If they're green or they're blue
Anyway the thing is, what I really mean
Yours are the sweetest eyes oh I've ever seen

And you can tell everybody that this is your song
It may be quite simple but
Now that it's done
I hope you don't mind
I hope you don't mind
That I put down in words
How wonderful life is while you're in the world
I hope you don't mind
I hope you don't mind
That I put down in words
How wonderful life is while you're in the world

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 この希代の名曲が生まれたときのことを映画「ロケットマン」が再現しています。


Rocketman (2019) - Your Song Scene [HD]

  離婚した母親が新しいパートナーと祖母と一緒に住んでいたアパートに、エルトンは作詞のパートナーのバーニー・トーピンと一緒に転がり込んでいました。

 

「書くのは簡単だったー バーニーはある朝フローム・コート(註:母親のアパートのある場所)で朝食を食べている間に「僕の歌は君の歌」の歌詞を書き上げ、それを渡された僕はきっちり15分で曲をつけた ーなぜならある意味、僕たちはもうあらゆる苦難を体験していたからだ」

                     (「ME  エルトン・ジョン自伝」)

 

 バーニーは、映画はそのときのことをだいたい正確に再現していると語っています。違っているのは、その場にはエルトンの母と祖母はいなかったことと、アパートは上の階はなくワンフロアでもっと狭かったことだ、と。

(2階建ての2階を使っていたようです)

 

   このブログで僕は様々な名曲のプロフィールを追っていますが、”あっという間にできた曲”が多いことに驚かされます。しかし、もう少し調べてみると、それ以前には曲作りで試行錯誤してきたかなりの蓄積があったことがわかります。

 いわゆる”ビギナーズ・ラック”的に生まれるものではないんですね。

 ここで、エルトンはその”名曲が生まれる力学”を裏付けるような、明快な回答をしているんですね。

「僕の歌は君の歌」はあっという間に簡単にできた。それは、それまであらゆる苦難を経験してきたからだ、と。

 

 しかし、映画「ロケットマン」を観ても、彼の自伝を読んでも、エルトン・ジョンにとってバーニー・トーピンの存在の大きさを思い知らされます。僕らの思っている”エルトン・ジョン”という存在は、半分近くは”バーニーとのユニット”を指しているのかもしれないとまで考えてしまいます。

 

 2人ともリバティ・レコードというところが出した新人募集の広告を見て応募しています。オーディションで芳しい結果を出せなかったエルトンに対し、担当者がたくさんの応募者の封筒の中から無造作に一つ選んで、この中でいい歌詞があったら曲をつけてみたら、といって渡したのが、バーニーの作品だったそうです。

 エルトンは、その担当者はバーニーの封筒を選んだのではなく、明らかに適当に抜いて渡したのだと記憶しています。

 なんともすごい奇跡です。

 

「目の前に歌詞の書かれた紙がなければ曲が作れなかった。起爆剤となるインスピレーションが必要だった。バーニーの歌詞を見ると、まさにその魔法が起こり、創作意欲に火がついた」

 

「僕はいつも頭の中にメロディーが流れているようなミュージシャンじゃない。突然インスピレーションに打たれ、真夜中にピアノの所へ走って行く、ということもない。実際に曲を作っている時以外、ソングライティングについて考えさえしない。バーニーが歌詞を書いて、僕に渡す。それを読み、コードを弾くと、続いて何かが起こり、何かが指に降りてくる。音楽の女神(ミューズ)、神、幸運。好きなように呼べばいいが、それが何なのか、僕には全くわからない。ただその瞬間に、メロディがどこに行こうとしているのかわかるのだ」

                    (「ME  エルトン・ジョン自伝」)

 

 エルトン・ジョンという音楽史に残る巨大な才能は、唯一、自分自身できかっけとなる”インスピレーション”を生むことができなかったわけです。でも、そのきっかけは誰のものでもよかったわけではなく、バーニーの歌詞だけが、彼の作曲の才能を最大限に引き出すものだったということなのでしょう。

 

 「僕の歌は君の歌」のあの美しいメロディは、バーニーの歌詞がなければこの世に生まれていなかったものなのです。

 とはいえ、詞先であのメロディを生んだエルトンと、ふたりの才能の”一体感”はすごいとしかいいようがありません。

 

 ちなみに、バーニーと出会う前にエルトンが作詞作曲していたシングルがあります。

 彼がメンバーだったバンド”ブルーソロジー”の「カム・バック・ベイビー」。作者のクレジットを見るとまだ本名のレジ・ドワイトです。


Elton John (Reg Dwight) with Bluesology - Come Back Baby (1965)

 そして、エルトンの正規のデビュー曲「I've Been Loving You」。こちらはバーニーと出会ってからのもので、共作としてクレジットされていますが、実はエルトンだけが書いたもの。


Elton John - I've Been Loving You (1968) With Lyrics!

 エルトンは自分が書いた曲の中でも”一番退屈な代物”だと言っています。ぜんぜん悪い曲ではないと思いますが、歌詞だけを取るとありきたりであるのは否めません。

 

 しかし、当時エルトンが所属していた会社は、こういうシンプルで覚えやすい曲を求めていたそうで、バーニーとの共作は難しく暗いととらえていたようです。

 

 エルトンとバーニーのコンビは当初はお互いだけが認め合っているだけで、周りはあまり評価しなかったようです。会社はエルトンに別のパートナーを試させたこともあったそうです。「僕たちはもうあらゆる苦難を経験していた」とはそういうこともあるのでしょう。

 

 しかし「僕の歌は君の歌」が出来あがりスタッフに聴かせると、状況は一気に変わりチャンスの扉が大きく開いたのです。

 

 この歌詞を書いた時バーニーはまだ19歳でした。歌詞の内容から十代の若者の無垢なラヴソングだと誰もが受け取ると思いますし、実際にそうだと思います。しかし、この当時まだ芽が出ずにエルトンの母親のアパートに居候し、2段ベットをシェアしていた彼らのプロフィールを知ると、”お金はたくさん持ってないけど””僕に与えられた才能は歌なんだ”といった歌詞は、自分たちのことを切実な思いで重ねているような気がします。そして当然エルトンにその思いが深く通じて心を動かしたからこそ、一気に曲ができたように僕には思えます。