まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「暗黒への挑戦(That's the Way of the World)」アース・ウィンド・アンド・ファイアー(1975)

 おはようございます。

 今日はアース・ウィンド・アンド・ファイアーの「暗黒への挑戦」です。


Earth, Wind & Fire - That's the Way of the World (Audio)

 

  ”炎のような心は愛の欲望を生み出して

    君がいるべき世界へと高く高く連れてゆく

    炎のような心が愛の欲望を生み出して

          高く高く君を玉座へ連れてゆく

 

    この特別な日に一緒にやってきた

    僕たちのメッセージを歌おう 高らかにはっきりと

          振り返れば 僕たちは悲しみに満ちた日々にいた

    未来は通り過ぎ 消えていった

    もし君が心と魂のずっと奥を見つめたら

    心の安らぎを見いだせるだろう

     世界が冷たく思えても ためらってはいけない

   心を若く保つんだ だって君は決して老いていないのだから

 

     世界はそんなものなんだ

     だから君の花を植えて 真珠を育てるんだ

           思いやりの心を持った子供が生まれるように

   この世界のありようが人の心をとても冷たくしてしまうんだ

   

     炎のような心 愛の欲望 高く高く、、 ” (拙訳)

 

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Hearts of fire creates love desire
Take you high and higher to the world you belong
Hearts of fire creates love desire
High and higher to your place on the throne

We come together on this special day
Sing our message loud and clear
Looking back, we've touched on sorrowful days
Future pass, they disappear
You will find peace of mind
If you look way down in your heart and soul
Don't hesitate 'cause the world seems cold
Stay young at heart, 'cause you're never, never old

That's the way of the world
Plant your flower and you grow a pearl
Child is born with a heart of gold
The Way of the world makes his heart so cold

Hearts of fire create love desire take you
High and higher to the world you belong
Hearts of fire love desire
High and higher
Hearts of fire love desire
Ahh higher

We come together on this special day
Sung our message loud and clear
Looking back, we've touched on sorrowful days
Future disappears
You will find peace of mind
If you look way down in your heart and soul
Don't hesitate 'cause the world seems cold
Stay young at heart, 'cause you're never, never, never

That's the way of the world,
Plant your flower and you grow a pearl
Child is born with a heart of gold
Way of the world makes his heart so cold

Hearts of fire, love desire
High and higher, yeah yeah
Hearts of fire, love desire

 

Writer/s: VERDINE WHITE, MAURICE WHITE, CHARLES STEPNEY

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 アース・ウィンド・アンド・ファイアーが大ブレイクすることとなったアルバム「暗黒への挑戦」のタイトル曲。彼らのオリジナル・アルバムで全米1位になったのはこのアルバムだけです。7ヶ月後に出たライヴ・アルバム「灼熱の狂宴」も1位になっていますから、彼らがアメリカで最も売れたのは「セプテンバー」のころでも「レッツ・グルーヴ」のころでもなく、この頃、1975、6年なんですね。

 そして、この「暗黒への挑戦」はシングルにもなり全米最高12位まであがりました。

 

 アース・ウィンド・アンド・ファイアーはシカゴ出身のドラマー、モーリス・ホワイトを中心に結成されたグループです。

 彼が射手座生まれで、占星術によると射手座のエレメントが火で、他に土、空気の要素があることから<Earth Wind & Fire>と名づけられました。

 その前身グループは”ソルティ・ペッパーズ”といったそうで、シカゴを中心としたアメリカ中西部で「LA LA TIME」というローカル・ヒットを出しています。


La La Time (Pt. 1)

 ソルティ・ペッパーズはその後うまくいかなかったため、モーリスはシカゴからロサンゼルスへ移り、弟のベーシスト、ヴァーダインなどとともに大所帯のバンドを組み、アース・ウィンド・アンド・ファイアーと名づけたわけです。

 彼らは、ワーナーからデビューし二枚アルバムをリリースしますがセールス的に成功はしませんでした。

 そこで、モーリスは弟のヴァーダイン以外を辞めさせ、新たなメンバーを集め再出発をはかることにします。

 そして、彼らは元ラヴィン・スプーンフルジョン・セバスチャンの前座としてツアーをまわり、そのレヴューが「ニューヨーク・タイムズ」に載ったのを読み彼らに興味を持った男が現れます。

 それが、当時コロンビア・レコードの社長だったクライヴ・デイヴィスです(またこのブログに登場です)。

 当時、コロンビア・レコードの業績は悪く、彼はアーティストの積極的な”引き抜き計画”に乗り出していました。

 自分がアプローチしていることをワーナー側に知られないように、極秘でLAにある小さく蒸し暑いスタジオでメンバーと会い、演奏を聞き、その場でノックアウトされたと語っています。

 

 「私は、彼らの音楽があらゆる既成の枠を越えて、黒人にも白人にもアピールするだろうと感心した。スタジオの暑さにはほとほとまいってしまったが、席を立てなかった。それくらいの価値があったのである」

    (「レコードビジネスの内側」クライヴ・デイヴィス)

 そして、彼はワーナーとバンドの契約をおよそ10万ドルで買い取ったという。そして、黒人市場だけじゃなく、FMリスナーにも積極的にプロモーションすることで、アース・ウィンド・アンド・ファイアーのレコードはどんどん売れていたっといいます。

 

 彼らは黒人層だけじゃなく白人層にもウケると判断したクライヴの眼力(聴力?)が、このバンドをブレイクへと導いたことは間違いないでしょう。

 

 

 さて、この「暗黒への挑戦(That's the Way of the World)」はもともと同名の映画「ザッツ・ザ・ウェイ・オブ・ザ・ワールド」用として作られ、アルバムは本来はサントラ盤でした。

 当時、映画は日本では公開されなかったので、この曲は映画とはまったく関係のない「暗黒への挑戦」という邦題がつけられたわけです。

 そして、32年もたった2007年に初めて日本で公開されDVDにもなったのですが、邦題を映画とは関係のない「暗黒への挑戦」にはできなかったのでしょう、カタカナ表記のザッツ・ザ・ウェイ・オブ・ザ・ワールド」というタイトルになりました。

 主演は「レザボア・ドックス」のハーヴェイ・カイテル。この頃彼は「ミーン・ストリート」「アリスの恋」というマーティン・スコセッシ監督の作品に出演していて、この作品は「タクシー・ドライバー」の前年になります。

 

 ハーヴェイ扮するレコード会社のプロデューサーが抱える”グループ”というバンドとしてアース・ウィンド・アンド・ファイアーが出演しています。

 映画のオープニングでこの「暗黒への挑戦」を演奏しています。


THAT'S THE WAY OF THE WORLD feat. EWF & Harvey Keitel (1975)

 

  映画の方は、この当時のレコード会社のトップから押し付けられたアーティストのせいで、自分の抱えている”グループ”(E.W&F)のフォローができなくなった主人公の立ち回りを描いたもので、レコード業界の”日常”をここまで全面的に捉えた映画を僕は今まで見たことがなかったのですが、業界に興味のない人にはまったく面白くないだろうな、とも思いました。

 (このオープニング・シーンがこの映画のハイライトだと僕は思います(苦笑)

 

 映画の仕上がりを見てモーリス・ホワイトは、これはヒットしないと確信したそうで、あわてて映画の公開のタイミングと関係なく、前倒ししてリリースしたところ、ファースト・シングル「シャイニング・スター」が全米NO.1になり、アルバムも大ヒット。もともと、サントラ盤だったことを多くの人が忘れられることになってしまいました。

 

 ちなみに<That's the Way of the World>は「世の中そんなものだ」という、物事には裏があったり、馬の目を抜くような世の中のシビアな現実を、少しシニカルな気持ちで言う言い回しのようで、映画の中でも「決めゼリフ」として使われています。

 

 そういう本来シニカルな言葉を、彼らならではの音楽のバイブレーションでポジティヴな方向へ持っていってくれる、それがこの曲の魅力なんですね。

 

E,W&Fのベスト盤ではこれが一番おすすめです

 

アースの「暗黒への挑戦」の演奏シーンがある貴重な映画

 実は12月の設定の歌「セプテンバー」 

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