まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「バス・ストップ(Bus Stop)」ホリーズ(1966)

 おはようございます。

 今日はホリーズの「バス・ストップ」です。

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Bus stop、wet day、she's there
I said please share my umbrella
Bus stop、 bus goes 、she stays
Love grows under my umbrella

All that summer we enjoyed it
Wind and rain and shine
That umbrella 、we employed it
By August she was mine

Every morning I would see her waiting at the stop
Sometimes she's shopped
And she would show me what she bought

All the people stare
As if we were both quite insane
Someday my name and her's are going to be the same

That's the way the whole thing started
Silly but it's true
Thinkin' of a sweet romance
Beginning in a queue

Came the Sunday, ice was melting
No more sheltering now
But it's nice to think that umbrella lead me to a vow

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バス停、雨の日、そこに彼女はいて

僕は言ったんだ「僕の傘に入りませんか?」

バス停、バスは出る、彼女は残る

僕の傘の下で愛が始まってゆく

 

あの夏ずっと、僕らは楽しんだ

風も雨も太陽も

あの傘 僕らが使ったのさ

8月までは、彼女は僕のものだった


毎朝、バス停で待っている彼女の姿を見るだろう

時には買い物をして、買ったものを僕に見せてくれるんだ

まるで二人とも頭がおかしいみたいに

みんなが僕らを見るのさ

いつか僕の名字は彼女と同じになるだろう

そんな風にすべては始まったんだ

馬鹿げているけど真実さ

甘いロマンスを考えながら

並んで始まる

 

お日様が顔を出して、氷が溶けてゆく

もう傘で避ける必要はない

だけど、あの傘が僕を結婚まで

導いてくれたなんて

考えただけでも素敵じゃないか ”

(和訳)

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 ホリーズはイギリス、マンチェスターで小学校時代からの親友だったアラン・クラークとグラハム・ナッシュがエヴァリー・ブラザーズをモデルにして組んだデュオがベースになっています

 彼らはエリック・ヘイドック(ベース)と組んでデルタスを結成し、ドン・ラスボーン(ドラム)、ヴィック・スティール(ギター)を加え、1962年の12月から”ホリーズ”と

 ”ホリー(Holly)”はクリスマスに飾るヒイラギのことですが、バディ・ホリーBuddy Holly)への憧れがこめられていて、両方にかかっているとグラハム・ナッシュは語っています。

 1963年にビートルズで有名なリバプールのキャヴァーン・クラブで彼らがライヴをやっているのを見たロン・リチャーズ(ビートルズの初期のセッションに関わった)によって、ビートルズと同じパーロフォン・レコードのオーディションを受け契約を勝ち取ります。その際にギターはヴィックからトニー・ヒックスに変わっています。

 最初の2曲のシングルはコースターズの「(Ain't That) Just Like Me」と「Searchin'」のカバーで、R&B志向の強いバンドだったことがわかります。

 

  3枚目のシングル「ステイ」が全英8位のヒット。これは、モーリス・ウィリアムス&ザ・ゾディアックスのカバーですが、日本のウェストコースト・ロック・ファンにはジャクソン・ブラウンのライヴのハイライト・ナンバーとして知られている曲ですね。

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 この次が「ジャスト・ワン・ルック」で全英2位。女性ドリス・トロイのカバーですが、こちらもウェストコースト・ロック好きにはリンダ・ロンシュタットのヴァージョンが有名です。

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 そして、翌1965年には「I'm Alive」で念願の全英1位を獲得しました。これはのちにリンダ・ロンシュタットによってカバーされ大ヒットした「悪いあなた(You're No Good)」を書いたクリント・バラード・ジュニアの作品。

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 この曲はもともとはジーン・ピットニーのために書かれたもので、ピットニーに断られ、次にウェイン・フォンタナに断られ、フォンタナからトガリー・ファイヴというバンドに曲が渡ると、気に入った彼らはアビーロード・スタジオで録音しますが、噂を聞きつけたホリーズが急いで録音し彼らより先に発売してしまったそうです。

 結局トガリー・ファイヴはこの曲のリリースをつぶされてしまい、その上に、ホリーズは大ヒットしたということで、相当な恨みをかってしまったようです。

 

 そして1966年に発売され全英5位になったのがこの「バス・ストップ」です。そして、彼らにとって初めてのアメリカでの大ヒット(5位)になりました。

 曲を書いたのはグレアム・グールドマン。のちに10ccを結成し、あの「アイム・ノット・イン・ラヴ」を共作する人です。この頃、彼はまだ19歳だったそうです。

  彼はマンチェスター市内をバスに乗っている時にこの曲のアイディアを思いつきました。そして、バスストップというタイトルを彼の父親で劇作家のハイメ・グールドマンに話すと、何日か後にハイメが

「Bus stop、wet day、she's there I said please share my umbrella」という歌詞を考えてくれたそうです。

 その歌詞を読んでゆくうちにグレアムはメロディが浮かび、自分で考えたかのように曲ができていったそうです。

 

 そして、この曲の肝とも言えるパート

”Every morning I would see her waiting at the stop
Sometimes she's shopped
And she would show me what she bought”

 はバスに乗っている時に、突然一気に浮かんで来たのだそうです。

 彼はこういうことは滅多にないと言い、”自分自身の潜在意識からの贈り物”という表現をしています。

 

  さて、この曲のデモをホリーズの次に聴いたのがハーマンズ・ハーミッツでした。彼らのマネージャーがグレアム・グールドマンの妹と結婚していたので、いつもデモは真っ先に来ていたのですが、「バス・ストップ」はハーマンズ・ハーミッツに合わないとグレアムは考えたようで先にホリーズに聴かせていました。

 その後に聴いたハーマンズ・ハーミッツも”冗談じゃない、俺たちもこの曲をやりたい”と考えたようです。

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 こちらのアレンジは、この後レッド・ツェッペリンのベーシストになるジョン・ポール・ジョーンズだったようです。

 ホリーズのシングルとこの曲が入ったハーマンズ・ハーミッツのアルバムのレコーディングは、両方とも1966年の5月なので、ハーマンズ・ハーミッツはホリーズのヴァージョン聴いてカバーしたのじゃないようです。

 ボーカルのピーター・ヌーンはホリーズのデモ・ヴァージョンは良くなかったと言っているので、デモは聴いていたようですが。

 両方のヴァージョンに共通する(微妙に違いますが)あの印象的なイントロのギターはいったい誰が考えたのでしょうか。

             

 さて、このメロディ、そしてバス停の恋物語というのも日本人好みだったのでしょう。日本のアーティストもたくさんカバーしています。

 面白いのは女性シンガーが結構歌っているところ。雨のバス停の出会いを女性目線で描いた歌詞のタッチが時代とともに変わっているところが面白いです。

 

 まずはキャンディーズ(1974年)

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1988年には3つもカバー・ヴァージョンがリリースされました。

まずは荻野目慶子は得意のユーロビート調で。歌詞は売野雅勇

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  僕は知りませんでしたが女優の奥貫薫さんがメンバーだったというエンジェルス。

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 他に、同じ年にムーンライダーズ鈴木慶一が歌詞を書いた野田幹子のヴァージョンは、他の男性と待ち合わせしていたのに、素敵な人に傘を差し出されて動揺する女の子の葛藤を歌詞にしているちょっと変わった仕上がり。動画はありませんでしたが、興味のある方はサブスクなどで聴けますので、ぜひ。

 

 

(この曲に関する情報はSongfactsを参考にしました)

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