まいにちポップス

1日1ポップス。エピソード、謎解き、勝手な推理、などで紹介していきます

「ワンダフル・ワールド(Wonderful World)」サム・クック(1960)

 おはようございます。

 今日はサム・クックの「ワンダフル・ワールド」です。


Sam Cooke - What A Wonderful World (Official Lyric Video)

 

 ”*歴史のことなんてよくわからない 生物学もよく知らない

  科学の本なんてさっぱりだし   学校で習ったフランス語もそう

  でも僕が君を愛してることはよくわかってる

  もし君が僕愛してくれたら なんて素晴らしい世界なんだってことも

 

  地理のことなんてよくわからない 三角法もよく知らない

  代数だってさっぱりだし 計算尺って何のためにあるのかも

  でも、1+1は2ってことはよくわかる

  そして、片方の1がもし君だったら なんて素晴らしい世界なんだってことも

 

  優等生になるって言ってるわけじゃない

  でも、そうなろうとがんばってる

  優等生になれば 君の愛を勝ち取れるかもしれないから

 
  *繰り返し                                                  ”   (拙訳)


  サム・クックR&B史上最高のシンガーと呼ばれている一人です。

 彼はゴスペルのグループで歌い始めたところ大変な評判になり、教会には普段来ないような若い女性たちが殺到したそうです。ゴスペルからポップ・ミュージックの世界に転身することは当時はほとんどないことでしたが、彼は一念発起してそれに挑むとデビュー・シングル「ユー・センド・ミー」がいきなり全米1位の大ヒット、またたくまにスターになります。


Sam Cooke - Sam Cooke – You Send Me (Official Lyric Video)

  ちなみに、You Send Meは、相手が自分を別世界に連れて行ってくれると思うほど深く愛している、それだけ夢中だ、ということのようです。

  send は神様を主語にして使うことの多い動詞ですし曲調もとても穏便ですから、ポップ・フィールドに行っても採捕はゴスペルのムードは残そうという意図はあったのでしょう。

 この保守的ででスマートなスタイルが白人層にもウケて、黒人への差別が激しい時代にあっても彼はクロスオーヴァーした人気を得ることができました。

 そして、彼はその白人にも人気があるという立場を、黒人の地位向上のために使います。黒人の客を差別する会場ではコンサートをボイコットするなど常に不正と戦う姿勢を見せ、他の黒人アーティストが世に出るために惜しみなくバックアップしました。アグレッシヴに勇気を持って社会に立ち向かう姿は、モハメッド・アリらとともに黒人にとっての希望であり、頼もしいリーダーでもあったのです。

 

 「ユー・センド・ミー」はキーン・レコードというインディーズからリリースされましたが、彼の人気がどんどん上がったので彼はメジャー・レーベルのRCAと契約することになります。

 そこで、キーン・レコードは何か発売できそうな音源を探し、ピックアップしたのがこの「ワンダフル・ワールド」でした。1年前にレコーディングされたものでした。

 興味深いのは曲の作者として、サムとともにハーブ・アルパートとルー・アドラーの名前があることです。

 ハーブ・アルパートは1960年代に爆発的な人気を誇ったトランペッターであり、ポリスやジャネット・ジャクソンなどスーパースターも輩出したA&Mレコードの創立者です。


Bittersweet Samba

  ルー・アドラーはのちにママス&パパスの「夢のカリフォルニア」やキャロル・キングの「つづれおり」をプロデュースし、そのリリース元であるダンヒルやオード・レコードのオーナーとなる人です。

popups.hatenablog.com

 アルパートとアドラーはお互いのガールフレンドが友達同士だったことから知り合って、意気投合し曲を作るようになったそうです。

 アルパートはずっと音楽をやってきましたが、アドラー衣料品店の店長や保険のセールスマンをやっていました。

 3~4曲でもが出来上がると二人は売り込みを始めますが、メジャーは相手にしてくれなかったのでインディーズを回ってみたところ、気に入って来れたのがサムをリリースするキーン・レコードのA&Rだったのです。そのA&Rバンプス・ブラックウェルはリトル・リチャード、レイ・チャールズクインシー・ジョーンズなどがまだ若手時代に仕事をしたキャリアを持ち、彼らの先生となりレコードビジネスのノウハウを教えて来れたそうです。

 彼らがサムに提供したのは「オール・オブ・マイ・ライフ」という曲で1958年にシングルのB面としてリリースされています。


Sam Cooke - All of My Life (1959)

 「ワンダフル・ワールド」はアルパートとアドラーが作りかけていたものをサムが気に入って仕上げを手伝って来れたのだと、アドラーは語っています。アドラーとアルパートは当初この曲はシリアスなものだと思っていなかったようですが、サムがこの曲の方向性を”教育”の問題として改訂していったのだそうです。

 

 最初に紹介したのは、この曲のオフィシャルのリリック・ビデオですが、分割場面でニュース映像が流れているものになっています。社会的な意識のある曲だというスタンスなんですね。

 サム・クックの社会意識がはっきり反映された曲としては「チェンジ・イズ・ゴナ・カム」が有名ですが、それに比べると「ワンダフル・ワールド」はあくまでもサムが”改訂した”ものなので、そこまで強いものではありません。しかし、彼の社会意識が初めて反映された曲ということになっているようです。

 

 時代を超えて残ってゆく曲というのは、さまざまな解釈が加えられてゆくものなので、この曲が社会的に意味のあるものとして評価されることにはまったく異論はありませんが、同時にこの曲の持っている”楽観性”もかけがえのないものだと僕は思います。

 

 最後にこの曲のカバーを二つ。

 1964年にサムクックのオリジナル以上のヒット(全米4位)となったハーマンズ・ハーミッツ。よくモア悪くもこの曲のポップスの魅力が浮き彫りになっていると思います。


Wonderful World

 そして、アート・ガーファンクル1977年のアルバム「ウォーター・マーク」収録のヴァージョン。ポール・サイモンジェイムス・テイラーがコーラスしています。

そしてオリジナルにはない〜中世のことなんてよくわからない 絵だけ見てページをめくった・・・などという4番が付け加えられています。


Art Garfunkel /James Taylor/ Paul Simon - What A Wonderful World

 

 

ザ・ワンダフル・ワールド・オブ・サム・クック

ザ・ワンダフル・ワールド・オブ・サム・クック

 

 

ベスト・オブ・ハーマンズ・ハーミッツ

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ウォーターマーク(期間生産限定盤)

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