まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲を選曲しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ナイス・フォークス(Nice Forks)」フィフス・アヴェニュー・バンド(1969)

 おはようございます。

 今日はフィフス・アヴェニュー・バンドの「ナイス・フォークス」を。


Nice Folks

 

     ”気のいいヤツらのおかげで 一日中歌いたい気分

    にっこり笑って ただハローと言えば

       考え事もどこかに消えて 

    そして一人でただぶらついている時は

    ヤツらのそばに座って過ごしたくなるんだよ

 

       いかしたヤツらにはちゃんとスタイルがあるんだ

    ちょっと座っていけよっていう声のかけ方を知ってるんだ

    一杯のお茶を飲んで  ひょっとしたらおごりかもしれない

    深夜のブルースだって ヤツらは得意さ

 

      以前は家で一人っきりで 何かやったり考えたりしていたものさ

    誰の助けもなく だけどある日知ることができたんだ

 

   イカしたヤツらのスタイルを ヤツらの笑顔を

   ただ座るだけで 居心地がいいんだ

   時間には余裕があって ネクタイをゆるめ 

      気楽にやるんだ

 

  気のいいヤツらはいつも僕の心の中

  孤独なんてものは置き忘れてきたよ

  ひとりでいることはもう辛くない

  だっていつもヤツらがそばにいるんだから

 

  笑うことがこんなに楽しいなんて忘れてた

    やらなくちゃいけないことはこれだったんだね

  試してみるんだ、ちょっと座って、見るだけでいい

  イカしたヤツらのスタイルを ステキなヤツらのスマイルを

  気のいいヤツらのスタイルを   ”       (拙訳)

 

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 NYとLAの魅力が絶妙にブレンドされた名盤からの1曲

 

 このアルバム・ジャケットに写っているのが、彼ら”フィフス・アヴェニュー・バンド”ですが、歌に出てくる”Nice Forks(気のいいヤツら)”って、あなたたちのことじゃないの?って思うくらい、いい感じにリラックスした笑顔を浮かべていますね。  

       

 フィフス・アヴェニュー・バンドはニューヨークのグルニッジ・ヴィレッジで活動していたグループ。

 メンバーはピーター・ゴールウェイ (Vocal, Guitar)、ケニー・アルトマン ( Guitar, Bass) ジョン・リンド ( Vocal)、ジェリー・バーナム (Bass, Flute)
 マレー・ウェインストック ( Keyboards)、 ピート・ヘイウッド (Drums)。 

 

   高校の同級生だったピーターとケニー、それにジェリーが在籍していたストレンジャーズというグループが解散したあと、ジョンとマレイが組んでいたエイヴォン・ハーバーというグループに加わるという形で1968年に結成されたグループです。

 

 同じくグリニッジ・ヴィレッジで活動していてピーターたちとも知り合いだった、元ラヴィン・スプーンフルのザル・ヤノフスキー、ジェリー・イエスターが、この彼ら唯一のアルバムのプロデューサーをつとめています。

 

 ザルは1967年にラヴィン・スプーンフルを脱退し、その代わりにバンドに加わったのがジェリー・イエスターだったのですが、1968年には実質上解散状態になったのをきっかけに、二人はコンビを組みプロデュース業を始めていました。

 

 おもしろいのは、グリニッジ・ヴィレッジをベースにしていた、典型的な”イースト・コースト・サウンド”のグループとプロデューサーの組み合わせなのに、ウエスト・コーストでレコーディングされたということです。

 それはザルとジェリーが本拠地をLAに移していたからなんです。

    そのことが、洗練された都会的な香りもありながら、同時に開放感、風通しの良さを感じる作品になった、隠れた要因だったのじゃないかと僕は思います。

 

  グループの中心メンバーはピーター・ゴールウェイ。このバンド解散後にリリースした「オハイオ・ノックス」(1971)「ピーター・ゴールウェイ」(1972)という二枚のソロ・アルバムも、とても良質な作品です。

 

 しかし、このアルバムで最も”ポップ・センス”を発揮しているのは、ケニー・アルトマン。

 この「ナイス・フォーク」も彼の作品で、他にもシングルになった「ONE WAY OR THE OTHER」とピーターとの共作「EDEN ROCK」は、このアルバムを代表するトラックだとする人は少なくありません。


One Way or the Other


Eden Rock

 そして、日本のポップス・マニアにとって、ケニーは山下達郎のファースト・アルバム「サーカス・タウン」に参加していることで記憶されているでしょう。

 「サーカス・タウン」のB面(CDの後半)の4曲がLA録音で、達郎と「フィフス・アヴェニュー・バンド」のプロデューサー、ジェリー・イエスターがアレンジをやっているのですが、当初バックコーラスで参加するはずだったケニーが達郎の要望で、ベースもやることになったそうです。

 

 「サーカス・タウン」からケニーとジェリーが達郎と一緒にコーラスをやっている「ラスト・ステップ」を。


山下達郎 - Last Step

 西海岸録音なのに、コーラスがNYっぽいところがミソですね。ちなみに、ピアノのリフは「ホワット・ア・フール・ビリーヴス」の先駆け(こっちが一年早い)のような感じでいかにも西海岸っぽいですね。ピアノのジョン・ホッブスは、バリー・マン「サバイバー」、ブルース・ジョンストン「ゴーイング・パブリック」などに参加している人です。「ホワット・ア・フール・ビリーヴス」のピアノ・リフの元ネタはキャプテン&テニールの「愛ある限り」で、ジョン・ホッブスはキャプテンことダリル・ドラゴンとも近い人脈の人ですから、こういうリフが出てくるのは自然なのかもしれませんね。

 

 また、ケニーはアース、ウィンド&ファイアーに「FEELIN' BLUE」という曲を書いていて、これがまたケニーらしい心地よい曲で、フィフス・アベニュー・バンドを思い起こさせる雰囲気があります。


Earth, Wind & Fire - Feelin' Blue (Audio)

 ちなみに、フィフス・アヴェニュー・バンド解散後、最も”覚醒した”メンバーはジョン・リンドです。

 作家としてアース、ウィンド&ファイアーの「ブギー・ワンダーランド」、マドンナの「クレイジー・フォー・ユー」、ヴァネッサ・ウィリアムスの「セイヴ・ザ・ベスト・フォー・ラスト」といった大ヒット曲を書いています。

 

 

CIRCUS TOWN (サーカス・タウン)

CIRCUS TOWN (サーカス・タウン)

  • アーティスト:山下達郎
  • 発売日: 2002/02/14
  • メディア: CD
 

 

 

太陽の化身

太陽の化身