まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「アルフィー(Alfie )」シラ・ブラック(1966)

 おはようございます。

 今日はシラ・ブラックの「アルフィー」。バート・バカラックの代表曲のひとつですね。


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What's it all about, Alfie?
Is it just for the moment we live?
What's it all about when you sort it out, Alfie?
Are we meant to take more than we give
Or are we meant to be kind?

 

And if only fools are kind, Alfie
Then I guess it's wise to be cruel
And if life belongs only to the strong, Alfie
What will you lend on an old golden rule?


As sure as I believe there's a heaven above, Alfie
I know there's something much more
Something even non-believers can believe in

 

I believe in love, Alfie
Without true love we just exist, Alfie
Until you find the love you've missed you're nothing, Alfie
When you walk let your heart lead the way
And you'll find love any day, Alfie
Alfie ...

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”  いったいどうなの?アルフィー

 その瞬間を生きていればいいものなの?

 何かを選び取る時 あなたならどうする? アルフィー

 私たちは与えるよりも奪うものなの?

 それとも親切にするべきなのかな 

 

    もし親切なのは愚か者だけなら

 だったら冷酷な方が賢いわね

 もし人生が強い者だけのためにあるなら アルフィー

 この古いルール(黄金律)にあなたは何を託すの?

 

    私は天国があると信じてるわ、アルフィー
    それと同じくらい、もっと凄いものがあることも知っている
    神の信者でなくても信じられる何か

 

 私は愛を信じているの アルフィー

 真実の愛なんてなくても生きられるけど アルフィー

 でもこれまであなたが見逃してきた愛を見つけなかったら 

 生きている意味がないのと一緒

 だから心が導くままに歩いていけば

 いつかあなたは愛を見つけるはず アルフィー アルフィー” (拙訳)

 

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 このブログに登場する多くの名曲、大ヒット曲は、日々悪戦苦闘しているソングライターたちがあるとき突然にすらすらっと15分くらいで書けた、というものがけっこう多いのですが、そういうひらめきとともに曲が出来上がったかたちで降りてくる、という経験など一度もないと断言している人もいます。

 それが、バート・バカラックです。そんな彼が自身で最も気に入っている曲がこの「アルフィー」です。これもまた、書くのに大変苦労した曲だったそうです。

 この曲は同名のイギリス映画のために書いた曲です。バカラックは当時本国アメリカに負けないほどイギリスでも人気が高く、イギリス映画「何かいいことないか子猫チャン(What's New, Pussycat?)」(1965年)ですでに映画音楽の実績もありました。

 

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 映画の撮影はすでに終わっていたそうで、脚本を読んで気に入ったバカラックと作詞家のハル・デヴィッドはその依頼を受けることにしました。

 数々の名曲を残している二人は曲先行で作ることが多いのですが、この「アルフィー」だけはハル・デヴィッドの歌詞が先に出来ていました。そしてその歌詞があまりに素晴らしかったので、通常8小節のところが10小節になったりと、歌詞のサイズに合わせた構成でバカラックは作曲しました。

 

 当初この曲のシンガーとしては、バカラック作の「(There's) Always Something There To Remind Me」で全英NO.1の実績があるサンディ・ショーに白羽の矢が立ちましたが断られ、次にやはりバカラックの書いた「恋するハート(Anyone Who Had A Heart)」で全英1位になったことのあるシラ・ブラックに依頼が届きます。

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  アルフィー、なんて犬の名前みたいでそんな歌を歌いたくない、と最初シラは思ったそうで、バカラック本人がアレンジしてくれるなら、アメリカからイギリスに来てセッションを指揮してくれるならいいわ、と断るために難題を提示したそうですが、バカラックがすべて快諾したため引き受けざるを得なくなったと後にシラは語っています。

 

 彼女はリバプール出身でビートルズの擁護を受けてデビューしていたこともあって、プロデュースはジョージ・マーティンが手掛けていました。ですから、この曲は編曲バカラック、プロデュースがジョージ・マーティンという、夢の共演が実現しているわけです。

 映画公開に先駆けてこの曲はリリースされ全英9位のヒットになります。しかし、映画本編の音楽はジャズ・サックス奏者ソニーロリンズが手掛けていて、音楽のテイストが合わないと言うことで、バカラックが書いた「アルフィー」は本編では使われずエンドロールに流れるだけで、サントラ盤にも収録されませんでした。

 

  その後、この映画のアメリカ公開に際して配給会社が、宣伝のためこの曲をサントラに入れたい、しかも歌うのはアメリカで実績のないシラ・ブラックじゃなく、アメリカで知名度のある歌手がいいということで、シェールが歌うことになります。

 プロデュースしたのはシェールの相方であったソニー・ボノでした。彼は当時フィル・スペクターに心酔し舎弟のような存在でしたので、フィル・スペクターの本拠地”ゴールド・スター・スタジオ”でこの曲を”疑似ウォール・オブ・サウンド”で録音しました。

 彼のアレンジにバカラックは耐えられなかったようで、後に”<アルフィー>に対する仕打ち”とまで語っています。


Cher - Alfie

  バカラックの思いとしては、どんな曲でもウォール・オブ・サウンドにすればいいってもんじゃない、ってことだったのしょうか、それとも、単にソニー・ボノの力量の問題で、フィル・スペクターがやっていたらまた違っていた、ということなのでしょうか。

 多分、フィル・スペクターがやっていてもバートは気に入らなかったと思います。それはバート自身のこの曲のアレンジを聴けばわかる気がします

 

( *バカラック自身がピアノを弾き、オーケストラを指揮する貴重な映像です)


Cilla Black - Alfie (Live)

 ともかく、シェールのヴァージョンは全米最高32位と、期待にはこたえられずに終わってしまいました。

 

 そして、そこでようやく真打が立ち上がります。

 ディオンヌ・ワーウィックです。バカラックの曲を最もたくさん歌い、たくさんヒットさせた人です。「アルフィー」も当初バカラックもデヴィッドもディオンヌに歌わせたかったという話もあります。

 バカラックとデヴィッドのプロデュースで録音されたディオンヌのヴァージョンは翌1967年にリリースされ全米最高15位。これがアメリカでのこの曲の最高位になりました。

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 シラがイギリスで大ヒットさせた「恋するハート」は元々ディオンヌがアメリカで大ヒットさせたもののカバーで、シラのヒットのおかげで彼女のヴァージョンはイギリスでまったく売れなかったという苦い経験があったそうですので、これでディオンヌも少しはスッキリしたんじゃないでしょうか、、。

 

 

  この歌は映画の主人公である、身勝手なプレイボーイのアルフィーに向かって語りかけるスタイルですが、ハル・デヴィッドの歌詞は世界中すべての人たちに語りかけ、投げかけてくるような普遍的なメッセージがありますよね。

  ハル・デヴィッドとバカラックの力量が最高のレベルで発揮されかつ融合していて、バカラックが最も気に入っているというのもすごく納得できる気がします。

 

 

  さて、日本ではこの曲、このヴァージョンが一番有名かもしれないですね。

ヴァネッサ・ウォリアムス。田村正和、キムタク、宮沢りえのドラマ「協奏曲」の主題歌になっていました。


Vanessa Williams - Alfie

 最後はバカラック本人の弾き語りの動画がありますのでそちらを。

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Alfie

Alfie

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