おはようございます。
今日はバート・バカラックの「恋よ、さようなら」です。
I'll never fall in love again - Dionne Warwick
”恋をしたなら何がもらえるの?
膨らんだ恋心をはじけさせる男だけね
あんなに大変な思いをしてそれだけなんて
もう二度と恋なんてしない
もう二度と恋なんてしない
男とキスをしたら何がもらえるの?
肺炎にかかるほどのバイ菌よ
そうなったあとは あなたに絶対電話もくれないわ
もう二度と恋なんてしない
もう二度と恋なんてしないって知らないの?
恋がどんなものかなんて私に言わないで
だって恋をしたばっかりで
恋の鎖から抜け出せて嬉しいの
あなたもその鎖にしばられてるでしょ
それを思い出させるために私はここにいるの
恋をしたなら何がもらえるの?
嘘と痛みと悲しみばかり
だから今は少なくとも明日までは
もう二度と恋はしないわ
だから、もう二度と恋はしないわ ” (拙訳)
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What do you get when you fall in love?
A guy with a pin to burst your bubble
That's what you get for all your trouble
I'll never fall in love again
I'll never fall in love again
What do you get when you kiss a guy?
You get enough germs to catch pneumonia
After you do, he'll never phone ya
I'll never fall in love again
Dontcha know that I'll never fall in love again?
Don't tell me what it's all about
'Cause I've been there and I'm glad I'm out
Out of those chains, those chains that bind you
That is why I'm here to remind you
What do you get when you fall in love?
You only get lies and pain and sorrow
So far at least until tomorrow
I'll never fall in love again
No, no, I'll never fall in love again
Ahh, out of those chains, those chains that bind you
That is why I'm here to remind you
What do you get when you fall in love?
You only get lies and pain and sorrow
So far at least until tomorrow
I'll never fall in love again
Dontcha know that I'll never fall in love again
I'll never fall in love again
Writer/s: HAL DAVID, BURT BACHARACH
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軽やかで洗練された曲ですが、”男とキスしてもらえるのは何?肺炎になるのに十分な菌だけ”なんていう歌詞が出てくるところがすごく斬新です。
しかも「肺炎(pneumonia)」と「あなたに電話する(Phone ya)」で韻を踏んでいるのですから。
実はこの曲を作曲したバート・バカラックは、作った時に本当に肺炎にかかっていたそうです。
ヒット・ポップスだけではなく、映画音楽も手がけ始めていたバート・バカラックとハル・デイヴィッドのコンビに注目していたのは、ブロードウェイの人気作家ニール・サイモンでした。
プロデューサーのデイヴィッド・メリックがニールに一緒に仕事をしてみたい作曲家はいるかとたずねたときに、彼はバカラック&デイヴィッドならブロードウェイに新風を吹き込めるだろうと答えたのだそうです。
そして、ニールは舞台化してみたい映画として「アパートの鍵貸します」(1960年ビリー・ワイルダー監督)をあげたそうです。
(「アパートの鍵貸します」は出世のために、愛人との密会場所として上司に自分の部屋を貸すサラリーマンの悲哀を描いたロマンティック・コメディのバイブル的作品、アカデミー作品賞もとっています)
そういった流れで、「アパートの鍵貸します」の舞台化作品「プロミセズ・プロミセズ」の音楽をバカラックとデイヴィッドが手がけることになりました。
ミュージカルはほとんど出来上がりましたが、ブロードウェイではじめる前に、テストを兼ねて他の都市で公演するのが慣例らしく、まずボストンで初演されたそうです。
そこでの舞台を見て、もう4曲曲を加えることになったそうですが、バカラックは肺炎にかかり入院することになったそうです。
病院にはプロデューサーのメリックから容赦ない催促が頻繁にきたそうで、退院するとすぐにホテルに缶詰にされ、彼はデイヴィッドと曲を書くことになります。気分は最悪だったそうですが。。
ハル・デイヴィッドはバカラックの肺炎にヒントをもらった例のくだりの入った歌詞を完成させていました。
「私はピアノの前に座り、ハルの歌詞を目の前にセットした。多分、気分があまり優れなかったせいだろう、わたしは<恋よ、さようなら>のメロディを人生最速のスピードで書き上げた」
(「バート・バカラック自伝 ザ・ルック・オブ・ラヴ」)
別のインタビューで彼は
「ハルと書いた中では、一番速くかけた曲かも。ボストンの病院から退院して、翌日のショウに間に合わせようと書いた曲だ」
(「インスピレーション」ポール・ゾロ著)
なんと、次の日がもう本番だったんですね。
このブログでは、名曲、大ヒット曲の多くはあっという間にかけたものが多い、という法則のようなものを掲げていますが、バカラックだけは例外のようで、曲が完全にできあがったかたちで降りてくるという経験はまだ一度もしたことがないし、あまりにも簡単に浮かんでくるメロディは全く使いものにならないと思っているので時間をかけて見直す、そう断言しています。
しかし、この時のような”やむにやまれない”状況の中ではそのまた例外もあるんですね。
そして、バカラック史上最速で書かれたというこの「恋よ、さようなら」はまぎれもない名曲だと僕は思います。
この曲のカバーで僕の好きなディーコン・ブルーのカバーを。1990年にイギリスで2位まで上がるヒットになっています。
Deacon Blue - I'll Never Fall in Love Again
これもよかったですね!映画「オースティン・パワーズ:デラックス」。エルヴィス・コステロ、そしてバート・バカラック本人も出ていました。