まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ミセス・ロビンソン(Mrs. Robinson)」サイモン&ガーファンクル(1968)

 おはようございます。

 今日はサイモン&ガーファンクルの「ミセス・ロビンソン」です。


Simon & Garfunkel - Mrs. Robinson (Audio)

 

  "それでは乾杯 ミセス・ロビンソン

          イエスはあなたが思うよりもあなたのことを愛していますよ

    神のご加護を、どうか、ミセス・ロビンソン

    天国は祈るものの場所を用意しています

 

          私たちのファイル用にあなたのことを少し知りたいのです

          あなたが自分でやっていけるようになるお手伝いをしたいのです

     周りを見渡してみてください 同情している視線ばかり

     くつろいだ気分になるまで    グラウンドを散歩してください

 

   それでは乾杯 ミセス・ロビンソン

           イエスはあなたが思うよりもあなたのことを愛していますよ

      神のご加護を、どうか、ミセス・ロビンソン

      天国は祈るものの場所を用意しています

 

             誰も絶対行かない隠れ場所に隠してください

    貯蔵庫に入れるんです カップケーキと一緒に

    それは、ちょっとした内緒の、ロビンソン家の問題 

       なにより、子供達からは隠さなければいけないですよ

 

   すべてOK   ミセス・ロビンソン

           イエスはあなたが思うよりもあなたのことを愛していますよ

      神のご加護を、どうか、ミセス・ロビンソン

      天国は祈るものの場所を用意しています

 

   日曜の午後はソファでくつろいだり

   選挙候補者の討論会に行くんですね

   そこで笑ったり 叫んでみたり

   選ばなければならなくなったら

   どうみてもあなたの負けです

 

   どこに行ってしまったんですか?ジョー・デマジオさん

   国民はさみしい視線をあなたに向けていますよ

   あなたが言うことはなんですか?ミセス・ロビンソン

           ジョルティン・ジョー(ジョー・デマジオ)はもう行ってしまったんです”

                           (拙訳)

             

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And here's to you, Mrs. Robinson
Jesus loves you more than you will know
(Whoa, whoa, whoa)
God bless you, please, Mrs. Robinson
Heaven holds a place for those who pray
(Hey, hey, hey Hey, hey, hey)

We'd like to know a little bit about you for our files
We'd like to help you learn to help yourself
Look around you all you see are sympathetic eyes
Stroll around the grounds until you feel at home

And here's to you, Mrs. Robinson
Jesus loves you more than you will know
(Whoa, whoa, whoa)
God bless you, please, Mrs. Robinson
Heaven holds a place for those who pray
(Hey, hey, hey Hey, hey, hey)

Hide it in the hiding place where no one ever goes
Put it in your pantry with your cupcakes
It's a little secret just the Robinson's affair
Most of all you've got to hide it from the kids

Koo-koo-ka-choo, Mrs. Robinson
Jesus loves you more than you will know
(Whoa, whoa, whoa)
God bless you, please, Mrs. Robinson
Heaven holds a place for those who pray
(Hey, hey, hey Hey, hey, hey)

Sitting on a sofa on a Sunday afternoon
Going to the candidates' debate
Laugh about it, shout about it
When you've got to choose
Every way you look at this you lose

Where have you gone, Joe DiMaggio?
Our nation turns its lonely eyes to you
(Woo, woo, woo)
What's that you say, Mrs. Robinson?
Jolting Joe has left and gone away
(Hey, hey, hey Hey, hey, hey)

 

Writer/s: Paul Simon

 

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「ミセス・ロビンソン」楽譜はこちら

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  1967年、ダスティン・ホフマン主演の映画「卒業」で使われ、翌68年にシングルとして全米1位に輝いた曲です。

 ”ミセス・ロビンソン”とは、ダスティン・ホフマン演じる主人公ベンジャミンが関係を持つ相手の名前です。彼女は父親の共同事業者の奥さんで自分の母親ほど年齢がはなれています。演じたのはアン・バンクロフトでした。ミセス・ロビンソンの娘がキャサリン・ロス演じるエレイン。

 結婚式の最中のエレインをベンジャミンが奪って逃亡するというクライマックスは、当時最も有名な映画のシーンの一つとして強烈なインパクトを残したものですが、さすがに50年もたつので、若い世代では知らない人がほとんどかもしれません。

 

 映画のシーンはこんな感じです。


The Graduate [1967] Mrs. Robinson (Alternative Version) Wedding Day Scene HD

 歌詞が違っていて

 (”Stand up tall, Mrs. Robinson God in Heaven smiles on those who pray”)

 リズムが、ボー・ディドリー風ですね。

 

 実は映画の段階では、曲が完成していなかったんです。

 映画用の曲を依頼されたポール・サイモンは2曲仕上げましたが、監督のマイク・ニコルズから却下され、マイクはサイモン&ガーファンクルの既存曲(「サウンド・オブ・サイレンス」「スカボロー・フェア」「4月になれば彼女は」)を先に映画にはめていました。

 ポールはルーズベルト大統領の奥さんで女性や黒人の権利のために活動したエレノア・ルーズベルトをイメージした「ミセス・ルーズベルト」という曲を書き始めます(歌詞の選挙候補者の討論会のくだりなどは、その名残だという説があります)。

 

 そのあと、映画の登場人物に合わせて「ミセス・ロビンソン」にしようかとも思って2つのパターンをいったりきたりしていたようですが、アート・ガーファンクルがマイクに「ミセス・ロビンソン」という曲があると話し、そんな曲があるならすぐ聴かせろという話になります。そして彼らが歌って聴かせるとマイクは気に入り採用されたので、自然と曲は「ミセス・ルーズベルト」ではなく「ミセス・ロビンソン」に決まったそうです。

 

 そしてあらためて自分たちのアルバム用にこの曲をレコーディングします。

”レッキング・クルー”のハル・ブレイン(ドラムス)、ラリー・ネクテル(ベース)にポール(ギター)という編成で、ハルはコンガも叩いたそうで、アート・ガーファンクルによるとコンガ、ベース、ギターは一本のマイクを囲むようにして録音したそうです。

 

 結果映画は大ヒットし「ミセス・ロビンソン」はグラミー賞のレコード・オブ・ザ・イヤーに輝きます。

 ただ大ヒットしただけではなく、映画も楽曲もスタンダードになっていきます。

 

 「卒業」はAFI(アメリカン・フィルム・インスティチュート)が選定する「アメリカ映画ベスト100」で1998年年版で7位、2007年版で17位に入り、”名作”の地位を揺るぎないものにしています。

 

 「ミセス・ロビンソン」は同じくAFIが2004年に選出した、映画で使われた歌「ベスト100」でなんと6位になっています。

 1位「虹の彼方に」(オズの魔法使い)2位「アズ・タイム・ゴーズ・バイ」(カサブランカ)3位「雨に唄えば」4位「ムーン・リバー」(ティファニーで朝食を)5位「ホワイト・クリスマス」の次、7位が「星に願いを」(ピノキオ)ですから、大スタンダードの仲間入りしていると言っていいのでしょう。

 

 20世紀中にテレビ、ラジオで最もオンエアされた曲ランキングでも7位、「サウンド・オブ・サイレンス」が18位、「明日に架ける橋」が19位ですから、それよりも上です。

 アメリカでサイモン&ガーファンクルと言ったら「ミセス・ロビンソン」なんですね。

   

 最後にかまかいところなんですが、歌詞に出てくる「Koo-koo-ka-choo」という言葉がどうも気になって調べたんですが、

 「ミセス・ロビンソン」が発売される数ヶ月前に発売されたビートルズの「アイ・アム・ザ・ウォルラス」で”Goo goo g'joob”というフレーズが出てきて、これはウォルラス=せいうち、の鳴き声とGood Jobを混ぜたものだという説もありますが、Koo-koo-ka-chooと聞こえた人も少なくなかったようです。

 

 これを聞いてポール・サイモンが使ったという可能性もあるように思います。

 海外の”Yahoo知恵袋”みたいなサイトで、Koo-koo-ka-chooもGoo goo g'joobも当時のヒッピーが使ったもので、"Everything is fine"とか"All good"というような意味だという意見があって、なんか腑に落ちたので僕の和訳ではそれを採用しました。

 あのポール・サイモンがサビの冒頭にわざわざ使うのだから、ただ面白がっただけじゃなく、何か多少意味はあるんじゃないかと思ったのです。ただし彼は歌詞が思いつかないとスキャットにしてしまう(「ボクサー」のライラライ〜とか)場合もあるので、

なんとも言えませんが。

 

 だいたい、ヒッピーの流行語をジョンやポールが採用したのか、まずは彼らの歌ありきでヒッピーたちに広まったのかということもわかりません。

 

ちなみに、Koo-koo-ka-chooという言葉はその後広がって言ったようで、「My Koo Ka Choo」なんて曲があったり、映画「ファインディング・ニモ」に出てくるウミガメの”クラッシュ”が口にしています。

 (開始42秒後あたりです)


Finding Nemo Turtle Scene

 

 "Koo-koo-ka-choo"について何かご存知の方はぜひ教えてください!

 

 

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