まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲を選曲しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「四月になれば彼女は(April Come She Will)」サイモン&ガーファンクル(1966)

 おはようございます。

今日はサイモン&ガーファンクルの「四月になれば彼女は」。


Simon & Garfunkel - April Come She Will

 

  " 四月になれば 彼女はやってくる

       雨で小川の流れが豊かに膨らむ頃に

    五月 彼女はそばにいてくれる

     僕の腕の中でふたたび安らぎながら,,

 

     六月  彼女の様子が変わる

     落ち着きのない歩調で 夜をうろつきまわる

  七月 彼女は飛び立つ

  飛ぶことに少しも警戒せずに

  八月 彼女は死んでしまう

  秋の風はひんやりして冷たい

        九月 僕は思い出す

  かつては新しかった愛も 古びてしまったことを   " (拙訳)

 

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April, come she will
When streams are ripe and swelled with rain
May, she will stay
Resting in my arms again
June she'll change her tune
In restless walks she'll prowl the night

July, she will fly
And give no warning to her flight
August, die she must
The autumn winds blow chilly and cold
September, I remember
A love once new has now grown old

 

Writer/s: Paul Simon

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 2分にも満たない小品ですが、

April=Will       May=Stay            June=Tune

July=Fly         August=Must      September=Remember

 と、日本人にもわかりやすいレベルで”韻”を踏むなど、不思議な余韻を残してくれる曲です。

「四月になれば彼女は」というイマジネーションを誘うタイトルもあって日本でもサイモン&ガーファンクルの隠れ人気曲です。

 個人的なことですが、僕の兄や叔父がこの曲をギターでせっせと練習していたので、イントロのフレーズはすごく記憶に残っています。

 

 

 

 ポール・サイモンは子供のころは黒人コーラス・グループに夢中になり、最大のアイドルがエルヴィス・プレスリーというR&RやR&Bの熱心なファンでした。

 最初はロックンロールのソングライターを目指していたようで、高校生のとき、近所に住んでいたアート・ガーファンクルと一緒にテープレコーダーに歌を録音し、ニューヨークの音楽出版社をはしごして売り込んだりしていたそうです。

 そのうちの1曲をあるスタジオでデモの録音をしていたら、そこで業界関係者が声をかけられ彼らは”トム&ジェリー”という名義でデビューすることになります。


Simon & Garfunkel: Hey School Girl

  この曲はインディーズながら全米最高49位と大健闘しますが、その後ヒットは続かず、アートは学業に戻り、ポールは一人で音楽活動を続けます。

 引き続き音楽出版社に顔を出しながらヒット曲を研究し、そういう曲をたくさん書いていたようです。ちなみに、キャロル・キングは大学の同級生だったそうで、デモ作りを一緒にしたことがあったそうです。

 しかし、職業作家として成功したのは彼女の方で、ポールは「彼女の成功はうれしかったけど、同時にむちゃくちゃ悔しかった」と語っていたようです。

 またこの当時、彼はデモ・シンガーもやっていて、しかもかなり優秀だったようでバート・バカラックも気に入って何曲か彼を使ったといいます。

 また、彼はソロ・アーティストとして、トム&ジェリー時代の芸名”ジェリー・ランディス”としてレコードを出していましたが不発に終わっています。やはり、まだティーンエイジャー向けの商業的なR&Rをやっています。


Jerry Landis aka Paul Simon - Anna Belle

 そして、大学で文学を学び、文学と詩に深くのめり込んだことと、ボブ・ディランを中心とするフォーク・ソングのスタイルに感銘を受けたことから、彼はヒット作家になる道に見切りをつけ、フォーク・シンガーとしての道を模索し始めます。

 しかし、彼が商業音楽に長く関わってきたせいでしょうか、ボブ・ディランを育んだニョーヨークのグリニッジ・ヴィッレジのフォークシーンから彼は受け入れてもらえなかったようです。それで彼はイギリスに向かい、ロンドンのフォークシーンで頭角をあらわすことになります。その間、ニューヨークに戻りアート・ガーファンクルと再活動し一緒にアルバム「水曜の朝、午前3時」(1964)をリリースしますが成功せず、また彼はロンドンに戻ることになります。

 ということで、ロンドンで彼の初期の代表曲の多くは書かれたのですが、この「四月になれば彼女は」もその1曲です。

 これは、ポールがロンドンで出会ったガール・フレンドが暗唱していた童謡にインスパイアされて作ったそうです。

 仮に彼がグリニッジヴィレジで受け入れられてロンドンに行っていなかったら、絶対に生まれていない曲だった、ということですね。

 そして、ロンドンでレコーディングされた彼のファースト・アルバム「ソング・ブック(The Paul Simon Songbook)」(1965)で、この「四月になれば彼女は」が初めて世にでることになります。当然、ポール・サイモンのみの歌唱です。


April Come She Will, Paul Simon Songbook 1965

 そしてサイモン&ガーファンクルの人気を猛烈に押し上げることになった映画「卒業」(1968)でもこの曲は効果的に使われています。


The Graduate April Come She Will

 

 

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