まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「僕のコダクローム(Kodachrome)」ポール・サイモン(1973)

 おはようございます。

 今日はポール・サイモンの「僕のコダクローム」です。


Paul Simon - Kodachrome (HQ)

  

  ”高校時代に習ったいろんなガラクタを思い出してみると

    自分でちゃんと頭を使えているのが不思議なくらいさ

    それにたいした教育を受けてないことで 困ったことなんて一度もない

    壁の落書きは読めるんだから

 

    コダクローム

          それは僕たちに素敵な輝く色をもたらした

        夏の鮮やかな緑も再現してくれる

        世界中が晴れているって思わせてくれる

   そうなんだ! 僕はニコンのカメラを持っている

   それで写真を撮るのが大好きなんだ

   だから、ママ 僕のコダクロームを取り上げないで

 

   もし僕が独身時代に知っていた女の子全員の写真を君が撮っていて

   ある晩、それを全部持ってきてくれたとしても

         僕の甘い妄想とは一致しないんだ

   白黒写真じゃ、全部が台無しになっちゃうからね

 

   コダクローム

           それは僕たちに素敵な輝く色をもたらした

         夏の鮮やかな緑も再現してくれる

         世界中が晴れているって思わせてくれる

   そうなんだ! 僕はニコンのカメラを持っている

   それで写真を撮るのが大好きなんだ

   だから、ママ 僕のコダクロームを取り上げないで

 

            ママ 僕のコダクロームを取り上げないで、、、” (拙訳)

 

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When I think back
On all the crap I learned in high school
It's a wonder
I can think at all
And though my lack of education
Hasn't hurt me none
I can read the writing on the wall

Kodachrome
They give us those nice bright colors
They give us the greens of summers
Makes you think all the world's a sunny day

Oh yeah
I got a Nikon camera
I love to take a photograph
So mama don't take my Kodachrome away

If you took all the girls I knew
When I was single
And brought them all together for one night
I know they'd never match
My sweet imagination
Everything looks worse in black and white

Kodachrome
They give us those nice bright colors
They give us the greens of summers
Makes you think all the world's a sunny day
I got a Nikon camera
I love to take a photograph
So mama don't take my Kodachrome away

Mama don't take my Kodachrome away
Mama don't take my Kodachrome away
Mama don't take my Kodachrome away

Writer/s: Paul Simon

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 コダクロームコダック社のカラーフィルムの名称。ある年齢以上に人には懐かしく、若い人には?という感じかもしれません。

 コダクロームは、キラキラした色彩や、夏の鮮やかな緑をもたらした、世界中が晴れの日だって思わせてくれる、と歌っていて、まるでCMソングです。(のちに実際にCMで使われたそうですが)

 

 それにしても、やっぱり、白黒写真からカラー写真にかわったときの感動ってすごく大きかったんでしょうね。

 (ちなみに、僕の赤ちゃんの頃の写真は全部モノクロです)

 それを考えると、いまは携帯電話であんなにきめ細かな画像を撮影できるようになったのに、もうそれほど感動しなくなっている自分がさびしくもあります。

 ただ、写真を撮るということに関しては、手軽になった分だけ昔よりはるかに多くの人が楽しんでいるのは確かですね。ほとんどSNSにあげるためになっていますが。

 

 とにかく、最初のインパクトって貴重なんだなと思います。

 

 では、ポール・サイモンがカラー写真にすごく衝撃を受けたからこの歌を書いたかというと、そうでもないみたいで、最初サビのメロディには「ゴーイング・ホーム」という言葉をはめていたそうです。

 

「でもソングライターとしてのぼくの本能は<ゴーイング・ホーム>というタイトルの曲を歌うわけにはいかないと告げていた。<ゴーイング・ホーム>という曲は、それこそ世界中で書かれているからだ」

                (「ポール・サイモン 音楽と人生を語る」)

 

そして「ゴーイング・ホーム」と似た響きを探す中で「コダクローム」という言葉がぱっと浮かんで、そこからイメージをふくらませながら、全体の歌詞をそれに合わせて変えたそうです。

 

 曲の後半、”ママ、僕のコダクロームを取り上げないで”

というフレーズがずっと繰り返しますが、普通ママが取り上げるとしたらフィルムじゃなくてニコンのカメラのほうじゃないかって気がしますけど。

 もちろん、そんな現実との整合性よりもコダクロームという言葉の響きの方が音楽的には大事なわけですね。

 

 コダクロームに関して彼はこんなことを言っています。

 

「コダクロームのおもしろいところは、スライドにすると実物よりよく見えることなんだ。色が実物よりよく出ていて、緑もずっと緑っぽい。カラー写真は誇大広告みたいなものだ。僕があの曲で言っているのは、欺(だま)しなのはわかっているけど、それはそれでかまわないってこと。それもありなのさ」

               (「ポール・サイモン 音楽と人生を語る」)

 

 それにしても、ポップス史上最高のソングライターの一人と言われ、詩的で、技巧的で、難解な歌詞も少なくないポール・サイモンですが、こういう風にインパクトの強い言葉を直感的に選ぶこともあるというのは興味深いことです。曲調によっては、考えすぎずに直感的にぽーん、とやったほうがいいことがある、そんな経験値が彼にはあったのかもしれません。

 

 それから、この曲のサウンド面での大きなトピックは

  通称”スワンパーズ”と呼ばれたジミー・ジョンソン(ギター)、バリー・ベケット(ピアノ)、デヴィッド・フッド(ベース)、ロジャー・ホーキンス(ドラムス)をはじめとする、アラバマ州のマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオのミュージシャンが参加していることでしょう。

  白人でいながら、アレサ・フランクリンウィルソン・ピケットなど本物のソウル・シンガーの演奏を手掛けたの伝説のプレイヤーたちです。

 ポール自ら、マッスル・ショールズ・サウンド・スタジオに赴き録音を行いました。

 ポールはステイプル・シンガーズの「アイル・テイク・ユー・ゼア」という曲を聴いて、この曲のメンバーで録音したいと思ったそうです。そして、スタジオにいたのがメンバーが全員白人だったので彼は驚いたそうです。


I'll Take You There - Staple Singers

 

 ちなみに、アルバム「ひとりごと」完成後、ポールは「アメリカの歌」をシングルに考えていたそうですが、「僕のコダクローム」を強く推したのが当時のレコード会社の社長であったクライヴ・デイヴィス だったそうです。

 

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