まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ボクサー(The Boxer)」サイモン&ガーファンクル(1969)

 おはようございます。

 今日はサイモン&ガーファンクルの「ボクサー」です。


Simon & Garfunkel - The Boxer (Audio)

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I am just a poor boy
Though my story's seldom told
I have squandered my resistance
For a pocket full of mumbles
Such are promises
All lies and jests
Still a man hears what he wants to hear
And disregards the rest

When I left my home and my family
I was no more than a boy
In the company of strangers
In the quiet of the railway station
Running scared
Laying low, seeking out the poorer quarters
Where the ragged people go
Looking for the places
Only they would know

Lie la lie, lie la la la lie lie
Lie la lie, lie la la la la lie la la lie

Asking only workman's wages
I come looking for a job
But I get no offers
Just a come-on from the whores
On Seventh Avenue
I do declare
There were times when I was so lonesome
I took some comfort there
La la la,,,

Lie la lie, lie la la la lie lie
Lie la lie, lie la la la la lie la la lie

Then I'm laying out my winter clothes
And wishing I was gone
Going home
Where the New York City winters
Aren't bleeding me
Leading me
Going home

In the clearing stands a boxer
And a fighter by his trade
And he carries the reminders
Of every glove that laid him down
Or cut him till he cried out
In his anger and his shame
"I am leaving, I am leaving"
But the fighter still remains

Lie la lie, lie la la la lie lie
Lie la lie, lie la la la la lie la la lie

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僕はただの貧しい少年

自分の話なんかめったにしないけど

ポケットいっぱいになるほどブツブツ言ったせいで

反抗心を無駄にすりへらしてしまったんだ

約束なんてものは みんな嘘か冗談さ

それでも人は自分の都合のいいことだけ聞こえて

他は無視してしまうんだ

 

家も家族も捨てたとき 僕はほんの子供だった

見知らぬ人たちのなかで 鉄道の駅の静けさの中で

すっかり怖気づいて 

身をひそめるように ボロを着た人たちが向かう

貧民街を求めて 彼らだけが知る場所を探した

 

Lie la lie, lie la la la lie lie
Lie la lie, lie la la la la lie la la lie

 

労働者の賃金でいいから

僕は仕事を求めてやって来た

だけど求人はなくて 

7番街の娼婦が声をかけてきただけだった

思い切って告白すれば 寂しくてしようがなかった時は

そこで慰めてもらったものさ

 

Lie la lie, lie la la la lie lie
Lie la lie, lie la la la la lie la la lie

 

そして、僕は冬服を広げて いなくなってしまいたいと願った

家に帰りたい、、

そこではニューヨーク・シティの冬が僕を痛めつけることもない

僕を導くんだ、、 家に帰りたい、、

 

開拓地に立つボクサー そして彼の職業はファイター

彼を打ちのめすか 泣き叫ぶまで傷つけた パンチを全部思い出しながら

怒りと恥ずかしさの中で言う 

”僕はもうやめる もうやめる”

だけど、そのファイターはまだそこにいるんだ

 

Lie la lie, lie la la la lie lie
Lie la lie, lie la la la la lie la la lie               (拙訳)

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 この曲は1969年にリリースされたシングルで、翌年にアルバム「明日にかける橋」にも収録されました。

 曲を書いたのは1968年に完成まで半年ほどかかり、レコーディングは100時間以上かけたそうです。

 しかも、ギターはナッシュビルで、ベースとドラムとヴォーカルはニューヨークのコロンビア・スタジオで録音されました。そしてホーンだけはニューヨークの小さな聖堂で録音し、その後またコロンビア・スタジオに戻ってストリングスをレコーディングし、それからまたナッシュビルに行き、トランペットとペダル・スティール・ギターを入れたそうですから、かなりこだわって制作されたものです。

 

 フィル・スペクターサウンド好きの僕としては、最後の反響音のすごいドラムが気になっていたのですが、本家フィル・スペクター作品でもおなじみのハル・ブレインがたたいています。

 こういうリヴァーブの深いサウンドにするのは、彼らのプロデューサーでエンジニアだったロイ・ハリーの発案で、彼は手を叩きながらベストな反響音が出るポイントを探しました。そして見つけ出したのが機材の搬入に使うエレベーターの昇降路で、そこにドラムを置いて録音されました。

 ホーンを聖堂で録音したのも、独特の反響音を狙ったからでした。

 そしてストリングスは、バンドの演奏を聴きながら演奏したヴァージョンと、聴かずに演奏したヴァージョンの二種類を録り、エンディングで重ね合わせているそうです。

 かすかにズレた声や演奏を重ねると、深みのある音になるんですよね。歌を重ねるのはレコーディングの常套手段ですが、ストリングスでそれをやるとは贅沢ですね。

 

 

 さて、この歌は”ライラライ・・”というコーラスがまた印象的ですが(ある年代以上の方でしたらアリスが「チャンピオン」で引用したのを思い出しますよね)、”ライ”は「Lie」(嘘)だと解釈されていたようです。ポール・サイモンくらい歌詞の技能に長けた人になると、細部まで何か仕掛けがあるんじゃないかと人は深読みしてしまうんですね。

 

「あれは言葉が思いつかず、口ずさんだだけなんだ。嘘( Lie)という言葉だと思われてしまったみたいだけど、本当はそういう意味で使ったわけではなかった。

 ソングライティングの失敗例というのは違うかもしれない。なぜなら、あれは多くの人に愛され、十分な意味を持ち寄られたわけで、あの数行以外には曲を動かすだけのパワーや感情があったんだろうから、それでいい。でもね、あの曲のあの部分を歌うたび、(声を潜めて)僕はちょっぴりバツが悪いんだ」

(「インスピレーション」ポール・ゾロ著)

 

それから、この曲には、その後追加された歌詞があります。

冬服のくだりと、最後の開拓地のところの間に入るものです。

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"Now the years are rolling by me
They are rockin’ evenly
I am older than I once was
And younger than I’ll be; that’s not unusual.
No, it isn’t strange
After changes upon changes
We are more or less the same
After changes we are more or less the same…”

 

いまや月日は僕のそばを通り過ぎて 

年月は均等に揺れ動いている

僕も昔にくらべて年をとってしまったけど

未来の自分よりは若い だけどそれはめずらしいことじゃない

いや、不思議なことじゃないんだ

変化の上に変化を重ねても 僕らは多かれ少なかれ同じなんだ

変化した後も 僕らは多かれ少なかれ同じなんだ  (拙訳)


Simon & Garfunkel - The Boxer (from The Concert in Central Park)

 

 いくら変化を繰り返しても結局は同じこと、、、なにか仏教の悟りのような歌詞ですが、ニューヨークに出てきた少年の話から、最後突然ボクサーが現れる、というのがサイモンとしては唐突に思えたのでしょうか。少年は最後はボクサーになったのか、と勘違いされてしまうんじゃないかと。

 そこで、少年が年をとってからの歌詞を入れることで、少年の話はそこで終わり、最後にあらわれるボクサーは、もっと抽象的な存在で、痛めつけられながらも踏みとどまる人間全般を象徴するものだという解釈ができるようになるわけです。

 

 こういうのは、すごく映画的な手法だな、と僕は感心してしまいます。

 ちょっと話が飛びますが、昨年「ゴッド・ファーザー・パート3」も再編集したものを観たら、ぐっと焦点がはっきりしてよくなったことを思い出しました。

 何事もどう構成するかっていうのが、大事なんでしょうね。

 

 

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