まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。(現在は不定期で更新中)古今東西のポップ・ソングを、エピソード、和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などを交えて紹介しています。親しみやすいポップスは今の時代では”ニッチ(NIche)”な存在になってしまったのかもしれませんが、このブログがみなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。追加情報や曲にまつわる思い出などありましたらどんどんコメントしてください!text by 堀克巳(VOZ Record

「ウォーク・オン・バイ(Walk On By)」ディオンヌ・ワーウィック(Dionne Warwick)(1964)

  おはようございます。今日はバート・バカラックの代表曲、ディオンヌ・ワーウィックの「ウォーク・オン・バイ」です

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If you see me walkin' down the street
And I start to cry each time we meet
Walk on by
Walk on by

Make believe that you don't see the tears
Just let me grieve
In private 'cause each time I see you
I break down and cry

Walk on by (Don't stop)
Walk on by (Don't stop)
Walk on by

I just can't get over losin' you
And so if I seem broken and blue
Walk on by
Walk on by

Foolish pride, that's all that I have left
So let me hide
The tears and the sadness you gave me
When you said goodbye

Walk on by (Don't stop)
Walk on by (Don't stop)
Walk on by (Don't stop)
Walk on

Walk on by, walk on by

Foolish pride, that's all that I have left
So let me hide
The tears and the sadness you gave me
When you said goodbye

Walk on by (Don't stop)
Walk on by (Don't stop)

Now you really gotta go, 
so walk on by (Don't, don't stop)
Baby, leave, 
you'll never see the tears I cry (Don't, don't stop)
Now you really gotta go, 
so walk on by (Don't, don't stop)
Baby, leave, 
you'll never see the tears I cry (Don't, don't stop)

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もし私が街を歩いているのを見かけたら
私はあなたに会うたび泣いてしまう
そのまま通り過ぎて
通り過ぎて

私の涙なんて見なかったふりをして
そのまま悲しませて 誰にも知られず
だってあなたを見るたびに
心が壊れて泣いてしまうから

通り過ぎて(立ち止まらないで)
通り過ぎて(立ち止まらないで)
通り過ぎて

あなたを失ったことから立ち直れない
だからもし私が傷ついて沈んでいるように見えても

そのまま通り過ぎて
通り過ぎて

愚かなプライド、それだけが私に残されたもの
だから隠させて
あなたがさよならを言ったときに私に残した
この涙と悲しみを

通り過ぎて(立ち止まらないで)
通り過ぎて(立ち止まらないで)
通り過ぎて(立ち止まらないで)
そのまま歩き続けて

通り過ぎて、通り過ぎて

愚かなプライド、それだけが私に残されたもの
だから隠させて
あなたがさよならを言ったときに私に残した
この涙と悲しみを

通り過ぎて(立ち止まらないで)
通り過ぎて(立ち止まらないで)

もう行って
だからそのまま通り過ぎて(立ち止まらないで)
お願い、行って
私の涙を見ることはないから(立ち止まらないで)
もう行って
だからそのまま通り過ぎて(立ち止まらないで)
お願い、行って
私の涙を見ることはないから(立ち止まらないで)(拙訳)

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 バート・バカラックとハル・デヴィッドというポップス史上屈指のソングライターコンビの曲を最も多く歌っていたのがディオンヌ・ワーウィックでした。そして、彼女が歌ったバカラック&デヴィッド作品の中で、現在でも最も人気があるのがこの「ウォーク・オン・バイ」です。
 ディオンヌはこう語っています。
「この曲は、記憶に残るメロディと歌詞を持っていました。もしこれがヒットするとわかっていたなら、私は今頃、ルビーを片手に(金の)山の上に座っていたでしょうね(笑)。私はバートともハルとも、とても、とても親しい友人でした。私たちはそれぞれが持っている専門性を持ち寄り、お互いを信頼し合っていました。ハル・デヴィッドの歌詞は、私がこれまで歌った中で最も素晴らしいものでした。そして、バートは複雑でありながらも心に残るメロディを作り上げました。そして、私はそれらをリスナーの耳に届けるための「媒介者」でした」 GRAMMY AWARDS/ Dec 3, 2014 )
 
 あくまでも僕の個人的な意見ですが、バカラックのメロディについては他にもっと素晴らしい曲があると思いますし、ハルの歌詞についても同様で、ひょっとしたらディオンヌの歌唱力が最も表れているのもこの曲ではないかもしれません。
 しかし、あらためて聴き直してみると、三者の良さが最高のバランスで溶け合っているのはこの「ウォーク・オン・バイ」かもしれないと思えます。
 
 失恋の苦しさを、余計な装飾なしに見事に描き出した歌詞とメロディが素晴らしいのはもちろんですが、主人公の心情に寄り添うように展開してゆくバカラックのアレンジも素晴らしいです。そして、都会的な品の良さのあるディオンヌの歌によって、切なさがベタにならず、余韻のように残ってゆく。聴くごとにじわじわと味わいが深くなる曲と言えるような気がします。
 
 決して派手な曲ではなかったからでしょうか、当初はシングルのB面に収録されていたそうです。
A面は「Any Old Time Of Day」という曲でした。

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 しかし、ニューヨークのラジオのDJ”マレー・ザ・K”が自分の番組でリスナーにどちらの曲が好きか投票させたそうなんです。すると「Walk On By」が勝ったので、彼はレコードを裏返して「Walk On By」をオンエアするようになり、それをきっかけに火がつき、レコード会社も「Walk On By」をA面にしたシングルを発売したそうです。

 ちなみに、この”マレー・ザ・K”は、”5人目のビートルズ”を自称していた人物として知られています。”5人目のビートルズ”って呼ばれた人は、10人以上該当者がいるんですけどね、、。彼の場合はアメリカでは知られていなかったビートルズをいち早く目をつけ、番組でがんがんオンエアして、アメリカでのブレイクのきっかけを作ったんです。そして、ビートルズアメリカに初めてやってきたときは、彼らが宿泊するプラザホテルのスイートルームから番組を放送したこともあったそうです。

 ちなみにビートルズアメリカ初上陸が1964年の2月、そしてアメリカのヒットチャートで彼らの曲がトップ5を独占したのが4月、「ウォーク・オン・バイ」の発売も4月でしたから、ビートルズアメリカでブレイクさせた男として”マレー・ザ・K”がノリに乗っていたタイミングだったんですね。

 ビートルズアメリカで火をつけた男は、同じ時期に「ウォーク・オン・バイ」にも火をつけていたわけです。

 

 この曲はたくさんのカバーが作られていて、その中にはけっこう個性が強いものが多いんですよね。

 代表的なのはR&Bシンガー、アイザック・ヘイズの1969年にリリースしたカバーです。アルバム「Hot Buttered Soul」の収録されていて、なんと12分越えの大作です。4分台に編集されたシングル・エディットもリリースされ、全米30位まで上がっています。その後HIPHOPのサンプリングネタとしても人気になり、 The Notorious B.I.G.の「Warning」や2Pacの「Me Against The World」、近いところではビヨンセの「6inch」などで使われています。

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   サンプリングされているので当然なのですが、2pacビヨンセの曲の共作者にバカラック&デヴィッドの名前が入っているのを見るとちょっと不思議な気持ちになります。

 それから、ロック雑誌の最高峰「ローリングストーン」が2021年に史上最高の500曲("Top 500 Songs of All Time")を選んでいて、ディオンヌの「ウォーク・オン・バイ」が51位に入っているのですが、アイザック・ヘイズのヴァージョンも312位に入っているんです。同一曲が入るのは大変レアですが、アイザックの単なるカバーを超えたオリジナリティが高く評価されたのでしょう。

 1978年にはイギリスのパンク・シーンの中心バンドの一つだったストラングラーズもカバーし全英21位のヒットになっています。

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 個人的には1980年代はニューヨーク産のR&Bを愛聴していたので、1982年のD Trainのカバーはちょっと胸が躍ります。

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 でもやっぱり、オリジナルに忠実なカバーをじっくり聴きたいという方には、ダイアナ・クラール、メリサ・マンチェスター、ガブリエル、ルーマー(Rumer)といった女性シンガー達のカバーは”間違いない”仕上がりです。

 

 最後はディオンヌのオリジナルをサンプリングして、一昨年(2023年)の夏になんと全米1位になった作品がありますのでそれをご紹介します。オリジナルが全米最高6位でしたから、驚きです。バカラックもデヴィッドも亡くなってしまっていましたが、ディオンヌはこの曲のことをお孫さんから教えてもらったそうです。

 歌っているのは「Say So」が日本でも大ヒットしたドージャ・キャット。曲名は 「Paint the Town Red」。ただのサンプリングではなく、曲を通してずっとディオンヌの歌うウォーク・オン・バイ〜🎵が使われています

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