まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「マイケルへのメッセージ(Message to Michael)」ディオンヌ・ワーウィック(1966)

 おはようございます。

 今日はディオンヌ・ワーウィックの「マイケルへのメッセージ」です。

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Spread your wings for New Orleans
Kentucky bluebird, fly away
And take a message to Michael
Message to Michael
He sings each night in some cafe
In his search to find wealth and fame
I hear Michael has gone and changed his name

It's a year since he wasn't here
Kentucky blue bird, fly away
And take a message to Michael
Message to Michael
Tell him I miss him more each day
As his train pulled out down the track
Michael promised he'd soon be coming back

Oh tell him how my heart just breaks in two
Since he journeyed far
And even though his dream of fame
Fell through
To me he will always be a star

Spread your wings for New Orleans
Kentucky bluebird, fly away
And take a message to Michael
Message to Michael
Ask him to start for home today
When you find him please let him know
Rich or poor
I will always love him so

Fly away, Kentucky bluebird
Fly away, Kentucky bluebird
Fly away
Fly away ...

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ニューオリンズに向かって翼を広げて
ケンタッキーの青い鳥よ、飛んでいって
そしてマイケルにメッセージを伝えて
マイケルにメッセージを
彼は毎晩どこかのカフェで歌っているわ
富と名声を求めて
マイケルは行ってしまって名前も変えてらしい

彼がいなくなって1年が経った
ケンタッキーの青い鳥よ、飛んでいって
そしてマイケルにメッセージを伝えて
マイケルにメッセージを
日に日にあなたが恋しくなると伝えて
彼を乗せた列車が動き出したときに
マイケルはすぐに戻ってくると約束したわ

私の心は2つに割れていると伝えて
彼が遠くに旅立ってから
たとえ 彼の名声を求める夢が
破れたとしても
私にとっては、彼はずっとスターなの

ニューオリンズに向かって翼を広げて
ケンタッキーの青い鳥よ、飛んでいって
そしてマイケルにメッセージを伝えて
マイケルにメッセージを
今日は家に帰るようにお願いして
彼を見つけたら教伝えて
お金持ちになっても、貧乏でも
私はいつも愛していると

飛んでいけ ケンタッキーの青い鳥
飛んでいけ ケンタッキーの青い鳥
飛んでいけ、、、

 (拙訳)

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 バカラックの「マイケルへのメッセージ」って、どんなメッセージなんだっけ?とふいに気になって調べてみました。

 歌手を目指して故郷を出た恋人に、今も愛する気持ちを”青い鳥”に託して伝えてほしいという歌だったんですね。

 

 しかも、元々は「マーサへのメッセージ(Message to Martha)」という、男性が女性に向けて歌ったものだったようです。

 最初に歌ったのはウィキペディアによるとR&Bシンガーの、ジェリー・バトラーで、同じオケを使って、大女優マレーネ・デートリッヒがドイツ語版を歌ったとありますが、バカラックの自伝で本人はデートリッヒが最初だと語っています。

 

 僕が曲のオリジナルを調べるときに使う「Second Hand Songs」というサイトを見ると、バトラーとデートリッヒの両方に”First Release"とクレジットしてありました。

 

 オケを聴き比べると、全く同じではありませんでしたが、基本的な構成はかなり一緒なので、どちらもバカラック本人がアレンジを指揮したものだと思われます。

 ということで、両方聴いてみましょう。

 Jerry Butler 「Message To Martha」

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マレーネ・デートリッヒの「Kleine treue nachtigall」。英語で”Small True Nightingale”、小さく忠実なナイチンゲール、という意味のようです。小鳥に愛のメッセージを託すシチュエーションは一緒ですが、相手が歌手という設定はなく、相手の名前も出てきません。ちなみに、バカラックは、駆け出しの頃デートリッヒのバックでピアノ、指揮、アレンジをやることで、腕を磨いていったという経歴があります。

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 その後、1964年にルー・ジョンソンというシンガーが「Kentucky Bluebird」というタイトルでシングル・リリースした他、イギリスのアダム・フェイスが「Message to Martha(Kentucky Bluebird)」というタイトルでリリースし、1965年に全英12位まで上がるヒットになっています。

 

 そして、最初のレコーディングから4年後にリリースされたのが、このディオンヌ・ワーウィックのヴァージョンでした。

 

 「4年後、ディオンヌが<マーサへのメッセージ>をうたいたいと言いだし、けれどももっぱら男向けの曲だと思っていたハル(筆者註:作詞家のハル・デヴィッド)と私は、なんとか思い止まらせようとした。その途中でハルは、彼女に、「マーサ」の代わりになる男性名は「マイケル」ぐらいしかないと告げた。だがハルはその名前はあまり気に入っていないと言い添えていたにも関わらず、彼女はこの曲を、<マイケルへのメッセージ(Message to Michael)>としてレコーディングしてしまう。彼女のヴァージョンはポップとR&Bの両チャートで、トップ10ヒットとなった」

 (「バート・バカラック自伝 ザ・ルック・オブ・ラヴ」)

 

 ディオンヌが強行突破した曲だったんですね。バカラックもデイヴィッドも女性が歌うことには反対で、デイヴィッドは”マイケル”という名前も気に入ってなかった、というのは驚きです。しかし、大ヒット(全米8位、R&B5位)したことで”結果オーライ”になったのでしょうね。

 

 最後はこの曲のカバーを。男女どちらが歌うとか関係のない、インスト・ヴァージョンで(笑。アール・クルー、1980年のアルバム「Dream Come True」から。

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