まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「Bells of St. Augustine」バート・バカラック&ダニエル・タシアン(2020)

 おはようございます。

 今年5月に92歳になったバート・バカラックの、なんと15年ぶりのレコーディング作品がリリースされましたので、あわてて(!)ご紹介します。

www.youtube.com

 

 ”もし君がセントオーガスティンに行くことがあったら

  そこには時を知らせる鐘が鳴る礼拝堂があって

  鉄門のそばに庭園の塀には 野花で蜂たちの飛ぶ音がするだろう

 

     そして、ローマ中の灯りを集めたよりも眩しく輝く少女を見たなら

  こう言って欲しい 君に比べられるものなんてない

  そして 君を見つけるためにあらゆる場所を捜したと  あらゆる場所を

 

  遠い夏の夢の中で  彼女は隣を歩き 彼女が書いた言葉で

  僕の心は突然跳び上がったんだ 僕は話そうとしたけれど

  何も言うことができなかった

 

     そして、ローマ中の灯りを集めたよりも眩しく輝く少女を見たなら

  こう言って欲しい 君に比べられるものなんてない

  そして 君を見つけるためにあらゆる場所を捜したと  あらゆる場所を

 

    彼女の後ろで陽が沈む 時を知らせる鐘が鳴る

 

  

  そして、ローマ中の灯りを集めたよりも眩しく輝く少女を見たなら

  こう言って欲しい 君に比べられるものなんてない

  そして 君を見つけるためにあらゆる場所を捜したと  あらゆる場所を”

                           (拙訳)

 

 

  2020年にこういう曲が聴けるだけでもとても幸せな気持ちになれます。

 

 セントオーガスティンはフロリダ州の北東にある都市で、1565年にスペイン人によって建設されたアメリカで最も古いヨーロッパ人の入植地だそうです。アメリカ最古の都市なんですね。

 アメリカでのカトリックの発祥の地となる古い教会もあるようです。動画サイトで「Bells of St.Augustine」と検索すると教会の鐘を鳴らしている動画をいくつか見ることができます。

  

 

 バカラックとコンビを組んで曲を作り歌っているのはダニエル・タシアン。ナッシュビルシンガー・ソングライターで”The Silver Seas"というバンドもやっています。

 彼がプロデュースしたケイシー・マスグレイヴスの「Golden Hour」が2019年のグラミー賞で”最優秀アルバム賞”をとるほどの成功をおさめたことから一気に脚光を浴びます。


Kacey Musgraves - Golden Hour (Audio)

 バカラックもこのアルバムを大変気に入ったようで”ここ数年で最高のアルバムの一つ””美しい曲、美しいプロデュース”だと語っています。

 

 二人が曲作りをスタートさせたのは、ダニエルがグラミーを受賞した次の日の夜だったそうで、場所はバカラックの家でした。

 バカラックはこう言っています。

「彼と仕事をするのは、全く快適なものだったよ。他にこれと同じような経験は、ただひとつ、エルヴィス・コステロと「ペンテッド・フロム・メロディ」を作ったときだ。

誰かが歌詞を付け足してくれたり、コードを付け足してくれたり。僕がコードを見つけられないときは、ダニエルが見つけてくれたんだ」


God Give Me Strength

 

 この「Bells of St.Augustine」については、バカラックがぼそぼそ歌っているボイスメモとコードがいくつか出来ていたそうで、それを聴いたダニエルはたちまち心を打たれたと語っています。

 サビの”And If You See a Girl〜”のところメロディは、いままで自分が歌った中で最も美しいメロディーだとも言っています。

 

 あくまでもこれは個人的な意見ですが、バカラックの曲を歌うシンガーは、声が良すぎてもダメ、歌がうますぎてもダメ、その人のパーソナリティのようなものがさりげなく滲んでくるような、ちょっとしたムードがある人がいいな、と思っていて、ダニエル・タシアンはかなりいいなあと思いました。

 

 バカラック邸で曲を作った後、コロナ・ウィルスの流行のため、二人はリモートで共作を続けたそうです。

 中には”21st Century Man”という、20世紀の方が生きやすかったと感じている男の苦境を歌った歌とのこと。

 二人の作品は「Blue Umbrella」というタイトルの計5曲入りのEPとして、7月31日に発売されるそうです。

 

 

 

Bells of St. Augustine

Bells of St. Augustine

  • 発売日: 2020/06/12
  • メディア: MP3 ダウンロード