まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「Blue Umbrella」バート・バカラック&ダニエル・タシアン(2020)

 おはようございます。

 このブログで度々紹介してきた、バート・バカラックとダニエル・タシアンのコラボ作品がついにリリースされましたので、今日はそのタイトル曲を。


Burt Bacharach and Daniel Tashian - "Blue Umbrella" (Official Audio)

 

  ”寒い夜だった 星が、まさにきれいに見えた

   君も好きだったろうな

 

  パーティの明かりがついて バンドが静かな曲を演っている

        君も好きだったろうな

 

  それが僕にできる精一杯のこと

  君のことを考えないようにして ただ思い出すこと

 

  今夜君はどこにいるのだろう

  そして、僕がいなくてさみしく思っているのだろうか

  今もあの青い傘をさしているのだろうか

  同じコートを今も着ているのだろうか

  君の人生を生き 君自身の道を歩きながら

  僕のまごころは、いつも君と共にあるんだ

 

  49丁目に並んだバー ネオンの光る雰囲気

  君も好きだったろうなあ

 

  この街に 雨が降った時

  走り過ぎてゆく ミッドタウン・トレイン

  君も好きだったろうなあ

 

  今夜君はどこにいるのだろう

  そして、僕がいなくてさみしく思っているのだろうか

  今もあの青い傘をさしているのだろうか

  同じコートを今も着ているのだろうか

  君の人生を生き 君自身の道を歩みながら

  僕のまごころは、いつだって君と共ににあるんだ

 

        君のクールな表情が今でも時々浮かぶ

   ヘプバーンのような瞳 その笑い方

 

  今もあの青い傘をさしているのだろうか

  同じコートを今も着ているのだろうか

  君の人生を生き 君自身の道を歩きながら

  僕のまごころは、いつだって君と共にあるのだから”  (拙訳)

 

 

 街をひとり歩きながら、別れた彼女が好きそうな情景につい目がいってしまう主人公。訳しながら、最後の方に”YOUR HEPBURN EYES”、オードリー・ヘプバーンのような君の瞳、というフレーズにたどりついたときに、フラッシュバックしてきたのは「ティファニーで朝食を」でした。

 

 「Blue Umbrella」の女性は「ティファニーで朝食を」のホリー・ゴライトリーほどエクセントリックではなさそうですが、自分の道を歩むために彼から、彼の住む街から出て行ったという設定は似ています(映画の「ティファニーで朝食を」のほうは、二人が結ばれるハッピーエンディングになっていますが)。

 

 考えてみるとバカラックはヘプバーンの映画音楽は手がけてはいないんですよね。一本くらいあっても良さそうなんですが。

 二人の年齢はバカラックが一つ上、「ティファニーで朝食を」などヘプバーンの音楽を複数やっているヘンリー・マンシーニバカラックの4歳上でしかありません。

 ヘップバーンの全盛期は1950年代から60年代前半、バカラックが最初に映画音楽を始めたのが1965年ですから、少しずれているというのはあると思います。

 しかし1966年の「おしゃれ泥棒」あたりは、もしバカラックが音楽をやったら印象もまた変わって面白いんじゃないかと勝手に妄想しています。

 ちなみに「おしゃれ泥棒」の音楽をやったジョン・ウィリアムスはバカラックの4歳下、バカラックが映画「何かいいことないか子猫チャン」の音楽をやらなかったら、彼がやることになっていたらしいです。

 

 それはともかく、この曲の歌詞を書いている時に、ダニエル・タシアンの脳裏にはへヘプバーンのような女性が浮かんでいたわけで、実現することのなかった”バカラックが音楽をつけたヘプバーンの映画”をイメージしていたのかもしれません。

 

 バカラックのメロディーに引っ張られてこういう歌詞になったのかと思ったのですが、この「BLUE UMBRELLA」は詞先のようです。

 ダニエルが”バカラック風の歌詞”を書き、それにバカラックが答えている、二人はとても息が合っているんですね。

 

 このEPからもう2曲アップされていますので、それも紹介します。


Burt Bacharach and Daniel Tashian - "Whistling in the Dark" (Official Audio)

 ”暗闇の中で 口笛を吹いて ひとりぼっちで通りをゆく

   ついてくるのは影だけ

     雨に打たれて歩いている 僕が踏みしめる道 足音は冷たくむなしい

 

 心の中の何かが 僕がいつ目を閉じていいのかをわかっている

 遠い灯り 大きくなってゆく あの遠い灯り 

    きっと大丈夫さ この道は君に続いている

 

 公園を通り抜けている 君を思い浮かべながら 

 もうすぐ一緒になれる   残された時間

 闇は僕を追いかけてきて 僕はこの天気を打ち負かそうとしている”(拙訳)”

 


Burt Bacharach and Daniel Tashian - "We Go Way Back" (Official Audio)

 

 

 ” オレたちは古い友達さ おまえのほうから見たストーリーもあるし

   オレのほうだってある

   だけど、誰もオレたちのことなんてわかっちゃいないし

    二人が相棒だなんて知らないさ でもまぎれもない事実なんだよ

    だって昔からずっと知っているんだから

 

   おまえは相変わらずオレを笑わせてくれる

      オレがすごく若い頃から知ってるんだもんな おまえも若かった

      だけど、誰もオレたちのことなんてわかっちゃいないし

    二人が相棒だなんて知らないさ でもまぎれもない事実なんだよ

    だって昔からずっと知っているんだから

     

       いつだっておまえの味方さ 頼ってくれていいんだよ

  いい時だって悪い時だって もしオレにできることがあるなら

  ただ言ってくれればいいだけさ ずっと友達だったんだから

 

  おまえのほうから見たストーリーもあるし

     オレのほうだってある

     だけど、誰もオレたちのことなんてわかっちゃいないし

     二人が相棒だなんて知らないさ でもまぎれもない事実なんだよ

     だって昔からずっと知っているんだから”     (拙訳)

 

  

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