まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ロウダウン(Lowdown)」ボズ・スキャッグス(1976)

 おはようございます。

今日はボズ・スキャッグスの「ロウダウン」です。


Boz Scaggs - Lowdown (Official Audio)

Baby's into runnin' around, hangin' with the crowd
Puttin' your business in the street, talkin' out loud
Sayin' you bought her this and that
And how much you done spent
I swear she must believe it's all heaven sent


Hey, boy
You better bring the chick around
To the sad, sad truth
The dirty lowdown


(I wonder, wonder, wonder, wonder who)
Taught her how to talk like that
(I wonder, wonder, wonder, wonder who)
Gave her that big idea


Nothin' you can't handle, nothin' you ain't got
Put your money on the table and drive it off the lot
Turn on that old lovelight and turn a "Maybe" to a "Yes"
Same old schoolboy game got you into this mess


Hey son
Better get on back to town
Face the sad old truth
The dirty lowdown

 

(I wonder, wonder, wonder, wonder who)
Put those ideas in your head
(I wonder, wonder, wonder, wonder who)

Come on back down, little son
Dig the low, low, low, low, lowdown!


You ain't got to be so bad, got to be so cold
This dog eat dog existence sure is getting old
Got to have a jones for this, jones for that
This runnin' with the Joneses, boy, just ain't where it's at, no, no


You gonna come back around
To the sad, sad truth
The dirty lowdown


(I wonder, wonder, wonder, wonder who)
Got you thinking like that, boy
(I wonder, wonder, wonder, wonder who)

 

I wonder, wonder, wonder, wonder who
Said I wonder, wonder, wonder, I wonder who
Oh, look out for that lowdown
(I wonder, wonder, wonder, wonder who)
That dirty, dirty, dirty, dirty lowdown
I wonder, wonder, wonder, wonder who
I wonder, wonder, wonder, wonder who
Got you thinkin' like that
Got you thinkin' just like that
(I wonder, wonder, wonder, wonder who)
Lookin' that girl in the face is so sad
I'm ashamed of you
I wonder, wonder, wonder, wonder who

***************************************************

あの娘は、ヤツらとつるんでほっつき回るのに夢中さ
大声でお前のことを言いふらしている
彼女にあれやこれやと買ってくれるとか
お前がいくら使ったかとか
彼女は全部天の恵みだと信じているに違いないさ


ヘイ、ボーイ
"あの娘 "を気づかせるんだ
悲しい、悲しい真実に
汚れた真相に

 

(いったい誰なんだろう)
彼女にそんな話し方を教えたのは
(いったい誰なんだろう)
彼女に大それた考えを与えたのは

 

思い通りにならないものはない
手に入らないものもない
テーブルの上に金を積んでそのまま買っていく
あの愛のこもった瞳で見つめりゃ "Maybe "も "Yes "に変わる
お馴染みのガキの遊びがお前をこんなトラブルに巻き込む


なあ、おまえ
街に戻った方がいいぜ
悲しい真実と向き合うんだ
うす汚れた現実に

 

(いったい誰なんだろう)
おまえの頭にそんなことを吹き込んだのは
(いったい誰なんだろう)

 

さあ、帰るんだ、坊や
理解するんだ このひどい、ひどい現実を

 

そんなに悪ぶらなくても、冷淡になならなくてもいいのさ
こんな食うか食われるかのやり方は時代遅れさ
これが欲しい、あれが欲しいなんて思わなくていい
こんな風に欲望に追われて生きるのは、一番大事なことじゃないのさ

 

おまえは戻ってきてしまうのさ
悲しい、悲しい真実に
うす汚れた現実に

 

(いったい誰なんだろう)
おまえにそんな考え方をさせたのは
(いったい誰なんだろう)

 

いったい誰なんだ いったい誰なんだ
気づくんだ うす汚れた真実に
いったい誰なんだ 汚れた、汚れた現実に
いったい誰なんだ いったい誰なんだ
お前にあんな風に考えさせたヤツは
あんなことを考えさせたやつは
いったい誰なんだ いったい誰なんだ
あの娘の顔を見るのはとても悲しい
それに気づかないおまえが恥ずかしい
いったい誰なんだ、、          (拙訳)

 

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「ロウダウン」楽譜はこちら

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「Lowdown」とは”真相や内幕”を指す言葉のようで、1976年のビルボードで全米3位、当時ビルボードと競合していたチャート誌”キャッシュボックス”では全米1位を獲得している、”画期的な”大ヒット曲です。

 何が画期的かというと、普通ポップ・ミュージックはまず詞曲ありきで、それをいかにアレンジするかというのが普通ですが、この曲の主役は詞曲よりも”グルーヴ”だというところです。

 歌はグルーヴにいかに巧みに乗るかを最優先しているかのように聴こえます。ラップでいう”フロウ”の感覚にとても似ていますよね。普通の人はなかなかこの曲を鼻歌では歌うのは難しいでしょう。コーラスも他の楽器もすべてが”グルーヴ中心”になっています。

 これは完全にR&Bのスタイルです。

 R&Bスタイルではあるのですが、それを、とても都会的に洗練させ軽やかにやっているところが当時すごく新鮮だったのだと思います。黒人のR&Bとはまた違った個性がよく出ているんですね。

 

 この曲はボズをはじめとして、白人ミュージシャンたちで作られていますが、やはりみなR&Bに深い影響を受けた人たちでした。

 しかし、こういうメロディーがあってないような単調な曲が売れるとは誰も思わなかったようで、この曲の入ったアルバム「シルク・ディグリーズ」からのシングルは「It's Over」という曲でした。

 


It's Over - Boz Scaggs

 まさに、キャッチーですね。このチョイスは仕方ないところではあったでしょうが、この曲の売れ行きはパッとしませんでした。

 しかし、クリーヴランドR&B専門のラジオ局のDJが「ロウダウン」を気に入ってかけ始めたところ反響がすごくあったということで、レコード会社は「ロウダウン」を全米のR&Bのラジオ局にプロモーションしたところ一気に盛り上がったそうです。

(最終的にビルボードの”ソウル”・チャートでも5位まであがりました)

 

 

 曲調と比べると、ハードでリアルな歌詞です。こういう都会の現実、ダークサイドを歌う内容からも”ラップ感”を僕は感じてしまいますが、、。

 

 ボズ・スキャッグス、この時すでに32歳、これが7枚目のアルバムでした。

ブルースやR&Bに深く傾倒していた作品を作ってきていて、いわば”通好み”で商業的な成功をおさめることはできていませんでした。

 

 彼はもともとサンフランシスコが拠点でしたが、バンド・メンバーで彼がプロデュースもすることになったギタリスト、レス・デューデックがLAで録音することになり、ミュージシャンを探したところ、ドラムスのジェフ・ポーカロをきっかけにして、デヴィッド・ペイチをはじめとする、のちのTOTO周辺のメンバーと知り合うことになります。

 

 そして、自身のアルバムもLAで作ることにし、楽曲制作のパートナーとしてジェフ・ポーカロからあらためて推薦されたのがデヴィッド・ぺイチでした。

 そして、レコーディングにはベースのデヴィッド・ハンゲイト、ドラムスのジェフ・ポーカロという、そののちに「TOTO」を結成するメンバーが集まります。

 

 当時すでにこの3人でデモ作りをしていたようで、その中でTOTOの初期のレパートリーになった「Tale of A Man」という曲のデモをボズが気に入って、その一部のコード進行をもとにボズが歌メロを作っていき、デヴィッドがマーヴィン・ゲイを参考にコーラスを考えたのがこの「ロウダウン」ということです。


TOTO - tale of a man ( XX 1977-1997)#02

 すでにビートとコードがあって、そこにメロをのせるというのは、まさに今のヒップホップ、ダンス・ミュージックの作り方です。

 「ロウダウン」は昔からのポップスの流れじゃなく、今のヒップホップ、R&Bの視点でさかのぼってとらえたほうが、新たな魅力、価値観が再認識できるように僕は思います。

 

 それから、調べてみたら、デヴィッド・ペイチジェフ・ポーカロも当時まだ22歳でした。ボズと比べたら10歳も下です。

 この若い才能に賭けたところに、彼の大きな勝因があったのかもしれんません。

 演奏はクールで淡々としているようでいて、不思議な躍動感を感じます。

 若くて勢いのあるミュージシャンにしか生み出せないものがあって、それがこの曲の演奏に”吉として”出たんじゃないかなと僕は思うのです。

 ベテランの手馴れた演奏だともう少しレイドバックした仕上がりになっていた可能性もあったんじゃないかと。

 例えば、同じLAでも彼らよりベテランのレッキングクルーのメンバーだったり、この頃バリバリのNYのメンツ(スティーヴ・ガッド、ゴードン・エドワーズ、、)だったりしたら、また全然違うノリになっていたのは間違いないでしょう。

 

 ともかく、この「ロウダウン」は録音された”演奏そのもの”が何十年たってもまったく色褪せない、というかなり珍しい曲の一つだと思います。

 

 最後はこのヒット曲の大ヒット後、次のアルバム「ダウン・トゥ・ゼン・レフト」が完成したばかりのタイミングで作られたこの曲のMVがありますのでご覧ください。

www.youtube.com

 

 

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