まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「007 死ぬのは奴らだ(Live and Let Die)」ウイングス(1973)

 おはようございます。

 今日はウィングスの「007 死ぬのは奴らだLive and Let Dieです。

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When you were young

And your heart was an open book

You used to say live and let live

You know you did  You know you did You know you did

But if this ever changin' world

In which we live in

Makes you give in and cry

Say live and let die (live and let die)

Live and let die (live and let die)

 

What does it matter to ya

When you got a job to do you got to do it well

You got to give the other fella hell

 

You used to say live and let live

You know you did  You know you did  You know you did

But if this ever changin' world

In which we live in

Makes you give in and cry

Say live and let die (live and let die)

Live and let die (live and let die)

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君がまだ若く 開かれた本みたいに 心に隠しごとなどなかった頃

自分も人も好きに生きればいい、と君は言っていた

そうだったね、そうだったね

だけど、僕たちが生きている この変わり続ける世界が

君を屈服させ、泣かせてしまうなら

自分は生きる 死ぬのは奴らだ と言うんだ

自分は生きる 死ぬのは奴らだ

 

何が問題なんだい?

やらなきゃいけないことがあるときは

ちゃんとやらなきゃいけないんだ

他のヤツは痛い目に合わせなきゃ

 

自分も人も好きに生きればいい、と君は言っていた

そうだったね、そうだったね

だけど、僕たちが生きている この変わり続ける世界が

君を屈服させ、泣かせてしまうなら

自分は生きる 死ぬのは奴らだ と言うんだ

自分は生きる 死ぬのは奴らだ

 

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「007死ぬのは奴らだ」の楽譜はこちら

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  この曲は映画「007」シリーズの第8作目「007死ぬのは奴らだ」(1973年 ジェームズ・ボンド役はロジャー・ムーア)のためにポール・マッカートニーが書き下ろした曲です。

 

 ポールはこう語っています。

「ソングライターとして、ジェームズ・ボンドの映画音楽を作曲することは、いつも僕の野望のひとつだった。それは簡単なことではないと分かっていたけど、僕には魅力的なことだったんだ。アップル(レコード)で働いていたロン・キャスが映画会社の関係者と知り合いだったので、『Live and Let Die』のテーマを書くことに興味はないかときいてきたんだ。僕はイエスと答えると、イアン・フレミングの小説が送られてきて、それを読んで気に入ったので、次の日には曲を作れるかどうか座って考えたんだ。そして、かなり直球なアイディアが浮かんだんだ、" LIVE AND LET DIE とLIVE AND LET LIVEというね。それから、爆発を曲中に取り入れなければならないこともわかったんだ。ジョージ・マーティンがセッションをプロデュースして、中間部のアレンジを書いて、リンダがレゲエの部分を書いたんだ。オーケストラと一緒に録音して、それをジョージがカリブ海のどこかで撮影しているところに持って行った。プロデューサーたちはそれを聞いて言ったんだ『これは素晴らしいデモだ、で、本番のレコードは誰が作るんだ?』ジョージは、これが本番のレコードだと言わなければならなかったんだよ。彼らは、私が誰かに歌わせるために書いたんだと思っていたんだよ」

   (Wingspan: Paul McCartney's Band on the Run)

 

 

 ”Songfacts”というサイトでは、ウイングスのドラマー、デニー・シーウェルの発言が載っています。

「僕たちはある日彼の家に集まったんだ、彼は前の晩にその本を読んだばかりだった。そして彼はピアノのところに座ると言ったんだ「ジェームズ・ボンド、、、ジェームズ・ボンド、、、ダ、ダ、ダン!」そして、ピアノであれこれやり始めたんだ。10分以内に、曲は出来上がったんだ。すごかったよ、本当に。ただ、彼がそこにいて曲を書くのを見ただけなんだけど、本当に特別なことだった。一生おぼえているよ」

 

 曲は本当にすぐに出来上がったみたいですね。

 

 ポールが語っているように彼の頭を悩ませたのは、「LIVE AND LET DIE」というタイトルからどういう歌詞に広げてゆくかということでした。

 ちなみに「LIVE AND LET DIE」は”LIVE AND LET LIVE”という英語圏ではよく知られていることわざを、わざともじったものでした。

 ”LIVE AND LET LIVE”は「自分も好きなように生きて、他の人も同じように好きなように生きるのを認める」という意味のようです。

  

  そこでポールは、昔は「LIVE AND LET LIVE」と言っていたけど、今は「LIVE AND LET DIE」と言っているという、わかりやすい切り口にしたわけです。

 

 ポールの音源を聴いて、誰に歌わせるのか?と映画プロデューサーが聞いてきたというエピソードも面白いですね。これは、プロデューサーのハリー・サルツマンがウイングスじゃなく、シャーリー・バッシーかテルマ・ヒューストンに歌わせることに興味を持っていたからだ、という説があります。

 

 それでポールは自分のヴァージョンを映画のオープニングに使うことを条件にして、

劇中では別のシンガーが歌うことを許可したようです。歌っているのはB.J.アルナウという黒人女性シンガーでした。

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 それにしても、”LIVE AND LET DIE”=「自分は生きて、他は死なせろ」というフレーズは、今のご時世ではかなり不適切かもなあと思いました。

 そんなことを考えていたら、ネットでこの曲にまつわる少し前のニュースが見つかりました。

 そのとき話題になったのが、1991年にガンズ・アンド・ローゼズがカバーしたヴァージョンです。

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 2020年5月14日、今からちょうど1年前の「ローリング・ストーン」誌にこんな記事が載っていたんです。当時、僕はこの記事には気づきませんでした(英語の記事なんて滅多に読まないですしw、、)。

 

トランプ大統領がマスクを着用せずに米西部アリゾナ州の医療用マスク製造工場を視察した際、従業員は抗議の意を込めてスピーカーでガンズ・アンド・ローゼズ版「Live and Let Die/死ぬのは奴らだ」を大音量で流した。同工場は、医療現場で使われる高性能マスク”N95“を連邦政府のために製造しており、施設内にはマスク着用を義務付ける標識がはっきりと掲げられていた。その出来事を受け、ガンズは新アイテムの誕生を発表した。

ガンズ・アンド・ローゼズは、タイムリーにも「Live N’ Let Die With COVID 45(新型コロナでくたばるのはお前だ)」と書かれたTシャツを発表。そのメッセージは、第45代米大統領によるマスク未着用の工場視察を真っ向から非難しているようだ。新作Tシャツはバンドの公式オンラインストアで購入できる。収益はすべてザ・レコーディング・アカデミーが経済面・財政面で苦しむ音楽業界関係者支援のために設立したミュージケアーズ基金に寄付される」

 

 同じ曲でもアングルをかえれば、違った意味が生まれてくるものなんですね。

 とにかく、マスク工場の従業員の方たちの怒りがよく伝わってくるのは間違いありません。

 

”だけど、僕たちが生きている この変わり続ける世界が

君を屈服させ、泣かせてしまうなら

自分は生きる そして 死ぬのは奴らだ と言うんだ”

 

 なんだか、当時よりも今の時代の方が妙に”リアルに響いてしまう歌詞”なのかもしれません。

 

 

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