まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「リッチ・ガール(Rich Girl)」ダリル・ホール&ジョン・オーツ(1976)

 おはようございます。

 今日はホール&オーツの「リッチ・ガール」です。

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You're a rich girl, and you've gone too far
Cause you know it don't matter anyway
You can rely on the old man's money
You can rely on the old man's money
It's a bitch girl, but it's gone too far
Cause you know it don't matter anyway
Say money, money won't get you too far, get you too far

And don't you know, don't you know
That it's wrong to take what he's giving you
So far gone on your own
But you can get along if you try to be strong

But you'll never be strong cause

You're a rich girl (rich girl), and you've gone too far
Cause you know it don't matter anyway
You can rely on the old man's money
You can rely on the old man's money
It's a bitch girl  and it's gone too far
Cause you know it don't matter anyway
Say money, money won't get you too far, get you too far

High and dry, out of the rain
It's so easy to hurt others when you can't feel pain
And don't you know that a love can't grow
Cause there's too much to give
Cause you'd rather live for the thrill of it all

You're a rich girl , and you've gone too far
Cause you know it don't matter anyway 

 

You can rely on the old man's money
You can rely on the old man's money
It's a bitch girl (rich girl), and it's gone too far
Cause you know it don't matter anyway 
Say money, but it won't get you too far
Say money, but it won't get you too far
Say money, but it won't get you too far, get you too far

And you say you can rely on the old man's money
You can rely on the old man's money
You're a rich girl, a rich girl
Oh, you're a rich, bitch girl、、、

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君はリッチ・ガール 手遅れさ

だって、君は大したことじゃないって思ってるからね

君はオヤジの金にたよることができる

オヤジの金にたよることができるんだ

ひどい娘さ だけどやりすぎだよ

だって、君は大したことじゃないと思っているから

お金っていったって、君をどこまでも連れて行ってやしないよ

 

ねえ、わからないのかい

彼が与えてくれるものをもらうのは間違っているんだ

自分からハマってしまったんだ

だけど、強くなろうとがんばればやっていけるさ

でも、強くはならないんだろうね、だって、

 

君はリッチ・ガール 手遅れさ

だって、君は大したことじゃないって思ってるからね

君はオヤジの金にたよることができる

オヤジの金にたよることができるんだ

ひどい娘さ だけどやりすぎだよ

だって、君は大したことじゃないと思っているから

お金っていったって、君をどこまでも連れて行ってやしないよ

 
どうにもならなくなって 雨の中で

痛みが感じれない時は誰かを傷つけるのはとても簡単さ

愛が育つことはできないってわからないのかい

もっと与えるべきものがたくさんあるし

君はスリルだけを求めて生きようとするから


君はリッチ・ガール、もう手遅れだよ

だって、君は大したことじゃないって思ってるからね

君はオヤジの金にたよることができる

オヤジの金にたよることができるんだ

ひどい娘さ だけどやりすぎだよ

だって、君は大したことじゃないと思っているから

お金っていったって、君をどこまでも連れて行ってやしないよ

 

 

君はオヤジの金にたよることができる

オヤジの金にたよることができるんだ

君がリッチ・ガール、リッチ・ガール

君はリッチでひどい娘さ、、          (拙訳)

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この曲を作ったダリル・ホールはこう語っています。

「『リッチ・ガール』はサラが大学の時に付き合っていた彼氏のことを書いたもので、その頃彼女はまだ彼と友達だったんだ。彼の名前はヴィクター・ウォーカー。彼が僕たちのアパートに来た時、彼はちょっとおかしな振るまいをしていたんだ。彼の父親はとてもリッチで、確かファーストフード・チャーンをやっていたと思う。”コイツは頭がおかしいけど、心配する必要はないんだろう、だって彼がどんなトラブルを起こしても、お父さんがきっと保釈金を積んで助け出してくれるだろうから”って僕は言ったよ。そして僕は座ってあのサビを書いたんだ。”彼は親父の金をアテにできる、彼は親父の金をアテにできる,彼は"Rich Guy"なんだ”・・・だけど、どうしてもしっくりこないので、”Rich Girl”に変えたんだよ。これは彼のことを書いた曲だって彼自身も知っているのさ」

 (American Songwriter     Hall&Oates Soul Survivers 

 

   もともとは「リッチ・ガイ」だったんですね。で、ハマりがしっくりこなかったからガールにしたと。しかし、ガールにすることで歌詞に出てくる”The old man”が父親以外の存在じゃないかとついつい想像力が膨らんでしまいます。真偽はわかりませんが。

 

 この曲のモデルだと名指しされたヴィクター・ウォーカーさん。けっこう身元もばれているようで、彼の父親はシカゴでパンケーキ店をやりながら、ケンタッキー・フライド・チキンのフランチャイズを15店も経営しているなんて記事がありました。

 

 それから、サラというのはサラ・アレン。ダリル・ホールの当時のパートナーで、彼らの代表曲「サラ・スマイル」のモデルとなった女性。ダリルのインスピレーションの源であり、のちに作詞も手伝い、彼らの大人気曲「プライベート・アイズ」は実は彼女の妹のジャナが大半を作曲していたということもあって、彼女がいなかったらホール&オーツの大ヒット曲の半分は生まれていなかったと思われるほどの重要な女性です。

 

 さて、この曲のテーマは、自分の金じゃないのに、それを当たり前のようにあてにするのは人としていかがなものか、ということなのでしょう。でも、金持ちってお金でなんでも解決できちゃうから、そういう疑問もわかないんだろうなあ、というあきらめも感じるとこがまたこの曲の良さですよね。

 

 お金がすべてじゃないと僕も思うのですが、お金で苦労したことがない人とは、根本的なところで理解し合うのはむずかしいなあ、というのもいまだに思ってしまうことなので、”言っても無駄だってわかるけど口に出さずにはいられない”っていうこの曲のスタンスは、なんだか親近感が湧いてしまいます(苦笑。

 

 そういうシンパシーはアメリカ国民にもあったのでしょうか、この曲は大ヒットし、彼らにとってはじめての全米NO.1になります。しかも、アルバムからファースト・シングルは別の曲でしたから、彼ら自身も最初はそんなにヒットするとは思わなかったようです。

 

 少し話が飛んでしまいますが、”お金の話をするのは下品だ”という昔からある日本人の美意識が、かえって日本人の経済的な感覚を鍛えることをさまたげている、といった意見をここ何年かでよく目にするようになりました。

 考えてみると、確かにお金の歌っていうのは日本では少ないですね。歌の題材にするには下品とは言わないまでも、生々しすぎるという感覚はあると思います。洋楽では恋愛以外の歌のテーマの中としては、けっこう多いですよね。ピンクフロイドやアバとかすぐにいろいろ浮かびます。

 そのあたりの感覚の違いも、洋楽と邦楽の違いを生んでいる要素の一つなのかもしれませんね。ただ、洋楽でも、基本的にはお金を歌で扱う場合は風刺や皮肉で料理しています。いつもお金は”仮想敵”のポジションなんですよね。

 ポピュラー・ミュージックは”共感”を大前提にしていますので、お金を敵のポジションに置くのが一番多くの共感を得られるってことでしょうから、時代が変わっても変わらない現実があるということなんでしょうか。

 

 

 

 さて、最後はこの曲のカバーを。

LAの男女ユニット”ザ・バード・アンド・ザ・ビー”が2010年に発表したカバーはダリル・ホールもお気に入りとのこと。

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 こんな人もカバーしていたんですね。ニーナ・シモン。1978年の彼女のアルバム「ボルチモア」に収録されています。

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