まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「プライベート・アイズ(Private Eyes)」ダリル・ホール&ジョン・オーツ(1981)

 おはようございます。

 今日はホール&オーツの「プライベート・アイズ」。彼らの大成功の裏には、幸運の女神の存在があったというお話です。


Daryl Hall & John Oates - Private Eyes (Official Music Video)

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I see you, you see me
Watch you blowin' the lines
When you're making a scene
Oh girl, you've got to know
What my head overlooks
The senses will show to my heart
When it's watching for lies
You can't escape my

Private Eyes
They're watching you
They see your every move
Private Eyes
They're watching you
Private Eyes
They're watching you watching
You watching you watching you

You play with words you play with love
You can twist it around baby that ain't enough
Cause girl I'm gonna know
If you're letting me in or letting me go
Don't lie when you're hurting inside
'Cause you can't escape my

Private Eyes
They're watching you
They see your every move
Private Eyes
They're watching you
Private Eyes
They're watching you watching
You watching you watching you

Why you try to put up a front for me
I'm a spy but on your side you see
Slip on, into any disguise
I'll still know you
Look into my Private Eyes

Private Eyes
They're watching you
They see your every move
Private Eyes
They're watching you
Private Eyes
They're watching you watching
You watching you watching you

 

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僕は君を見ている 君は僕を見ている

取り乱して セリフを飛ばした君を見つめてる

おおガール、おぼえておくんだ

頭では見落としていることも

勘がこの心に伝えてくれるのさ

嘘を見つけたら 君は逃げられないんだ

僕の

 

探偵のような目が

君を見つめているんだ

あらゆる動きを見ているんだ

探偵のような目が

君を見つめている

探偵の目が

君を見つめて、見つめて、見つめているんだ

 

言葉と戯れ、愛をもてあそぶ君

いくらねじまげたって 足りないんだね

だって、僕にはわかるよ

君が僕を受け入れようが 追い出そうが

心が傷ついたときは嘘をついちゃダメさ

だって君は逃げられないんだ 

僕の

 

探偵のような目が

君を見つめているんだ

あらゆる動きを見ているんだ

探偵のような目が

君を見つめている

探偵の目が

君を見つめて、見つめて、見つめているんだ

 

どうして君は僕にカッコつけようとするんだい

僕はスパイだけど、君の味方なんだよ わかるかい

どんなにすばやく取り繕っても

僕にはわかるだろう、僕の探偵の目をのぞきこめば

 

探偵のような目が

君を見つめているんだ

あらゆる動きを見ているんだ

探偵のような目が

君を見つめている

探偵の目が

君を見つめて、見つめて、見つめているんだ   (拙訳)

 

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「プライベート・アイズ」楽譜はこちら

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ホール&オーツの大ヒットの影にいた”女神の姉妹”

 

   ホール&オーツの最初の大ヒットは「Sara Smile(微笑んでよサラ)」で、

1976年に全米4位になっています。


Daryl Hall & John Oates - Sara Smile (Official Audio)

 

  この曲は、ダリルの本当のガール・フレンドであるサラ・アレンがモデルになっています。二人は結婚はしませんでしたが、1970年代から30年近くパートナーだったようで、この曲の次のアルバムからサラは作詞家として制作に加わっていきます。

 「I Can't Go For That(No Can Do)」や「マンイーター」といった大ヒット曲にも彼女が参加しています。

  また、彼らの最初のNO.1ヒット「リッチ・ガール」はサラの友人がダリルのインスピレーションの元になったと言われています。

 別れてしまった現在でも、ダリルは彼女は自分にとっての”MUSE"だったと本人は語っています。

 

 そして、サラにはジャナという妹がいて、彼女も音楽の仕事に興味を持っていました。ある日、ダリルはジャナのマンションで一緒に曲を書きあげます。短時間に一気にかけたそうです。

 曲は彼女が歌うことを想定していましたが、ダリルが彼女のガイド用に歌うデモを聴いたマネージャーが、ホール&オーツとしてリリースすべきだと強く推し、デモをブラッシュアップする形で制作したのがこの曲でした。

 


Hall & Oates - Kiss On My List (Lyrics)

    この「Kiss On My List」は全米NO.1ヒットになります。1970年代後半、ホール&オーツはスランプ期でヒットが出せず、この曲の入ったアルバム「モダン・ヴォイス(Voices)」からのファースト・シングルはコケてしまい、セカンド・シングルはライチャス・ブラザースの「ふられた気持ち」をカバーしてなんとか全米12位まであがったという状況でした。 

 

 ダリルはジャナと音楽面で一緒に行動をとるようになり、彼らはLAでバンドをやっていたウォーレン・パッシュというミュージシャンを気に入り声を掛け、彼らがLAに来ると一緒に曲を作るようになります。

 

 ウォーレンは「プライベート・アイズ」の原曲になるものを思いつき、それを自分で歌う曲を探していたジャナに聴かせます。そして、あらためて二人でリメイクしたようです。もともとは、ソフトなバラード調だったようですが、ジャナが加わることで「Kiss On My List」調のリズムのポップチューンに変わったようです。

 

 ジャナはNYに戻り、ダリルに聴かせると彼は気に入ってホール&オーツでやりたいということになり、ダリルとサラで少し手直しをして完成させました。

 

 ホール&オーツR&Bが根本にあるグループですから、1970年代の代表曲はみなそういうソウル・フィーリングを強く感じるものでした。

 しかし、1980年代の大ヒット曲は、ポップでキャッチー、リズムもシンプルになっていて、よくぞ見事に”'80sポップス仕様”にシフト・チェンジができたものだな、と昔から感心していたのですが、ジャナが隠れたキー・パーソンだったんですね。

 

 ホール&オーツが80年代に大ブレイクするきっかけとなった「Kiss On My List」も「プライベート・アイズ」もジャナが曲作りに加わり、彼女が歌うはずだったのに結局ホール&オーツでやることになる、という同じ道筋をたどっているのです。

 

 ジャナはその後、チープ・トリックやジョーン・ジェットなどの曲も書いていますが

 どれも共作なので、一人で完結して作品を量産できるほどの力量があるソングライターではなかったのかもしれません。しかし、彼女が加わることで、曲がスパッと明快になる、というようなセンスがあった人なんじゃないかと僕は推測します。曲をヒットさせるために重要とされる”何かを持っている”人だったように思えるのです。

 

 ジャナが曲作りに加わったホール&オーツの曲をもう1曲紹介します。


Hall & Oates - Did It In a Minute

 完全に「Kiss On My List」~「プライベート・アイズ」の路線ですね。この曲も全米トップ10入りしています。

   この後では「Method Of Modern Love」(全米5位)もジャナとダリルの共作です。

www.youtube.com

 そして、ジャナは1993年に白血病のためわずか36歳という若さで亡くなってしまいます。

 

 ダリル・ホールはソングライターとしても、ポップ史に残る稀有な才能の一人だと思いますが、サラとジャナのアレン姉妹がいなかったら、ホール&オーツの成功の目盛りはかなり下がったはずですし、もう少し玄人好みのアーティストになっていたんじゃないかと僕は想像します。

 サラはダリルのインスピレーションの元だったわけですし、ジャナがいなかったら「プライベートアイズ」も「Kiss On My List」も生まれなかったわけです。

 しかし、またダリルやジョンが音楽に対して純粋でオープンであり、人のアイディアを自分の手柄するような人間ではなかったからこそ、巡り合えたのだという見方も出来ます。

 ともかく、彼らにとって二人はまさに”女神”と言える姉妹だったのは確かなことでしょう。

 

プライベート・アイズ

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