まいにちポップス

1日1ポップス。エピソード、謎解き、勝手な推理、などで紹介していきます

「ウェイト・フォー・ミー(Wait For Me)」ダリル・ホール&ジョン・オーツ(1979)

 おはようございます。

 今日はホール&オーツの「ウェイト・フォー・ミー」。特に日本のファンから人気の高い曲のようですが、僕も彼らの曲の中ではこれが一番好きです。


Daryl Hall & John Oates - Wait For Me (Official Video)

 何かのFM番組でふいにこの曲がラジカセから流れてきた時の自分の”高ぶってゆくような気持ち”やその時の部屋の雰囲気を不思議なことに40年たった今もよく覚えています。中学生の時でした。以来、僕にとってFMでラジカセから流れてくる曲の代表といえばこれです。

 それからずっと後になってこのPVを初めて見たときに、まさにそんな導入部だったのでなんだか泣きそうになってしまいました、、(苦笑。

 

 ” 真夜中はもう終わる

   二人にかけられた魔法も解けようとしている

   君ができるだけのことをやったのはわかってる

   でも、もう一度だけチャンスをくれることは

   そこまで耐え難いことじゃないはず

 

   僕のことを待ってほしい、どうか、待ってほしい

   わかってる そんなことを頼める立場じゃないってことは

   だけど、どうか待ってくれないか 待ってほしい

   光はあっという間に消えてしまうのは知っているけど

 

   君はどちらの道も選べるけど

      ここに残ることのほうが楽かもしれないだろ

      次のチャンスがきた時に君がどうするのかわからないけど

   僕がどれだけ君がいてほしいと思っているか、わかっていてほしい

   僕が離れてしまえば 全てが壊れてしまう気がする、、

    

    愛とは真に愛することで 僕らの場合はちゃんとしていなかったんだね

      だけど二人で過ごした時間は無駄ではないはず

   どうか愛を妨げてきた僕の行いを許してほしい

    だけど、僕が君のことを待っていないなんて絶対に思わないでほしい

 

      僕のことを待ってほしい、どうか、待ってほしい

   わかってる そんなことを頼める立場じゃないってことは

   だけど、どうか待ってくれないか 待ってほしい

   光はあっという間に消えてしまうものだけど   "   (拙訳)

 

 

 プロデュースはデヴィッド・フォスター。「ウェイト・フォー・ミー」が収録されたアルバム「モダン・ポップ(X-Static)」の前作「赤い断層(Along the Red Ledge)」から続いての起用です。

 これはTOTOデヴィッド・ペイチが彼をホール&オーツのマネージャーだったトミー・モトーラに紹介したのがきっかけで始まったそうです。

 ちなみにこのトミー・モトーラ、のちにCBSレコードの社長になってマライア・キャリーのデモテープを聴いて彼女を一気にスターにするという”シンデレラ・ストーリー”の立役者、そして旦那にまでなったことで(のちに離婚)大変に有名になる人です。

 デヴィッド・フォスターも自伝ではホール&オーツとの仕事の内容には触れず、トミーはギャングのような雰囲気が漂っていて、いつか彼が世界を支配する日が来るんじゃないかという確信に似た思いがあった、などと語っています。

 

 ともあれ、1980年代に爆発的に売れることになる両者の組み合わせだったのですが、時代とタイミングが合わなかったのかセールス的には成功しませんでした。

 というわけで、デヴィッド・フォスター・プロデュースの「赤い断層」と「モダン・ポップ」は彼らの低迷期の作品として括られているわけですが、この2作の肌触りが結構違っているように僕は思っていました。

 「赤い断層」はそれまでの彼らの作品の延長線上のように聴こえるのに対して、「モダン・ポップ」はその後の彼らの大ヒット作「モダン・ヴォイス」「プライヴェート・アイズ」につながるような”原型”を感じるのです。”ロック&ソウル”のスタイルから”ポップ”へと覚醒し始めているというか。

 そう「赤い断層」と「モダン・ポップ」の間に実は”断層”があるんじゃないか、というのが僕の考えです。

 売れなかった作品ということで、ホール&オーツも、デヴィッド・フォスターも詳しく語ってくれていないのでその理由は謎のままではありますが。

 なので、あくまでも僕の推測ですが、「赤い断層」は両者の初顔合わせで探り合う部分もあり、しかもジョージ・ハリスントッド・ラングレンロバート・フリップといった豪華なゲストも入っていたため、いまいちダリル・ホールの本領が発揮されていなかったように思います。そして、「モダン・ポップ」になるとお互いやりやすくなり、デヴィッドとダリルの共同プロデュースにもなったので、よりダリルの能力を発揮しやすい環境になったのでしょう。

 今までずっと他の人のプロデュースで作ってきた彼らなので、全体的にはまだ散漫になるところはあったとしても、何をどうやりたいのか、どうやるべきかという感覚とスキルがつかめたのだと思います。

 そして初めての自分たちのプロデュースによる次作「モダン・ヴォイス」で大ブレイクすることになるわけです。

 

  ですから、この時期は彼らにとって”低迷期”などではなく、ポップ・クリエイター、ダリル・ホールの覚醒期であり、ポップ・アーティストとしてのホール&オーツのスタイルを形成していった”目に見えない上昇期”だったんじゃないでしょうか。

 

  ちなみにダリル・ホールは「モダン・ポップ」が売れなかったことについて

「ロック好きはディスコだって僕らのことを責めるし、ディスコ好きには僕らはすごく奇妙で、R&Bというには十分じゃなかった。その時の僕らはどのジャンルの友達でもなかったんだ」

 と語っています。

 そしてその後彼らは、これはロックだ、ソウルだ、ディスコだ、とかいう括りが関係ないほどの”ポップさ”を獲得したことで大ブレイクを果たします。 

 

 僕は70年代の彼らも80年代の彼らも両方好きなのですが、その過渡期に生まれた「ウェイト・フォー・ミー」にはその両方の要素がうまく溶け合っているからこそ、今も僕は好きなのかもしれないですね。

 そしてあらためて聴くとメロディの節々に、彼らの初期の師匠であるトッド・ラングレンっぽさをちょっと感じます。

  (特に”OhI guess that's more than I should ask ”っていうあたりは特に)

 この

 なんて思っていたら、ファンには有名なダリルの番組「Live From Daryl's House

でこの曲をトッドと共演している映像がありました。二人の共作なんじゃないかと思うくらいよくハマっています。


"Wait For Me"- Daryl Hall, Todd Rundgren

 

モダン・ポップ

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