おはようございます。
今日はドージャ・キャットの「キス・ミー・モア」です。
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一応、この曲も和訳に挑戦してみたんですが、50代のおっさんにはギャップがありすぎて、途中で書いている自分自身に気持ち悪くなってしまい挫折しました、、。それで、調べたらオフィシャルで和訳付きのMVがあったので今日はそちらで。
「Say So」もよかったですけど、この曲もいいですね。グイグイとアグレッシヴなセクシーな歌には僕はただただ”後ずさり”してしまうんですが、ポップでメロウなトラックにのっかるものには弱いみたいです。
僕がそういう嗜好性になった原点はこの曲だったかもしれません。シルヴィアの「ピロウ・トーク」(1973年)。
この「キス・ミー・モア」は共作者にスティーヴ・キプナー、テリー・シャディックという名前があります。スティーヴ・キプナーはAORファンにはおなじみのアーティストで、テリー・シャディックは1970年代前半に”トランクィリティ”というUKポップ・バンドにいた人。なぜ、こんな昔の人が?と思いましたが、この曲のサビの〜It's Just Principle〜というメロディが、オリヴィア・ニュートン・ジョンの大ヒット曲「フィジカル」のサビ〜Let's get physical〜のメロディーを使ったからのようです。
これは僕の推測でしかないですが、もともと「フィジカル」をイメージして作ったのではなく、出来上がってみたらメロディがなんか「フィジカル」に似てるな、盗作で訴えられる前に確認しておこうか、という流れだったような気がします。
チェインスモーカーズの大ヒット「クローサー」もやはり、出来上がってからザ・フレイ”の曲のメロディに似ているぞということがわかって、事前に確認し共作扱いになっているので、それと同じパターンだったんじゃないでしょうか。
さて、ドージャ・キャットは本名はAmala Ratna Zandile Dlaminiといい、母親はユダヤ系アメリカ人の画家、父親は南アフリカのズールー族の俳優でブロードウェイの「ライオン・キング」などで踊ったりしていたそうです。
叔母がシンガーで彼女が音楽への道に導いたようですが、5歳からバレエ、タップダンス、ジャズの他にインドの古典舞踊を習っていたそうです。
11年性の時といいますから日本でいう高2くらいでしょうか、学校をドロップアウトした彼女は、部屋に引きこもり毎日インターネットを見て、ビートやインストゥルメンタルを探し、独学で歌やラップ、GarageBand(Macに入っている音楽制作ソフト)の使い方を学び楽曲を作って、せっせとSoundCloud(音声ファイル共有サービス)にアップロードしていき、そこから注目を集めるようになっていきました。
あるインタビューで、自分を一言で言い表すと、といった 質問に対して彼女は、ラッパーでもシンガーでもダンサーでもなく”クリエイター”と答えています。
そして、優秀でキャリアのあるプロデューサーや、トラックメイカーと共同作業していくことで、自らの実力も磨いているようです。
「私は、いろいろなことを試してみたいと思っているけど、自分がハマっていて学び始めたのは、ハウスやディスコ、ヴィンテージのエッセンスがあるものが多くて、そこに自分の気持ちが行ってるの。だけど、私はまだ理解できていなくて、あれこれやってみているところだわ。それは今でも本当に楽しいことなの」
(「V Magazine」 April 19, 2021)
また、自分の音楽というものをしっかり客観視できているようです。
「歌うことができてメロディーを作ることができるのは素晴らしいことだけど、私はいつもラップをやりたくてはじめてるの。それがただ融合してしまった、私にはその二つを一緒にすることができたってこと。私の言う意味がわかる?ポップ・ミュージックを作ってそれに合わせてラップをすると、間違いなく非難されるの。そして、私が作ったポップ・ソングが、私がマッチしないカテゴリーで成功したりすると、、、それは例えば.....そうね。それはラップでもないし、R&Bでもない。ポップなクソ(Shit)なの。だけどそれは辛いことだわ。たくさんのものが1つのジャンルにおさまっている、だけど、たくさんの人がクソ(Shit)を組み合わせているでしょ、じゃあ、それをどうやって完璧なカテゴリーに分類することができるのっていうの?実験やそういうことがとても大きな意味がある時なのに」
(「V Magazine」 April 19, 2021)
やはり、キャッチーでポップな曲にラップを入れることへの風当たりは強いんですね。彼女はただキャッチーでセクシーな音楽をやろうというのではなく、ジャンルにおさまらないものを実験しながら作っていきたいのだという意思が伝わってきます。クリエイター・マインドの人なんですね。PVのイメージに惑わされちゃいけないですね。
また、彼女が新人として注目を集めはじめた2018年のインタビューで
「 今の時代で新人が注目される機会を得ることは難しいと思いますか?」
という質問に彼女はこう答えています。
「もしあなたの目的が見てもらうことだったら、絶対に見てもらえないわ。もしあなたの目的がハッピーで、快適で、本物で、技能に真剣に取り組んでいるなら、あなたは見つけられる運命にある。人々は本物じゃないものをかぎ分けるのよ」
(DAZED 29 August 2018)
"Sound Cloud"でデビューのきかっけをつかみ、”TikTok”で世界的に大ブレイクした彼女の言葉には説得力が無茶苦茶あります。
ただ目立ちたいだけの”ニセモノ”はいつまでたっても世の中に気づかれない、”技能に真剣に取り組んでいる本物”じゃなければいけない、そして、見る側をハッピーで快適な気持ちにさせなければいけない、なるほど、と思いました。
この一連の彼女の発言をチェックしてみて、僕はこの人の快進撃はまだまだ続きそうだな、と思いました。