おはようございます。
今日もポール・マッカートニー。「ジャンク」です。
Motorcars, handlebars, bicycles for two
Broken-hearted jubilee
Parachutes, army boots, sleeping bags for two
Sentimental jamboree
"Buy! Buy!" says the sign in the shop window
"Why? Why?" says the junk in the yard
Da-da-ya-da-da-da-da-da-ya, da-da-ya, da-da
Da-da-da-da-da, da-da
Candlesticks, building bricks, something old and new
Memories for you and me
"Buy! Buy!" says the sign in the shop window
"Why? Why?" says the junk in the yard
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自動車 自転車のハンドル
二人乗りの自転車 まるで失恋の祝祭さ
パラシュート アーミー・ブーツ 二人用の寝袋
まるで感傷的なジャンボリー
買って!買って!とショー・ウィンドウのサイン
どうして?どうして?と中に置かれた”がらくた”が言う
ロウソク立て 積み木
新しいものも古いものも 君と僕の思い出
買って!買って!とショー・ウィンドウのサイン
どうして?どうして?と中に置かれた”がらくた ” が言う ”
(拙訳)
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「リンダ(マッカートニー)はすごく助かられるよ、だって”あなたのギターを聴くのが好き”とよく言ってくれたからね。もう前みたいに一人で部屋に座っていることもなくなったから、テレビを見ながら一緒にギターを弾くんだ。そうやって「ジャンク」が生まれた。ハンドル・バー、センチメンタル・ジュビリー、ジャムの瓶、そういうイメージが好きなんだ。誰でも好きな言葉ってあるはず。僕はいつも”キャンドル・スティック”が好きだと言っていたことがあった。特定の言葉は、頭の中に色彩を作ってくれたり、感情を呼び起こしたりするものなんだ。だから、この曲は素敵な言葉のポプリ(寄せ集めたもの)で、そこから何か意味を作り出さなければならなかったんだ。そしてそれが、買って、買って、売ります、売ります、というがらくたが言う、というくだりなんだ。それをひとまとめにするために「Junk」のアイデアを得たんだ。曲の作り方としてはいい方法だった」
(ポールのファン・クラブ誌”Club Sandwich 55/56, Winter 1990/91”より)
これは”JUNK(がらくた)”についての歌にしようとして書いたのではなくて、ポールが自分の好きな言葉を羅列していって、その整合性を取るために、これはみんな”がらくた”だという共通点を、後からでっち上げた(?)んですね。
この曲は1968年に彼がインドに行ったときに作り始め、アルバム「ザ・ビートルズ(ホワイト・アルバム)」用の曲として、ジョージ・ハリスンの家でデモを録音していて、その音源はのちに『アンソロジー3」に収録されました。
このときは歌詞も未完成で、キーも少し低かったんですね。
ポップスを毎日聴きながらブログをこうして書いていて、僕なんかが今更言うことでもないかもしれないですが、やっぱりポップ・ミュージックの歴史の中でもポール・マッカートニーとブライアン・ウィルソンはずば抜けてるな、まさに天才だなってますます痛感しています(もう一人あげるとしたらバート・バカラックです)。
ブライアンは、コード、ハーモニー、サウンドの全てを駆使して純度100%の世界を作り上げるわけですが、ポールの場合は、ほとんど”ギターぽろろん”、だけで誰にも書けないようなすごい曲を生み出すところに怖ろしさすら僕は感じます。
この「ジャンク」も、さらっと始まったと思ったら、胸の奥の切ない部分をぎゅっと掴んで、また消えてゆくみたいな(この感じ伝わってますでしょうか?)曲です。しかもテレビを観ながらこれを作ったなんて、、、。
そういう曲の極みは当然「イエスタデイ」でしょうが、この「ジャンク」が収録されたかもしれないと言われている”ホワイトアルバム”にも「ブラック・バード」や「アイ・ウィル」という、”ほぼギターぽろろん”だけなのに、彼以外に絶対書けない名曲が入っています。
彼の曲をいろいろ分析したわけではないですが、僕が今まで聴いてきた中の印象として、彼は具体的だったり強い感情の入った言葉や歌詞を避ける傾向があるように思います。感情移入は絶対にしない客観的な視点が常にある、ようにも思います。
”言葉の力に頼りすぎない”美学とでもいいますか。
しかし、この「ジャンク」の自分が好きな言葉だけを並べていって、そこから切ない情感を浮かび上がらせる、というのは、
もはや 電話帳を1ページ読むだけで観客を泣かせたというイギリスの名優ローレンス・オリビエ、や、レストランのメニューを読むだけで観客を泣かせたというフランスの大女優サラ・ベルナールと同じ領域じゃないか!などと僕は思ってしまいます。
さて、マッカートニーの影響受けて自身の音楽に反応させたアーティストとして真っ先に思い浮かぶ、ジェフ・リンが、トリビュート・アルバムでこの曲をカバーしています。
意外なところでは「カントリー・ロード」でお馴染みのジョン・デンバーもカバーしています。
僕が個人的に好きなのが、同じポールのソロ・アルバムに入っていたインスト・ヴァージョン。フィル・スペクターが”Singalong"というカラオケを入れていた手法を真似たのだそうです(大瀧詠一もやっていましたね)が、これがまたいいんです。
ちょっと話はとんでしまいますが、2017年に桑田佳祐が出したソロ・アルバムは「がらくた」というタイトルでしたが、ポールの超ファンである彼ですから、きっとこの曲が頭にあったんじゃないかと僕は推測しています。
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