まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリング(Flashdance... What a Feeling)」アイリーン・キャラ(1983)年

おはようございます。

今日はアイリーン・キャラの「フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリン」です。


Irene Cara - Flashdance What A Feeling (Official Music Video)

 

    "初めは何もなかった ゆっくりと高まってゆく夢以外は

  恐怖心が胸の奥深くに隠してしまったように見えたその夢

 

 たったひとりで泣いていた プライドが涙になって静かにあふれてゆく

 鋼で作られた世界で 石でできている世界で

 

 音楽が聞こえる 目を閉じて 

 リズムが体に巻きついて 

 心をつかむのを感じる

 

 なんて気持ちがいいの! 信じるってことは

 望みは叶うの だからいま踊っている 自分の人生のために

 

 あなたの情熱で 実現させるのよ

 描いていた夢は現実になる 

 命ある限りずっと踊っていけばいい

 

 いま音楽が聞こえる 目を閉じて

 その瞬間私はリズムとひとつになって

 心を立ち直ってゆく

 

 なんて気持ちがいいの! 信じるってことは

 望みは叶うの だからいま踊っている 自分の人生のために

 

 あなたの情熱で 実現させるのよ

 描いていた夢は現実になる 

 命ある限りずっと踊っていられるの

 なんて気持ちがいいの!

 

 なんて気持ちがいいの!(いま私は音楽)

 信じ続けることって(いま私はリズム)

    描いた夢は本当のものになる 

 命ある限りずっと踊っていられるの、、

 

 なんて気持ちなの(本当に夢は叶う)

 なんて気持ちなの(私が呼んだら、描いていたことが現実になる)

 夢は全部叶う(本当に全部叶う)全部叶うの

(私が呼んだら、描いていたことが現実になる)

 、、、                        ”   (拙訳)

 

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First when there's nothing
but a slow glowing dream
That your fear seems to hide
Deep inside your mind

All alone I have cried
Silent tears full of pride
In a world made of steel
Made of stone

Well, I hear the music
Close my eyes, feel the rhythm
Wrap around
Take a hold of my heart

What a feeling
Bein's believin'
I can have it all
Now I'm dancing for my life

Take your passion
And make it happen
Pictures come alive
You can dance right through your life

Now I hear the music
Close my eyes, I am rhythm
In a flash
It takes hold of my heart

What a feeling
Bein's believin'
I can have it all
Now I'm dancing for my life

Take your passion
And make it happen
Pictures come alive
You can dance right through your life
What a feeling

What a feeling(I am music now)
Bein's believin'(I am rhythm now)
Pictures come alive
You can dance right through your life

What a feeling(I can really have it all)
What a feeling(Pictures come alive when I call)

I can have it all(I can really have it all)Have it all
(Pictures come alive when I call)

(What a feeling)I can have it all
(Bein's believin')Bein's believin'
(Take your passion)

(Make it happen)Make it happen
(What a feeling)What a feeling
(Bein's believin')Happen
(Take your passion)

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 この曲は映画「フラッシュダンス」の主題歌としてアメリカで6週連続NO.1の大ヒット、日本でも洋楽としては歴代7位、70万枚も売れています。

 

 MTVが始まってミュージック・ビデオの人気が高まり、その手法を反映させた映画が次々と作られたのがこの時代ですが、「フラッシュダンス」はその代表的作品でした。

 

 音楽を担当したのはジョルジオ・モロダーで、彼に仕事を依頼したのはプロデューサーのジェリー・ブラッカイマーで、ふたりは「アメリカン・ジゴロ」(ブロンディー「コール・ミー」)「キャット・ピープル」の2作品ですでに仕事をしていました。

 

  ジェリー・ブラッカイマーはその後「トップ・ガン」「ビバリーヒルズ・コップ」「アルマゲドン」「パイレーツ・オブ・カリビアン」などを手がける超大物プロデューサーになるわけですが、その頃は「アメリカン・ジゴロ」で少し名前を知られるようになってきた程度で、直近の作品「病院狂時代」がおかしな映画だったので、ジョルジオはジェリーから「フラッシュダンス」の音楽の仕事を依頼されたときは正直あまり乗り気じゃなかったそうです。

 「映画を見てみないと判断できない」と言って、ブラッカイマーから90%までできた映画のビデオテープを受け取りますが、仕事が入っていたので当時のガールフレンドにそれを渡して、先に見て感想を教えるように言ったそうです。

 そして彼が部屋に戻ると、映画を観た彼女が感激して号泣していて、これはやらなくちゃいけないと思ったのだそうです。

 

 そしてその主題歌のシンガーとして選ばれたのはアイリーン・キャラでした。

 子供の頃からTVや映画に出演していた彼女は、1980年に映画「フェーム」に主演し、同名の主題歌が全米4位の大ヒットになっていて、そこにブラッカイマーは目をつけたのです。


Irene Cara - Fame 1980 (VHS 1982 Edit)

 「フェーム」はスターを夢見る音楽学校の生徒たちの青春群像劇で、アカデミー作曲賞も受賞していて、テーマの近い「フラッシュダンス」に「フェーム」の主要な要素を制作者側は入れたかったのだとアイリーンは語っています。

 

 そして、「フラッシュダンス」の話が来た時に彼女は、「フェーム」と違って自分は出演しないのだから、主題歌を歌うかわりに曲作りにも参加したいと条件をつけたそうです。

 そして、制作者側もそれに同意したそうです。

(この映画の音楽のスーパーバイザーはフィル・ラモーンですので、彼もこのやりとりに関係していたのかもしれません。昨日このブログに登場した映画「ビジョン・クエスト 青春の賭け」でも、彼はスーパーバイザーをやっていましたね)

 

 そして、彼女はモロダーのスタジオに行き、彼と元ドラマーで彼の音楽制作スタッフであるキース・フォーシーと三人で4時間くらいでこの曲を書き上げたそうです。

 

 歌詞はアイリーンがメインで、キースがそれを調整し、メロディはモロダーが書きましたが、彼女が自分が歌いやすいようにあちこちメロディも変えたのだそうです。

 

 それから、彼女はモロダーとの仕事には最初消極的だったといわれています。それはモロダーと組んで大ヒットを飛ばしていたドナ・サマーと比べられたくなかったからです。

 「フェーム」がヒットした時に、ドナ・サマーみたいに聴こえると彼女はさんざん言われていたようです。

 しかし、後に彼女が告白したところによると、「フェーム」を歌うときに彼女はドナ・サマーを見習おうと決めてのぞんだのだそうです。だから、似ていると言われるのは仕方がなく、彼女が選んだことでもあったのです。

 それに加えて、最初の「フェーム」の楽曲が出来上がる前に、いくつかのシーンはドナ・サマーの「ホット・スタッフ」に合わせて撮影されていたとも話しています。

 そこで気づいたのですが、「ホット・スタッフ」はもちろんジョルジオ・モロダーのプロデュースでしたが、曲を書いた一人がやはりキース・フォーシーだったのです。

 

 彼らには、ドナ・サマーをめぐる因縁のようなものがあったわけですね。

 しかし、この曲はドナ・サマーとはまったく似ていないものになりました。

 アイリーンはそうならないように意識したはずですし、モロダーのほうもこの映画はディスコ・サウンドは合わないと判断し、得意の”四つ打ち”のビートを封印していたことも大きかったんじゃないかと僕は考えています。

 

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 フラッシュダンス…ホワット・ア・フィーリン」の成り立ちを探ってゆくとこの曲にたどりついたわけです。

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