まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。(現在は不定期で更新中)古今東西のポップ・ソングを、エピソード、和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などを交えて紹介しています。親しみやすいポップスは今の時代では”ニッチ(NIche)”な存在になってしまったのかもしれませんが、このブログがみなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。追加情報や曲にまつわる思い出などありましたらどんどんコメントしてください!text by 堀克巳(VOZ Record

「ホット・スタッフ(Hot Stuff)」ドナ・サマー(Donna Summer)(1979)

 おはようございます。今日は「ホット・スタッフ」。ドナ・サマージョルジオ・モロダー・コンビの代表作です。


Hot Stuff

Sittin' here eatin' my heart out waitin'
Waitin' for some lover to call
Dialed about a thousand numbers lately
Almost rang the phone off the wall

Lookin' for some hot stuff, baby, this evenin'
I need some hot stuff, baby, tonight
I want some hot stuff, baby, this evenin'
Gotta have some hot stuff, gotta have some love tonight
(Hot stuff)
I need hot stuff
I want some hot stuff
I need hot stuff

Lookin' for a lover who needs another
Don't want another night on my own
Wanna share my love with a warm-blooded lover
Wanna bring a wild man back home

Gotta have some hot love, baby, this evenin'
I need some hot stuff, baby, tonight
I want some hot stuff, baby, this evenin'
Gotta have some lovin', gotta have love tonight (Hot stuff)
I need hot stuff
Hot love, lookin' for hot love

How's about some hot stuff, baby, this evenin'?
I need some hot stuff baby, tonight
Gimme a little hot stuff, baby, this evenin'
Hot stuff, baby, gonna need your love tonight (Hot stuff)
I need hot love
Lookin' for hot stuff, wanna have hot love

Sittin' here eatin' my heart out, no reason
Won't spend another night on my own
I dialed about a hundred numbers lately
I'm bound to find somebody home

Gonna have some hot stuff, baby, this evenin'
I need some hot stuff, baby, tonight
Lookin' for my hot stuff, baby, this evenin'
Need some lovin', baby, gonna need your love tonight
Hot stuff, baby, this evenin'
I need some hot stuff, baby, tonight, yeah, yeah
I want some hot stuff, baby, this evenin'
I want some hot stuff, baby, tonight, yeah, yeah, yeah, yeah, now
Hot stuff, baby
I need your hot stuff, baby, tonight
I want your hot stuff, baby, this evenin'
Hot stuff, baby, gonna need your love tonight

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 ”ここに座って 焦れながら待ってるの

   恋人の誰かが電話してこないかって

   最近1000人くらいに電話したから

  電話機が壁から落ちそうな勢いで鳴ってるわ

 

  今晩はとびきりセクシーな相手を探してるの

  今夜は熱くてセクシーな男じゃなきゃだめ

  今夜はすごくセクシーな男がほしいの

  セクシーな相手を見つけなきゃ

  今夜は愛を交わしたいの

  セクシーな相手が必要なの

 

  誰か相手が必要な恋人を探しているの

  一人っきりで夜を過ごしたくないから

  あたたかい血の通った恋人と愛を交わしたい

  ワイルドな男を家に連れて帰りたいの

 

  今晩はとびきりセクシーな相手を探してるの

  今夜は熱くてセクシーな男じゃなきゃだめ

  今夜はすごくセクシーな男がほしいの

  セクシーな相手を見つけなきゃ

  今夜は愛を交わしたいの

  セクシーな相手が必要なの

 

  ここに座って ジリジリしている なぜかしら

  一人っきりで夜を過ごしたくないの

 

  100人には電話したわ ベイビー

  誰か見つけて家に連れて行かなくちゃ       ” (拙訳)

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 ドナ・サマーはボストン出身で、十代の終わりに歌手を夢見てニューヨークに行きます。そこでミュージカル「ヘアー」のオーディションで合格し、ドイツ公演のキャストになりミュンヘンに移住しました。そこで、他のミュージカルにも出演しながらドイツ語をマスターします。

 彼女がはじめてリリースしたシングルは「ヘアー」で使われた曲「アクエリアス」のドイツ語版でした(1968年)。世界的にはフィフス・ディメンションが歌って大ヒットしました。


Wassermann (Aquarius)

 スリー・ドッグ・ナイトがミュンヘンでデモを録音することがあり、ドナはバック・コーラスとして参加、そのスタジオのオーナーでもあったジョルジオ・モロダーと彼のアシスタントとして仕事をしていたピート・ベロッテと出会い、一緒に楽曲を作ることになります。

 ジョルジオはイタリア人でピートはイギリス人、ドナはアメリカ人、音楽で成功するために異国のドイツに移り住んだ国籍の違う3人がこうして意気投合したわけですから不思議なものです。

 ディスコで一世風靡することになるこのチームの最初の作品は、ダンスナンバーではありませんでした。曲は「デンバー・ドリーム」、作詞、作曲したのはピート・ベロッテでした。1974年のリリースです。


Donna Summer - Denver Dream (Audio)

 

 ちなみに彼女の本名はラドナ・アンドレア・ゲインズで、ドナ・ゲインズという名前で音楽活動していましたが1973年にオーストリア人俳優のヘルムート・ソマーと結婚し、ドナ・ソマー(Sommer)になりました。

 しかし、レコード・ジャケットで誤って、ドナ・サマー(Summer)と印刷してしまったため、そのままドナ・サマーと名乗るようになったそうです。印刷ミスが芸名になるってなかなかレアですね。

  そして、この次にリリースしたシングルが「The Hostage」。”人質”という意味ですが、旦那を誘拐された女性と犯人との電話のやりとりや事件の顛末(旦那は死体で見つかるという、ひどい終わり方、、)を歌にした曲です。

 オランダ、スペイン、イギリスでは大ヒット、ドイツでは歌詞が問題になり放送禁止になったそうです。当時、日本でもシングル発売されていて、邦題は「恐怖の脅迫電話」アーティスト名は”ドンナ・サマー”と表記されています。


Donna Summer - The Hostage (1974) [1]

  80年代に彼女は「情熱物語(She Works Hard for the Money)」などロックっぽい曲もやるようになるわけですが、実はもともとはディスコじゃなくロックっぽい曲をやっていたんですね。

 そして、次のシングル「Love To Love You Baby」が、アメリカのカサブランカ・レコードの社長ニール・ボガートの耳に止まり、彼らはアメリカ進出を果たすことになります。

 「Love To Love You Baby」というフレーズをドナが思いつき、ジョルジオに曲にできないかと相談して出来上がったものなのだそうです。


Donna Summer - Love To Love You Baby

 「恐怖の脅迫電話」から「Love To Love You Baby」の流れの”キワモノ”感はスゴイですね。。。ともかく、ここでようやく彼女の代名詞となる”ディスコ”路線が生まれたわけです。

  そして、1977年「I Feel Love」で現在のジョルジオ・モロダーのイメージとなっている”エレクトリック・ディスコ”サウンドを打ち立てます。


Donna Summer - Love To Love You Baby

 そのあと、このブログでも紹介しました「マッカーサー・パーク」で初の全米1位を獲得し、二枚目の全米1位となったのが、この「ホット・スタッフ」というわけです。

 僕が注目したいのはソングライターです。ピート・ベロッテとハロルド・フォルターマイヤーキース・フォーシーの3人。

 ハロルド・フォルターマイヤーは、のちに映画「ビバリーヒルズ・コップ」のテーマ「アクセル・フォリーのテーマ(Axel F)」を大ヒットさせた他、数々の映画を手がけた人です。ドイツにいた彼の才能を見抜いたジョルジオがアメリカに連れて行き、一緒に仕事をしながら育てたのです。


Harold Faltermeyer - Axel F (1984) Beverly Hills Cop - Soundtrack

  キース・フォーシーも、ジョルジオのドラマーとして採用され、ソングライター、プロデュースとして修行し、アイリーン・キャラの「フラッシュ・ダンス〜ホワット・ア・フィーリング」もジョルジオと共作しています。その後独り立ちし、80年代にビリー・アイドルやシンプル・マインズを大ヒットさせています。


Simple Minds - Don't You (Forget About Me)

  ジョルジオ・モロダーは才能のある若手を見出し育ててもいるんですね。

この人、そうとう懐が深い、僕はそう感じました。

「恐怖の脅迫電話」も収録されたシングルコレクション。

バッド・ガールズ+10〈デラックス・エディション〉

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ホット・スタッフ~ドナ・サマー・グレイテスト・ヒッツ
 

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