まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「恋の玉手箱(Son of My Father)」チッコリー(Chicory Tip)(1972)

 おはようございます。

 今日はジョルジオ・モロダー初期のヒット作、チッコリーの「恋の玉手箱」です。

 1972年の全英NO.1ヒットです。 


Chicory Tip - Son Of My Father • TopPop

 

 ”ママは僕に言っていた 

  パパとママはあなたの人生を正しく導かないといけないの

     学校に行って そこでルールを正しく見につけるのよ

  あなたのパパみたいな若者になりなさい

  同じ慣習に従って 決して迷わず 正直で可愛い息子でいなさい

 

  僕の父の息子   

     鋳型にはめられ 折りたたまれて 

  はじめから決まった形に梱包されてる

     僕の父の息子

     命令され 僕は真空パックされ商標をつけられ

  統計の事実に囲まれうろたえている

 

     なんとかそれに合わせようとしたけれど

  やがて、僕は驚いてしまったんだ

     嘘を見破って アリバイのサインを読み取ったんだ

  だから僕は家を飛び出し 最後には一人っきりになった

  歩いてきた道を離れて 過去と決別したんだよ

 

 僕の父親の息子

 チェンジして リアレンジして 誰か新しい人間に変わるんだ

 僕の父親の息子

 集めてセレクトするんだ 独立した視点を

 変化は当然の結果だって知ってるし それを示すんだ

 

  僕の父の息子

     命令され 僕は真空パックされ商標をつけられ

   統計の事実に囲まれうろたえている   "                           (拙訳)

 

 こんな軽快なサウンドに乗せて、けっこうシリアスな親との確執と独立を歌っているんですね。

 しかし、邦題がここまで歌の内容と無関係だと、なんだか脱力して笑みすら浮かんできてしまいます、、。

 邦題の効果もあったのか(?)、日本でもオリコンチャート入りしています(82位、売り上げ1万3千枚)。

 

 グループ名のChicory Tipをなぜ”チッコリー”と省略したのかなあ?と思ったのですが、彼らがこの曲をアメリカで発売するときに”Chicory”にしたらしく、日本はそれに合わせたようです。

 

 さて、この曲を作ったのはジョルジオ・モロダー。英語詞は彼の相棒、ピート・ベロッテです。彼らがドイツで活動しているときで、最初にリリースしたのはドイツのシンガー、マイケル・ホルム。タイトルはNacht's scheint die Sonne」、昼は仕事で会えないけど、夜君が一緒だから、夜でも太陽が輝いているみたいだ、というような歌詞のようで、「恋の玉手箱」とも「僕の父親の息子」とも、また全然違っています。


Michael Holm - Nachts scheint die Sonne -

 

 さて、ジョルジオ・モロダーは当初”ジョルジオ”という名前で1960年代半ばからアーティストとして活動をしていました。

 彼が目をつけたのは、アメリカで大ヒットしていた”バブルガム・ポップ”でした。

 このブログでも登場したオハイオ・エクスプレスの「ヤミーヤミーヤミー」もカバーしています。

popups.hatenablog.com


Giorgio Moroder - Yummy Yummy Yummy

 ごっついヒゲの男が子供向けのバブルガム・ポップスを歌うというミスマッチのインパクトを狙っていたんでしょうか。

  彼はまた「Looky Looky」というオリジナル曲をヒットさせています(スイスで3位、ドイツで26位、ベルギーで16位)。


Giorgio Moroder - Looky Looky

 なんか、大瀧詠一の匂いがするなあ、と僕は思ったのですが、キメに使っているフレーズがリヴィングトンズの「Papa Oom Mow Mow」で、これを大瀧も「うなずきマーチ」(うなずきトリオ)で使っていたからですね。


The Rivingtons - Papa Oom Mow Mow

 

 そして、彼はマイケル・ホルムに提供した「Nacht's scheint die Sonne」の英語ヴァージョンすなわち「Son of My Father」を自分で歌ってリリースすることにします。


Giorgio - Son of my father - 1972

 

  そして、この曲の発売前にプロモーション・コピーを偶然耳にしたのが、チッコリーのマネージャーだったそうで、ジョルジオのヴァージョンがイギリスでリリースされる前に発売しようと、大急ぎでレコーディングしたそうです。

 

 この曲の印象的なイントロの音色はモーグシンセサイザーで、1971年に発売された「ミニ・モーグ」を一番最初に使ったヒット曲と言われています。

 今では”エレクトリック・ディスコの祖”として、クラブ・シーンにおいて最大のリスペクトを受けているジョルジオですが、その道のりはこのイントロから始まっていたんですね。

 

 チッコリーのヴァージョンでモーグシンセサイザーを弾いているのは、クリス・トーマスだそうです。彼はビートルズピンク・フロイドセックス・ピストルズなど、ブリティッシュ・ロックを代表するエンジニア/プロデューサーで、この時期にはデヴィッド・ボウイジョージ・ハリスンのアルバムでモーグシンセサイザーの打ち込みを担当しています。

 

 

   さて、結果として、彼らのヴァージョンは全英1位の大ヒットになり、ジョルジオのヴァージョンはイギリスではコケてしまいました。

  しかし、そのお詫びというわけじゃないでしょうが、その後彼らのシングルはジョルジオ&ピートが6作連続して書いています。

  その中から1973年に全英17位まであがった中ヒット「ごきげんクリスティーナ(Good Grief Christina)を。


Chicory Tip - Good Grief Christina

 

 またもや出ました「うん〜まあまあ(Oom Mow Mow)」のフレーズ。ジョルジオさん、リヴィングトンズが大好きだったんですね。

 

 ジョルジオ、チッコリー、昨日ブログに登場していたドナ・サマー初期の楽曲を聴くと、ジョルジオ・モロダーという人は相当な”山っ気”がある人で、けっこうな”B級感”もある感じがしますよね。

 でも、なんか”イヤラしさ”が全然ないんですよね。彼の作った”バブルガム・ポップ”。けっこう僕は好きなんです。

 

 

恋の玉手箱

恋の玉手箱

  • アーティスト:チッコリー
  • 発売日: 2007/06/27
  • メディア: CD
 

 

 

On The Groove Train 1

On The Groove Train 1

  • アーティスト:Giorgio Moroder
  • 発売日: 2012/10/19
  • メディア: CD
 

 

Son Of My Father

Son Of My Father

  • アーティスト:Giorgio Moroder
  • 発売日: 2013/04/12
  • メディア: CD