まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「カモン・アイリーン(Come On Eileen)」デキシーズ・ミッドナイト・ランナーズ(1983)

 おはようございます。

 今日はデキシーズミッドナイト・ランナーズの「カモン・アイリーン」です。


Come On Eileen

Poor old Johnny Ray sounded sad upon the radio
He moved a million hearts in mono
Our mothers cried
And sang along who'd blame them?

You've grown, so grown
Now I must say more than ever
(Come on, Eileen) Toora Loora Toora Loo-Rye Aye
And we can sing just like our fathers

Come on, Eileen, I swear (well he means)
At this moment, you mean everything
You in that dress, my thoughts I confess
Verge on dirty
Ah come on, Eileen

These people round here, wear beaten down eyes
Sunk in smoke dried faces, so resigned to what their fate is
But not us,( no not us) we are far too young and clever
(Remember) Toora Loora Toora Loo-Rye-Aye
 I'll hum this tune forever

Come on, Eileen, I swear, he means
Ah come on, let's take off everything
Pretty red dress Eileen (Tell him yes)
Ah come on, let's ah come on, Eileen

Come on, Eileen taloo-rye-aye
Come on, Eileen taloo-rye-aye
Now you have grown, now you have shown, oh, Eileen
Said come on, Eileen taloo-rye-aye
You've grown So grown (Show, how you feel)
Now I must say more than ever
Things 'round here have changed
I said too-ra-loo-ra-too-ra-loo-rye-aye

Come on, Eileen, I swear (well he means)
At this moment, you mean everything
You in that dress, my thoughts I confess
Verge on dirty
Ah come on, Eileen

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 ”かわいそうなジョニー・レイの声がラジオから悲しげに響いてる

   彼はモノラルでも100万もの人の心を動かしたのさ

   僕たちの母さんたちも泣きながら 一緒に歌ったんだ 

  そんな彼女たちを誰が責められるっていうんだい?

 

   きみも大きくなった ずいぶん成長した

  だから今まで以上に言わなきゃな

 (さあ、アイリーン)Toora Loora Toora Loo-Rye Aye

   僕たちの父さんたちみたいに歌えるさ

 

    おいでアイリーン  誓うよ

    この瞬間 君がすべてなんだ

    ドレスを着た君を見ていると 

    僕の気持ちを告白すれば イケないことを考えそうさ

    ああ、おいでアイリーン

 

  この辺りの連中はみな 打ちひしがれた目をしてる

  それが煙で干からびた顔に 沈み込んでるんだ

  だから、あきらめて運命を受け入れているのさ

     だけど俺たちは違う、違うんだ

  俺たちはもっともっと若くて賢い

  (思い出せ)Toora Loora Toora Loo-Rye Aye

         アイリーン、僕はこの歌をいつまでも口ずさむよ

 

   さあ、アイリーン 僕は誓うよ 彼が言いたいことは、、

   さあ、全部脱いじゃおう かわいい赤いドレスも(彼にイエスと言うんだ)

         さあ、そうしようよ、さあ、アイリーン 

    かわいい赤いドレスを アイリーン(彼にイエスと言うんだ)

    さあ、そうしようよ、さあ、アイリーン、お願いさ

 

    さあ、アイリーン taloo-rye-aye

    さあ、アイリーン taloo-rye-aye

    もう君は成長した それがあらわれているんだ アイリーン

     さあ、アイリーン taloo-rye-aye

          きみも大きくなった ずいぶん成長した(どんな気持ちなんだい)

   今まで以上に君に言わなくちゃ

     この辺りも随分変わってしまった

           too-ra-loo-ra-too-ra-loo-rye-aye

 

          おいでアイリーン  誓うよ

       この瞬間 君がすべてなんだ

       ドレスを着た君を見ていると 

       僕の気持ちを告白すれば イケないことを考えそうさ

        ああ、おいでアイリーン     ”       (拙訳)

 

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  成長して女性らしくなった幼なじみに、気持ちが舞い上がってしまう男の子の歌なんですね。

 

 冒頭に出てくる”ジョニー・レイ”は、1950年代に非常に人気のあったアメリカのシンガー、デビュー曲「CRY」が全米1位に輝いています。

 フランク・シナトラ以降、エルヴィス・プレスリー以前で最も人気のあった白人歌手

  で、R&Rや白人R&Bシンガーの先駆けだったと評されています。

 ボブ・ディランが”その声とスタイルに完全に恋に落ちてしまった初めてのシンガーだった”と語り、リンゴ・スタービートルズの初期のころ”僕と他のメンバーが聴いているのは”チャック・ベリー、リトル・リチャード、ジョニー・レイだ”と言っていたほどで、アメリカだけでなくイギリスでも大変人気がありました。


Cry

 日本ではこの曲が有名かもしれません。


Walking In The Rain - Johnnie Ray

 失恋ソングの名手で女性ファンが大変多かったそうですから、この「カモン・アイリーン」の主人公のお母さんも聴きながら泣いていた、というわけなんですね。

 

  もうひとつ、この曲に頻繁に出てくるフレーズ”Toora Loora Toora Loo-Rye Aye”というのは、1914年に作られた「アイルランドの子守唄(Too-Ra-Loo-Ra-Loo-Ral)」という曲からきているようです。

 ビング・クロスビーが映画「我が道を往く」でこの曲を歌っているのが有名です

www.youtube.com

 バンドのフロントマンでソングライターのケヴィン・ローランドの両親がアイルランド人なのでこの曲をよく知っていて、「カモン・アイリーン」を作っている時に不意に口をついて出てきたそうです。

 

 

 さて、デキシーズミッドナイト・ランナーズは1978年にケヴィン・ローランドを中心に結成されたバンド。

 ケヴィンはそれ以前はパンク・バンドをやっていましたがシーンとそりが合わず、デキシーズではR&Bの要素を入れ、ロバート・デ・ニーロ主演の「ミーン・ストリート」にインスパイアされてイタリア系ストリート・ギャング風なファッションをまとっていました。

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 シングル「Geno」がイギリスで1位になるなど彼らは上々のスタートを切りましたが、その後独裁的にふるまうケヴィンとメンバーの不和が大きくなり、 ケヴィンともう一人のメンバー以外は全員抜け新たなメンバーになり、二枚目のアルバム制作時には、ケヴィンの発案でバイオリンを二人追加し、一枚目とは全く違うスタイルのバンドに生まれ変わります。

 

 新しいラインナップでの最初のシングルが失敗に終わり、ケヴィンはなんとかヒットする曲を作ろうとして生まれたのが、この「カモン・アイリーン」でした。

 彼らは大抵、リズム・パターンとコード進行を先に決めてからメロディ、歌詞を作っていたようで、この曲もまずリズムが先行で、イメージしたのはこういう感じだったそうです。


Concrete and Clay

 このリズムに合わせて、例の”Too ra loo ra〜”というフレーズが浮かんできて、これはいい感じだ、と彼は思ったそうです。

 

  「カモン・アイリーン」はイギリスだけじゃなくアメリカでもNO.1に輝きました。(その前の週の1位はマイケル・ジャクソン「ビリー・ジーン」翌週の1位は同じくマイケルの「今夜はビート・イット」でした)

 

 イギリスではその後もう少し活躍しますが、アメリカでは完全に”一発屋”で終わってしまいました。

 それだけこの曲の出来が良く、インパクトが強かったというわけでしょうが、もうひとつケヴィンがスタイルをコロコロ変える人で、この曲のスタイル(ケルティックなアレンジ)自体たまたまこの時期できたものに過ぎなかった、ということも大きな原因だったでしょう。R&Bとケルティックサウンドの融合にもっと腰をすえて取り組んでいればもっと、なんて、まあ彼はそういう性分じゃなかったのでしょうし、今更言ってもしょうがないのですけど、、。

 

 

この曲のリズム・パターンも「カモン・アイリーン」のヒントになっています。

popups.hatenablog.com

この曲のヒット後、バンドのホーン・セクションは脱退しこの作品に参加しています。

popups.hatenablog.com

同じ時期にケルティックサウンドをできシーズとは違ったアプローチで聴かせてくれたポーグス。

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