まいにちポップス(My Niche Pops)

令和元年初日から毎日更新中〜1日1ポップス。エピソード、歌詞の和訳、謎解き、マニアックな捜査、勝手な推理、などで紹介していきます。text by 堀克巳(VOZ Records)

「ニューヨークの夢(Fairytale of New York)」ザ・ポーグス(1987)

 おはようございます。

 今日はザ・ポーグスの「ニューヨークの夢」を。


The Pogues - Fairytale Of New York (Official Video)

 

 ” クリスマス・イヴだっていうのに

   トラ箱(泥酔者用留置場)にいたんだ

    そこにいた爺さんが言った 

   「来年のクリスマスを生きて見ることはねえだろうな」

    そして 「The Rare Old Mountain Dew 」を歌った

    オレは顔を背けて おまえの夢を見た

 

  大穴を引き当てたんだ 配当は18倍

  オレはなんか感じてたんだ オレたちは今年ついているって

  だから、ハッピー・クリスマス 愛しているよ ベイビー

  もっとよくなってゆくさ 二人の夢がみんな叶ったら

 

  あの人たちは酒場くらい大きな車を持っている

  あの人たちは黄金の川を持っている

  だけど風はあなたを通り抜けていって

  年老いたものに居場所はない

  凍てついたクリスマス・イヴに

  あんたがはじめて私の手をとったとき

  ブロードウェイが私を待っていると言ってくれた

 

  あんたはハンサム

  おまえはキレイだ ニューヨークの女王さ

  バンドの演奏が終わると 客はもっとやれと大声でわめいた

  スウィングするシナトラの曲に合わせて

  客たちはみな歌った

  オレたちは店の隅でキスをして

  夜通し踊ったんだ

 

  ニューヨーク市警の聖歌隊

  「Galway Bay」を歌っていた

   そしてクリスマスの鐘が鳴り響いていた

 

       この、ぐうたら!役立たず!

     おまえなんか ヤク中の尻軽ババアじゃないか

  点滴打ちながらベッドで死にそうになって

  この、クズ、ウジ虫

        ケチな、シラミのたかったホモ野郎

  ハッピー・クリスマス クソ男

     あんたとはもうおしまいにしてって 神様に祈るわ

 

  ニューヨーク市警の聖歌隊

  まだ「Galway Bay」を歌っていた

   そしてクリスマスの鐘が鳴り響いていた

 

  もっと違う男になれたかもな

  まあ、誰だってそうね

  あんたは私から夢を奪ったの

  初めてあんたのことを見つけた時に

  夢はオレが預かっていただけだよ、ベイビー

       オレのと一緒にしてあるのさ

  自分一人じゃ無理だから

  おまえのまわりにオレの夢を築いたんだ

 

  ニューヨーク市警の聖歌隊

  まだ「Galway Bay」を歌っている

   そしてクリスマスを告げる鐘が鳴り響いている

  

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It was Christmas Eve babe
In the drunk tank
An old man said to me, won't see another one
And then he sang a song
The Rare Old Mountain Dew
I turned my face away
And dreamed about you

Got on a lucky one
Came in eighteen to one
I've got a feeling
This year's for me and you
So happy Christmas
I love you baby
I can see a better time
When all our dreams come true

They've got cars big as bars
They've got rivers of gold
But the wind goes right through you
It's no place for the old
When you first took my hand
On a cold Christmas Eve
You promised me
Broadway was waiting for me

You were handsome
You were pretty
Queen of New York City
When the band finished playing
They howled out for more
Sinatra was swinging,
All the drunks they were singing
We kissed on a corner
Then danced through the night

The boys of the NYPD choir
Were singing "Galway Bay"
And the bells were ringing out
For Christmas day

You're a bum
You're a punk
You're an old slut on junk
Lying there almost dead on a drip in that bed
You scumbag, you maggot
You cheap lousy faggot
Happy Christmas your arse
I pray God it's our last

The boys of the NYPD choir
Still singing "Galway Bay"
And the bells were ringing out
For Christmas day

I could have been someone
Well so could anyone
You took my dreams from me
When I first found you
I kept them with me babe
I put them with my own
Can't make it all alone
I've built my dreams around you

The boys of the NYPD choir
Still singing "Galway Bay"
And the bells are ringing out
For Christmas day

 

Writer/s: Jem Finer, Shane Patrick Lysaght Macgowan

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  イギリス人の好きなクリスマス・ソングのランキングでは、マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」やワム!の「ラスト・クリスマス」と常に1位争うほどの、”国民的クリスマス・ソング”です。

 

 曲中に、ものすごい罵り合いが出てきますが、その中でもfaggot(ホモ)と言う言葉が問題になり、放送禁止にもなったことがあるそうですが、今ではクリスマス・シーズンのイギリスでは必ず頻繁に耳にするようになっているそうです。

(今だに、この罵り合いのくだりは論議の的になるらしく、今年も作者が弁明している記事がありました)

 

 

 ザ・ポーグスアイルランド人のボーカリスト、シェイン・マガウアン を中心に1982年にロンドンで結成されたバンドです。パンクとケルト音楽を融合させた”ケルティック・パンク”で知られています。

  デビュー曲は「ダーク・サイド・オブ・ロンドン」。


Dark Streets of London

  ”夏のそよ風のなか歩くのっていいな

         枯れた古い木々に沿って ダリング・ロードを下ってゆく

   そして友達と一杯やるんだ ハマースミスブロードウェイで

         懐かしき 汚くて愉快で酔っ払った遠い遠い日々

  <中略>

  冬がやってきて 

  クリスマスの時期のこの通りの寒さには耐えられない

  オレは地獄に落ちたようなもんだ

  ロンドンの暗い通りをふらつくだけの小銭さえ持っちゃいない” (拙訳)

 

  デビュー曲の時点ですでに、「ニューヨークの夢」と重なるような、古き良き日々と夢破れた今現在とのコントラストを歌にしていたんですね。

 

 さて、この「ニューヨークの夢」は彼らの9枚目のシングル。

 歌の中に、古いアイルランドの曲が2曲登場します。

 

 まずは”トラ箱”に入れられたジイさんが歌う「The Rare Old Mountain Dew」。


Rare Ould Mountain Dew

” Mountain Dew ”とはウィスキーのこと。かつて違法に酒を作る時に、警察や教会の目が届かないように山に行って行っていたからそう呼ばれるようになったそうです。

 酔っ払いの爺さんが美味いウイスキーを飲む歌を歌っていたというわけです。

 

 もうひとつは、ニューヨーク市警の聖歌隊が歌っていた「Galway  Bay」。1947年に書かれたものですが、ビング・クロスビーが歌ったことで大ヒットしました。ちなみに彼はアメリカ生まれですが、母方がアイルランド系です。


Bing Crosby - "Galway Bay"

 ”あなたがもし海を渡ってアイルランドに行くことがあれば

   ひょっとしたら、1日の終わりに

   腰掛けてクラド(地名)の上にあがった月や

   裸足の少年たちが遊ぶのを見るかもしれません

 

   鱒が泳ぐ小川のさざめきや 女性たち草原で推し草を作る音を

   また聞きながら

      小屋の暖炉のそばに座って    ゴールウェイ湾に沈む太陽をながめながら”(拙訳)

 

 ゴールウェイ湾アイルランドの西にある大きな入江。実は「The Rare Old Mountain Dew」にも出てきます。アイルランド移民の人たちが、望郷の念を強く感じる場所なのかもしれません。

 

 僕が注目したのは、この2曲の曲調です。「Galway Bay」は美しいバラードで「The Rare Old Mountain Dew」はケルティックらしい曲調です。

 そう「ニューヨークの夢」の主題のバラードのところは「Galway Bay」と展開部のケルティックな感じは「The Rare Old Mountain Dew」と”同期”しているように感じます。

 曲とその曲が引用している曲とが符合する、という実に巧みな仕掛けが施されているわけです。

 

 曲を書いたのはバンドのリード・シンガーのシェーン・マクゴワンとバンジョー奏者のジェム・フィナー。

 クリスマスの曲を書いていたフィナーニ、運に恵まれないカップルのことを歌詞にすることを提案したのは彼の妻だったそうです。

 また、プロデューサーのスティーブ・リリーホワイトは演奏を録音したテープを家に持ち帰り、妻のカースティ・マッコールにラフ・ヴォーカルを録ってみたところ、彼女の声があまりにも良く、バンドも気に入ったため、そのまま彼女を使うことになったと言われています。

 

 ちなみに、この「ニューヨークの夢」が自身の代名詞となる曲となったシェーン・マクゴワンの誕生日は12月25日なのだそうです。

 

 

1987年にイギリスの国民的音楽番組「Top Of The Pops」に出演した時の映像。


Fairytale of New York (feat. Kirsty MacColl) [Top of The Pops Dec 1987]

 

エド・シーランとアン・マリーによるカバー。


Ed Sheeran & Anne-Marie - Fairytale Of New York in the Live Lounge

 

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