おはようございます。
今日は21世紀に入って、日本でいくつかのCMに使われて再び脚光を浴びたこの曲です。
"誰かに愛されることはめずらしいことじゃない
誰かと楽しむことだってめずらしくはない
でも、君が誰かと一緒に歩いてるところを見たら
僕が泣いたっておかしくない 死にたくなるよ” (拙訳)
この曲はサンディ・ショーというイギリスの女性シンガーのために書かれたものでした。彼女は1964年にバート・バカラックの「(There's) Always Something There To Remind Me」(邦題は「恋のウェイトリフティング」!)で大ヒットを飛ばしたばかりでした。
Sandie Shaw - Always Something There To Remind Me (1964)
しかし、この曲のデモを聴いた彼女は”誰が歌っているにしろ、この曲はこの歌手のものよ”と言って断ったのだそうです。それだけこの曲と歌手は見事にハマっていたんですね。
*ちなみに、デモの歌が良過ぎて歌手が歌うのを拒んでしまったということは、日本でも”Unusual”ではありません。なので、今デモ音源を歌ってもらうときには上手すぎず、個性が強過ぎない人に依頼するのが”Usual”になっています。
さて、このデモを歌っていたのがトム・ジョーンズです。
ウェールズ出身の彼はトミー・スコット&セネターズというグループで歌っていたところをマネージャーのゴードン・ミルズに見出され、ウェールズからロンドンに移ります。
彼の本名がトーマス・ジョン・ウッドワードだったことと、当時有名な小説を映画化した「トム・ジョーンズの華麗な冒険」が大ヒットしていたことから、芸名を”トム・ジョーンズ”にしました。
そして二枚目のシングルがこの「よくあることサ」で、全英1位、全米10位の大ヒットになり、彼は一躍スターになります。
この曲は、レス・リードとマネージャーのゴードン・ミルズの共作。ゴードンは作詞作曲もできました。アレンジはレス・リード。
ちなみに、この曲のレコーディングにレッド・ツェッペリンのジミー・ペイジが参加していたと言われていて、彼のWEBのセッションの一覧にも掲載されているのですが、レス・リードはそれを否定しているので真偽は定かではありません。
しかし、このレコーディングには、別の超大物が参加していました。まだデビュー前のエルトン・ジョンです。
トム・ジョーンズの使っていたキーボーディストが参加できなくなり、ドラマーのクリス・スレイド(1970年代にマンフレッド・マンズ・アース・バンドのメンバーになる人)が慌てて、隣のコーヒーショップにいたエルトンを口説いて参加させたと言われています。
その後トム・ジョーンズはヒットを連発し、ショービジネスの超大物として君臨することになります。
ちなみに、僕の子供の頃の記憶では、当時日本で一番流行っていた彼の曲はこれだと思います。日本の歌手がTVでトムのモノマネで歌っていたくらいですから、知名度は高かったのだと思います。
田原俊彦の「抱きしめてTONGHT」はこの曲の歌謡ユーロビート版と捉えていいでしょうね。
1970年代以降彼はヒット曲には恵まれなくなりますが、唯一無二の”パワフルなボーカル”は度々再評価されることになります。
1988年、プリンスの「Kiss」をアート・オブ・ノイズと一緒にやっています。
Tom Jones and Art Of Noise - Kiss (Official Video)
そして日本でも大ヒットした1994年の「恋はメキメキ(If I Only Knew)」
日本にも、尾崎紀世彦とか松崎しげるとか、男っぽいパワフルなシンガーはいましたけど、もう若い人からはそう言う人は出てきてませんね。みんなキーが高くてナイーヴです。
トム・ジョーンズみたいな人は”絶滅種”かもしれないですね。