まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「恋するチャック(Chuck E.'s In Love)」リッキー・リー・ジョーンズ(1979)

 おはようございます。

 今日はリッキー・リー・ジョーンズの「恋するチャック」です。

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How come he don't come and P.L.P.with me
Down at the meter no more?
And how come he turn off the TV
And hang that sign on the door?
Well, we call, and we call
"How come?", we say
Hey, what could make a boy behave this way, yeah?
Well, he learned all of the lines now
And every time
He don't, uh, stutter when he talks
And it's true, it's true
He sure has acquired
This kind of cool and inspired sort of jazz when he walks
Where's his jacket and his old blue jeans?
If, if this ain't healthy, it is some kinda clean

But that means that Chuck E.'s in love, my, my
Chuck E.'s in love, love, love, love
Chuck E.'s in love, uh-huh
Chuck E.'s in

I don't believe what you're saying to me
This is something that I've got to see
Is he here?
I look in the pool hall
But is he here?
I look in the drugstore
But is he here?
No, he don't come here no more

 

Well, I tell you what
I saw him
He was sittin' behind us
Down at the Pantages
And whatever it is
That he's got up his sleeve
Well, I hope it isn't contagious
What's her name?
Is that her there?
Oh, Christ, I think he's even combed his hair
And is that her?
Well, then, what's her name?
Oh, it's never gonna be the same
That's not her
I know what's wrong
'Cause Chuck E.'s in love with the little girl singing this song
And don't you know

Chuck E.'s in love, yeah, yeah
Chuck E.'s in love, love, love, love
Chuck E.'s in love, my, my
Chuck E.'s in

Chuck E.'s in love
Chuck E.'s in love
He's in love, love, love with me

 

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なんで彼は来なかったのかな?

パーキングメーターのとこで

もう寄りかからせてくれないのかな?

なんでテレビを消して

ドアにあんなサインをぶらさげたのかな?

私たち電話したよ、電話したのよ

「どうして?」って

ヘイ、何が男の子にあんなふるまいをさせたの?

 

今じゃ、彼は自分のセリフは全部覚えちゃって

いつだってしゃべるときは、どもったりしない

それから、これはホントよ、ホント

クールな雰囲気をモノにちゃって

歩くときなんか、ジャズかなんかに影響された感じよ

ジャケットと古いジーンズはどこに行っちゃったのかしら?

もし、もしこれがヘルシーとは違うなら、こぎれいとでもいうのね

だけど、それはチャック・Eは恋してるってことなんだわ

チャック・Eは恋してるのよ チャック・Eは恋してるのよ

チャック・Eは、、


あなたが私に言っていることなんか信じないわ

これはちゃんとみて確かめるべきね

彼はここにいる?

ビリヤード場を見てみる

彼はここにいる?

ドラッグストアをのぞいてみる

彼はここにいる?

いや、ヤツはもうここに来ちゃいない

えっと、あのね

私彼を見たの

パンテージ・シアターで私たちの後ろに座っていたわ

それが何であれ、何か隠してたの

何か変な影響受けたんじゃなければいいけど

彼女の名前はなんだっけ?

そこにいるのは彼女?

ああ、神様 彼ったら髪をとかしちゃって

あれが彼女?

えっと、それでなんて名前なんだっけ?

ああ、もう昔のままじゃないのね

彼女じゃないわ

何がおかしいのか私にはわかる

だって、チャック・Eはこの歌を歌っている

女の子に恋してるのよ

わからない?


チャック・Eは恋してるのよ チャック・Eは恋してるのよ

               (拙訳)

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 「1977年当時、ジョーンズはロサンゼルスの「トルバドール」で活動するフォークシンガーだった。”このチャック・Eって男がクラブのキッチンで働いていて、そこで知り合ったの”と彼女は振り返る。”それから少しして、トムがそこで私を見かけて、彼とチャック・Eと私は一緒につるむようになったの”。彼らは、同じユーモアと冒険心の感覚を持った、ビート・トリニティ(ビートニックの3人組?)ような関係を結んだ。「彼女とウェイツと僕は、ビバリーヒルズの家々の庭に置いてあったローン・ジョッキー(註:黒人の騎手の像)を盗んで、一緒に貨物列車に飛び乗ったものさ”とワイスは語っている。」

 (Independent  11 February 2005)

 

 チャック・Eは実在の人物で、リッキー・リー・ジョーンズとトム・ウェツと3人で一緒に行動していたんですね。

  この曲に出てくるP.L.Pとは古いアメリカのスラングで”Public Leaning Post”の略なのだそうです。友人が他の友人に寄りかかるときに使われるようです。ぐだぐだとつるんでる仲間というニュアンスを出すために使ったのかもしれないですね。

 

 「ある夜、ウェイツにワイスから電話がかかってきた。ワイスはデンバーにいて、ある女性(たまたま遠い従姉妹だった)に夢中なんだと説明した。電話を切ったウェイツは、ジョーンズに「Chuck E's In Love」と伝え、彼女はそれをタイトルにしたのだ」

 (Songfacts)

   当時、トムとリッキーは付き合っていたようです。

 

  さて、"チャック・E"ことチャック・E・ワイスは、両親がレコード店を経営していたこともあって、ブルースに夢中になりミュージシャンとしても活動し、ドラマーとしてライトニン・ホプキンスのバックをつとめたこともあったそうです。

 

 この曲のヒットがきかっけになったのでしょう、1981年にはソロ・アーティストとしてデビューしています。

 

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  説明が前後してしまいましたが、この曲を作り歌っているリッキー・リー・ジョーンズはシカゴで生まれ、祖父母がボードヴィリアン、父親はシンガー、ソングライター、画家、トランペット奏者で、全米各地を転々とするという環境で育ちました。

 19歳の時に一人でLAに出て来て、コーヒーハウスで歌ったり「トルヴァドール」に出入りするようになります。

  

  リトル・フィートローウェル・ジョージが彼女の書いた「Easy Money」という曲を気に入って取り上げたことが、デビューにつながったそうです。

(リリースの時期は同じくらいでしたが)

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 そしてレコード会社、ワーナー・ブラザーズきってのプロデューサー、レニー・ワロンカーとラス・タイトルマンが、最高のミュージシャンを集めレコーディングしました。

 ドラムスはスティーヴ・ガッド -、アンディ・ニューマーク -、ジェフ・ポーカロ 、鍵盤にはニール・ラーセン、ドクター・ジョンランディ・ニューマン、ギターはジー・フェイトンなど、ベースはウィリー・ウィークス、コーラスにマイケル・マクドナルドレスリー・スミスなどなど、すごい布陣です。

 

 超一流のメンツが、ボヘミアン風の新人女性歌手のバックをつとめている、それがこの作品の妙でもあります。

 

 「恋するチャック」は全米4位、アルバム「浪漫」は3位、と彼女は一気にスターになります。アメリカの女性ソロ・アーティストとしてはこの当時最も鮮烈なデビューだったと言ってもいいでしょう。

 

 その後彼女は、デビュー時を超える成功を収めることはできませんでしたが、その後も息長く、今も現役アーティストとして活躍しています。

(個人的には、アルバムとしては次の「パイレーツ」のほうが好きでした、、)

 

 最後は、2019年の彼女のパフォーマンスを。

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Chuck E's In Love

Chuck E's In Love

  • Warner Records
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彼女のバックを務めたニール・ラーセンとバジー・フェイトンのバンド

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この人も彼女のバックを。ランディ・ニューマン

popups.hatenablog.com

ドゥービーのマイケル・マクドナルドも彼女のアルバムに参加しています

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