おはようございます。
今日もまたまた雨の歌。ランディ・ニューマンの代表作「悲しい雨が」。1971年発表の「Randy Newman Live」に収録されているヴァージョンを。
I Think It's Going to Rain Today (Live)
Broken windows and empty hallways
A pale dead moon in the sky streaked with gray
Human kindness is overflowing
And I think it's going to rain today
Scarecrows dressed in the latest styles
With frozen smiles to chase love away
Human kindness is overflowing
And I think it's going to rain today
Lonely
Lonely
Tin can at my feet
Think I'll kick it down the street
That's the way to treat a friend
Bright before me the signs implore me
To help the needy and show them the way
Human kindness is overflowing
And I think it's going to rain today
*************************************************************
”壊れた窓 誰もいない廊下
空には 灰色の縞模様のはいった 蒼白く死んだような月
人間の優しさがあふれているよ
だから今日は雨が降ると思う
流行りのスタイルで着飾った案山子は
愛を追い払う凍りついた笑みを浮かべる
人間味がであふれている
だから今日は雨が降ると思う
寂しい 寂しい
僕の足元にある空き缶
通りで蹴とばそうかな
友達を扱うみたいにね
目の前で光っているサインが僕に懇願する
貧しい人々を助け 彼らに道を示しなさいと
人間の優しさが溢れている
そして僕は今日雨が降ると思う ” (拙訳)
*************************************************************
荒涼とした、あるいは空疎な光景を描いた後に
Human kindness is overflowing
And I think it's gonna rain today
「人間の優しさが溢れている そして僕は今日雨が降ると思う」
と彼は歌っていて、そこが静かにでも強く心に残るわけです。
言葉だけ追えばそこに皮肉や諦念を感じるわけですが、メロディと一緒になることで、別の情感が生まれ、拭い去れない人間への愛しさみたいなものまで滲み出てくるようにさえ思えます。
この曲について彼はこのように語っています。
「この曲は1964年か63年に書いたんじゃないかな。歌い出しの最初の二つのコードをまず思いついた。僕はこういう普通でありふれたタイプのコードがずっと好きなんだよ。まさに、スティーブン・フォスターっていう感じの。
それから、(曲作りで)なにかひとつのスタイルを手にしたら、それを結晶化させていくんだ。曲はエモーショナルで、美しくさえあるけど、歌詞はそうじゃない。
正直に本音を言えば、この曲は僕を困惑させるんだ、その暗さのせいで、そして、未熟なのに気取っていると思えるし、感傷的だ。だけど、ジュディ・コリンズのヴァージョンは素晴らしかったし、UB40のも面白かった。バーブラ・ストライザンドがレコーディングした時には僕がピアノを弾いたんだよ。これは本当に良かった。彼女はとんでもない声の持ち主だよ」
(「ローリングストーン」誌 2017年9月15日)
彼は振り返って、この歌詞を暗く、未熟なのに大人ぶった(sophomoric)、感傷的だと感じているわけです。
この曲を書いた時に20歳か21歳だったわけで、普通の人はその詩才に舌を巻いてしまうわけですが、当人にしたら未熟に思えてしまうんですね。
しかし、こういう歌詞は彼が20歳くらいだったからこそ書けたんじゃないかと僕には思えるんです。
ある種の創作には、大人ぶった、老成した若者だけにしか描けない世界というのがあって、それは特に文学とか歌の歌詞においては、すごく魅力的なものなんじゃないかと。
表面はシニカルだっり、醒めていても、その裏側にはどうしても若く純粋な感情が見えてしまうわけで、そのことによって、よりリアルでじわっと伝わってくるというか。
ある程度大人になってから、皮肉や諦念を描いたものは、裏側に流れる”潤い”のようなものがなくなってしまうように思うのです。
まあ、それは僕の個人的な感覚なので置いておくとして、メロディに関して彼はスティーヴン・フォスターの名前を出しているところが興味深いところです。
やはり彼はアメリカの伝統的なソングライティングに根ざしていて、それがアメリカ人の郷愁を誘うわけですね。
彼の作品で世界で一番有名なのは、映画「トイ・ストーリー」の「君はともだち」だと思いますが、あの曲にもそういう”古き良きアメリカ”的なものを強く感じます。
この「悲しい雨が」を最初に取り上げたのは、イタリア系アメリカ人のシンガー、ジュリアス・ラローザのようです。1966年の9月で、その年の11月にはランディも絶賛したジュディ・コリンズのカバーがリリースされました(アルバム「In My Life」)。
Judy Collins - I Think It's Going to Rain Today
1968年にはランディが自身のデビュー・アルバムでセルフカバーし、ダスティ・スプリングフィールドのカバーもやはり評判になりました。
Randy Newman - I Think It's Going To Rain Today
Dusty Springfield - I Think it's Going to Rain Today
ランディがピアノを弾いたという、バーブラ・ストライサンドのヴァージョンは1971年のアルバム「STONY END」のためのものでしたがお蔵入りになり、2012年の未発表曲集アルバム「Release Me」で初めて披露されました。
NEW! Barbra Streisand - "I Think It's Going To Rain Today"
ランディ自らピアノを弾いたものはこれ以前にもありました。クロディーヌ・ロンジェ。以前にランディ作の「スノウ」をこのブログで紹介しました。
彼女は「悲しい雨が」も歌っていますので、最後にどうぞ。
Claudine Longet - I Think It's Gonna Rain Today