まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「マイ・エヴァ・チェンジング・ムーズ(My Ever Changing Moods)」ザ・スタイル・カウンシル(1984)

 おはようございます。

 今日はスタイル・カウンシルマイ・エヴァ・チェンジング・ムーズ」を。


The Style Council - My Ever Changing Moods

 

  ”陽の光が月明かりに変わると 僕は絶好調

  うまくいっているものだけ賞賛し あとのものはじっと見るだけ

  暖かさの前の冷たさ 嵐の後の静けさ

     暖かくなる前は冷たくて 荒れた後にはおだやかになる

     同じ状態でいたいんだよ これを自分の糧にして

  だけど巻き込まれてしまうのさ つむじ風と僕の変わり続ける気分に

 

  苦さが砂糖に変わる 誰かが自分の言いなりにさせようとしている

     だけど、甘く素敵な日なんて 僕にはすぐには来ない

     沈黙の前の静けさ 爆風の後の風

  音は消えてゆき 風は勢いをなくす

  僕たち一緒に動けたらいいな    今度はボスたちが訴えてきた

  だけど飲み込まれてしまうのさ 雑然と意した状態と変わる続ける気分に

 

  涙は子供たちに変わる 彼らには決してなかったんだ

  誰かの悪意によって 彼らが罰を受ける そんな罪を犯す時間は

  憎しみの後の愛   手遅れになるまで放っておいた愛

  憎しみの後の愛   手遅れになるまで放っておいた愛

  ある日目覚めたら 誰もが心動かされていたらって願う

     だけど飲み込まれてしまうんだ 雑然とした状態と移ろい続ける気分に

 

     悪は偶像になり   民衆は列を作ってゆく

  僕に選択できるなら どちらに走ってゆくかはわかっている

     過去は知識であり 今は僕らの過ちでできている

  そして未来、僕たちはいつだって出発するのが遅すぎるのさ

 

  僕たちが覚醒し 気づくことを願う

    この変わり続ける気分が巻き起こす混乱をあおるやつらには

  真実なんてないってことを            ” (拙訳)

 

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Daylight turns to moonlight - and I'm at my best
Praising the way it all works - gazing upon the rest
The cool before the warm
The calm after the storm
The cool before the warm
The calm after the storm
I wish to stay forever - let it this be my food
But I'm caught up in a whirlwind and my ever changing moods


Bitter turns to sugar - some call a passive tune
But the day things turn sweet - for me won't be too soon
The hush before the silence
The winds after the blast
The hush before the silence
The winds after the blast
I wish we'd move together - this time the bosses sued
But we're caught up in the wilderness and an ever changing mood


Teardrops turn to children - who've never had the time
To commit the sins they pay for through another's evil mind
The love after the hate
The love we leave too late
The love after the hate
The love we leave too late
I wish we'd wake up one day - an' everyone feel moved
But we're caught up in the dailies and an ever changing mood

 

Evil turns to statues
And masses form a line
But I know which way I'd run to if the choice was mine
The past is knowledge
The present our mistake
And the future we always leave too late
I wish we'd come to our senses and see there is no truth
In those who promote the confusion for this ever changing mood

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 1970年代後半のパンク・シーンの中でも人気の高かった”ザ・ジャム”の中心メンバー、ポール・ウェラーザ・ジャムを解散させ新たに結成したのが”スタイル・カウンシル”でした。

 ザ・ジャムはパンク・バンドとはいえ、セックス・ピストルズやクラッシュとは違い、キンクスザ・フーなどの影響受けて、”モッズ”(1950年代〜1960年代にかけてイギリスで流行した音楽、ファッションのスタイル。細身の三つボタンスーツ、ボタンダウン・シャツに細いネクタイ、ミリタリー・パーカー(M-51)などが特徴)のスタイルを打ち出していました。

 

 ”モッズ”はアメリカのR&Bを愛好するというのが大きな特徴でしたが、ザ・ジャムも初期からライヴやアルバムにそういったレパートリーも取り上げていました。そして、ポール・ウェラーの”R&B志向”が年々強く作品に反映されていき、ついにそっちのほうに思い切って舵を切ったというのが”スタイル・カウンシル”だったわけです。

 

 ザ・ジャム後期の大ヒット曲「悪意という名の街(Town Called Malice)」(1982年 全英1位)。モータウン調ですね。この時代、多くのアーティストがモータウン調の曲をリリースしていました。

www.youtube.com

 

  スタイル・カウンシルでポールの相棒になったのがキーボーディストのミック・タルボットでした。

 彼は昨日このブログに登場したデキシー・ミッドナイト・ランナーズに4~5ヶ月の間でしたが在籍していたこともあります(「カモン・アイリーン」より2~3年前)。

    ポールはやりたい音楽の方向性ははっきりしていましたが、ソロでやれる自信がもてず自分を勇気づけてくれるようなパートナーがほしくて、彼に声をかけたようです。

 ミックはこう語っています。

 

 「最初にポールはある程度のアイディアを持っていた。2人で長いミーティングをして、音楽のことはもちろん、アートワーク、衣服、ビデオを作るならどんな風に録るとか、いろんな新しいアイディアを話し合った。驚いたことに、僕たちは同じ音楽だけではなく、同じ本も同じ映画も好きだということがわかってね。そんな風にアイディアを出し合って、それからそれをミックスして、僕たちが取り組んでいた音楽の最初の段階を作ったと言えるかな」

                 (「ザ・コンプリート・ポール・ウェラー」)

 

 スタイル・カウンシルの大きな魅力は、その音楽性と非常にマッチした、センスのあるファッション、ジャケットのアートワークなどのビジュアル・イメージで、日本で彼らが大人気になった大きな要因だったと僕は考えています。その後の”渋谷系”にもはっきりと影響を感じ取ることができましたし。

 そういったビジュアル・イメージも結成当初から話し合われていて、二人の好みは一致していたんですね。

 

  さて、この「マイ・エヴァ・チェンジング・ムーズ」は1984年に全英5位、全米29位になっています。

 軽快で洗練されたサウンドですが、歌詞には社会への怒りがにじみ出ています。

 この時期のインタビューでポールは、世の中の人々のなんでも容易に受け入れてしまおうという態度に腹が立ってしょうがない、と語っていて”変わり続けるムード”というのは、政治の間違ったことでも受け入れ対応しようとする受動的な姿勢、という意味も含まれているのかもしれません

 

  スタイル・カウンシルはこの後、代表作であるセカンド・アルバム「アワ・フェイヴァリット・ショップ」でそのスタイルを極めると、いろんな好みが一致しているポールとミックは、ともにアニタ・ベイカーやルーサー・ヴァンドロスといった当時の主流のアメリカのR&Bにどんどん傾倒してそれが作品にも現れていき、それがイギリスでのにんきの失速へと繋がっていったように思えます。

 

 日本でもそうですが、本格的な”濃い”R&Bは聴かなくても、R&Bを取り入れてミックスされた音楽は好きという人はけっこう多くいて、スタイル・カウンシルはまさにそういったリスナーにドンピシャだったわけですが、より本格志向になると、そういうリスナーが離れていってしまった、ということなのかもしれません。

 

 

 最後に、先月発売された彼らのアンソロジー「ロング・ホット・サマーズ:ストーリー・オブ・ザ・スタイル・カウンシル」に収録されている、この曲のデモヴァージョン。

ポールの歌とミックのキーボードというのが、彼らの基盤であることが伝わってきます。


My Ever Changing Moods (Demo)

 

カフェ・ブリュ

 

 当時、日本では彼らのこの曲も人気でしたね。

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