まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ブレイクアウト(Breakout)」スウィング・アウト・シスター(1986)

 おはようございます。

 今日はスウィング・アウト・シスターの「ブレイクアウト」です。

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And breakout

When explanations make no sense
When every answer's wrong
You're fighting with lost confidence
All expectations gone

The time has come to make or break
Move on, don't hesitate
And breakout

Don't stop to ask
And now you've found a break to make at last
You've got to find a way
Say what you want to say
Breakout

When situations never change
Tomorrow looks unsure
Don't leave your destiny to chance
What are you waiting for
The time has come to make your break
Breakout

 

Don't stop to ask
And now you've found a break to make at last
You've got to find a way
Say what you want to say
Breakout...

Don't stop to ask
Now you've found a break to make at last
You've got to find a way
Say what you want to say
Breakout

Some people stop at nothing
If you're searching for something
Lay down the law
Shout out for more
Breakout and shout
Day in day out
Breakout

Breakout

Don't stop to ask
And now you've found a break to make at last
You've got to find a way
Say what you want to say
And breakout

Don't stop to ask
And now you've found a break to make at last
You've got to find a way
Say what you want to say
And breakout...

(Don't) Lay down the law (stop)
Shout out for more (to ask)
Breakout and shout day in day out
Ooh, breakout

Breakout

Breakout

Lay down the law
Shout out for more
Breakout and shout day in day out

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説明が意味をなさなくて

答えが全部間違っているとき

あなたは自信を失ったまま戦っているの

期待したことはみんな消えてしまう

 

運命の分かれ道に来た

動いて、ためらっちゃダメ

そして、突破するの

 

立ち止まってたずねないで

今あなたはついに突破口を見つけたの
道を見つけて 言いたいことを言うのよ

突破するの

状況が一向に変わらなくて

明日は不確かなとき

運を天にまかせちゃダメ

何を待っているの?

運命の分かれ道が来たの

突破して

 

立ち止まってたずねないで

今あなたはついに突破口を見つけたの
道を見つけて 言いたいことを言うのよ

突破するの

 

立ち止まってたずねないで

今あなたはついに突破口を見つけたの
道を見つけて 言いたいことを言うのよ

突破するの

 

何もないのにやめる人もいるけど

もしあなたが何かを探しているなら

強く言うの もっと叫ぶの 

突破して叫ぶの

明けても暮れても 突破するのよ

立ち止まってたずねないで

今あなたはついに突破口を見つけたの
道を見つけて 言いたいことを言うのよ

突破するの

立ち止まってたずねないで

今あなたはついに突破口を見つけたの
道を見つけて 言いたいことを言うのよ

突破するの

 

強く言うの もっと叫ぶの 

突破して叫ぶの

明けても暮れても 突破するのよ、、、   (拙訳)

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 レコード会社の契約解除目前に、落馬事故での瀕死の体験を歌詞に込めたまさに起死回生の1曲

 

  曲を初めて聴いて強い印象が残ったときは、不思議なことに、その時の記憶がずっと残っていたりしますよね。

 この曲を初めて聴いたときのことも、なぜか今も覚えていて、渋谷の「CISCO」という輸入盤店でした。お店でかかっていて”NOW PLAYING"のところにこの曲の12インチが置いてあったので、それと同じものを探して急いで買って帰りました。

  ジャケットのデザインも曲とよくマッチしていました。

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 すごくポップでキャッチーで、当時としてはすごくおしゃれな曲でもあったので、歌詞などまったく気にせずに、僕は”雰囲気で”聴いていたのですが、あらためて歌詞をチェックしてみると、かなりストレートなメッセージ・ソングでちょっと驚きました。

 

 

  スウィング・アウト・シスターはキーボードのアンディ・コーネル(Andy Connell)、ドラムのマーティン・ジャクソン(Martin Jackson)、それに後から加わったヴォーカルのコリーン・ドリューリー(Corinne Drewery)のトリオで1984年に結成されています。グループの名前は、ジャズ・クラブを舞台にした古いミュージカル・コメディ映画『Swing Out, Sister』(1945年)からとったそうです。

  

  アンディとマーティンはともにマンチェスター出身で、それぞれ”A Certain Ratio”、”Magazine"というポスト・パンクのバンドで活動していました。その後、二人でエレクトロのトラックを作り名が知られるようになり、ボーカルが必要になったときに知り合ったのがコリーンでした。

 彼女は幼い頃から音楽に慣れ親しんでいましたが、ファッション・デザイナーを目指していて、モデルもやっていたそうです。その合間に都会的なジャズ・バンドとして日本でも知名度のあった”ワーキング・ウィーク”のセッション・シンガーの仕事をしていて、それで彼らと出会ったようです。

 

  デビュー曲は「ブルー・ムード」という曲でした。

www.youtube.com

 この曲はまったく売れず、コリーンは自身のファッション・ブランドをやり、アンディとマーティンはそれぞれ別に活動していたそうです。

 ある日彼女のところに、レコード会社からすぐに新曲のデモを送ってこないと契約を切る、という電話がかかって来ます。たったシングル二枚という契約だったんですね。

 

 しかし、アンディは彼がもともといたバンド”A Certain Ratio”でツアーに出かけていて、マーティンはマンチェスターにいて、当時はインターネットも携帯電話もなかったので彼らと連絡を取ることはできませんでした。

 彼女の手元にあったのは”Breakout"のデモのトラックだけでした。1曲通して歌詞を書いたことさえなかったのですが、切羽詰った彼女はなんとかしようと決意します。

 

「録音するものは何もなかったんだけど、部屋にはウォークマンとカセットプレーヤーがあったので、それで録音を始めました。すると、ルームメイトが「うるさい! 朝、仕事に行かなきゃいけないの、私は寝ようとしているのよ!」と言ってきた。それで、彼女が仕事に行くまで待って、それから頭の中にあるものを思い出して、それを歌ったわ。そして、宅配便のバイクでカセットをフォノグラム(レコード会社)の担当者に持っていってもらうと、ラッキーなことに気に入ってもらえたの」

 ( SONGWRITING ,14 July 2018 )

 

 その前に彼女は落馬事故で頭蓋骨を骨折し1週間意識不明になり、その後3ヶ月間の療養生活を送っていたことがあったそうです。

 その療養期間中に書きとめた言葉がこの曲の歌詞にも使われたようです。もともとは事故によって自分の頭がおかしくなっていないかどうかを確かめるため、言わばリハビリ目的で書いたものでした。

 

「パニックになっていたから、分析しすぎないで歌詞が出てきたのだと思う、『自分の知っていることを書け( Write what you know about)という言葉を思い出して、自分の状況やそのときの気持ちを書いたわ。事故にあって死にそうになる経験をしたことで、ファッションデザイナーに戻りたくないという自分の本心に気づいて、自分のやりたいことをやることが自分には必要なんだと決心したの」

 ( SONGWRITING ,14 July 2018 )

 

 そしてこの曲は、子供向けのTV番組に彼女が出演したことをきかっけにじわじわチャートを上ってゆき、最終的に全英4位、全米7位の大ヒットになりました。

 

 ”おしゃれなバンドのおしゃれな代表曲”というイメージとはまったく逆で、まったく余裕のないギリギリまで追い込まれた状況からまさにブレイクアウト(突破)した歌だったんですね。

 そして、この歌詞は瀕死の経験をした彼女が、人生の岐路に立つ自分自身に投げかけたリアルな言葉だったのです。

 

 最後にこの曲が収録されたアルバム「It's Better To Travel」から「ブレイクアウト」に続くシングルを3曲続けて。

 

「Surrender」(全英7位)

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「Twilight World」(全英32位 全米31位)

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「Fooled By Your Smile」(全英43位)

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It's Better to Travel

It's Better to Travel

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