まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「クレイジー・フォー・ユー (Crazy for You)」 マドンナ(1985)

 おはようございます。

 今日はマドンナの「クレイジー・フォー・ユー」です。


Madonna - Crazy For You (Official Music Video)

 

Swaying room as the music starts
Strangers making the most of the dark
Two by two their bodies become one

I see you through the smokey air
Can't you feel the weight of my stare
You're so close but still a world away
What I'm dying to say, is that

I'm crazy for you
Touch me once and you'll know it's true
I never wanted anyone like this
It's all brand new
You'll feel it in my kiss
I'm crazy for you, crazy for you

Trying hard to control my heart
I walk over to where you are
Eye to eye we need no words at all

Slowly now we begin to move
Every breath I'm deeper into you
Soon we two are standing still in time
If you read my mind, you'll see

I'm crazy for you
Touch me once and you'll know it's true
I never wanted anyone like this
It's all brand new
You'll feel it in my kiss  You'll feel it in my kiss
Because I'm crazy for you
Touch me once and you'll know it's true
I never wanted anyone like this
It's all brand new
You'll feel it in my kiss
I'm crazy for you
Crazy for you


It's all brand new, I'm crazy for you
And you know it's true
I'm crazy, crazy for you
It's all brand new, I'm crazy for you
And you know it's true
Yeah, I'm crazy for you
Crazy for you, baby

 

Writer/s: John Bettis, Jon Lind

 

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  ”音楽が始まると 部屋が揺れて

    見知らぬ人たちの影が暗闇を作り出し

    二つの体が次々とひとつになってゆく

 

    煙った空気の中であなたを見る

         私の視線の重さを感じないの?

         あなたはとても近くにいるのに、まだ遥か遠くに思える

    私がどうしても言いたいことは、そう

 

         あなたに夢中なの 

    一度触れたらそれが本当だってわかるはず

         誰かをこんなに強く求めたことなんてなかった

    なにもかもは初めてのこと 私のキスから伝わるでしょう

    あなたに夢中なの 夢中なの

   

         がんばって気持ちを抑えようとしながら

    あなたのいることころに歩いてゆく

       目と目が合えば もう言葉なんていらない

 

          ゆっくりと二人が動き始め

       息をするたびに あなたの中に深く落ちてゆく

       すぐに二人は時の中でじっと動かなくなる

       もし私の心が読めるなら わかるはずよ

 

     あなたに夢中なの 

     一度触れたらそれが本当だってわかるはず

          誰かをこんなに強く求めたことなんてなかった

    なにもかも初めてのこと 私のキスから伝わるはず

          私のキスから伝わるはず

    だってあなたに夢中なの 

          一度触れたらそれが本当だってわかるはず

         誰かをこんなに強く求めたことなんてなかった

    なにもかも初めのこと 私のキスから伝わるでしょう

    あなたに夢中なの 夢中なの

 

          すべて生まれ変わったみたいに あなたに夢中なの

     本当だってあなたもわかってくれる,,,        (拙訳)

 

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 「ホリデイ」、「ラッキー・スター」でダンス・ミュージックの新しいスターの座をつかむやいなや、「ライク・ア・ヴァージン」、「マテリアル・ガール」でポップ・スターまで一気に駆け上った彼女が、次にリリースしたのはこのラブ・バラードでした。

 

 それまで彼女をイロモノ扱いし、どうせすぐに消えてしまうと思っていた人たちも評価を変えざるを得なくなった曲がこの「クレイジー・フォー・ユー」だったのではないでしょうか。今振り返ってみると、彼女がこれだけ長い間スターの座に君臨することにつながった”最初の布石”だったのかもしれません。

 

   ウィキペディアを見ると、アメリカ国内でのシングル売り上げは彼女の全シングルのなかで3位(1位 ヴォーグ 2位ライク・ア・プレイヤー、4位がライク・ア・ヴァージン)、"Official Charts"というwebの売り上げランキングでも3位(1位イントゥ・ザ・グルーヴ  2位ライク・ア・ヴァージン)と、「クレイジー・フォー・ユー」は紛れもなく彼女の代表曲の中でもトップクラスの座にいることがわかります。

 

 「ライク・ア・ヴァージン」の盛り上がりをうけて、彼女のイメージを修正しながら後押しするという絶妙な役回りを見せたこの「クレイジー・フォー・ユー」ですが、実は「ライク・ア・ヴァージン」以前から進行していたプロジェクトでした。

 

 この曲は「ビジョン・クエスト 青春の賭け」という映画の主題歌だったのですが、

まず彼女は映画の端役としてキャスティングされたようです。

 

 彼女はまだデビュー・アルバムを出したばかりでしたが、すでに役者としてのキャリアも彼女は想定していたようで、映画プロデューサーに自身を売り込んでいたのです。

 

 そのうちジョン・ピーターズというプロデューサーが「ビジョン・クエスト」を手がけることになり、ちょうどクラブ歌手役を探していたので彼女に声をかけ、やることになります。

 

 そして、ジョンが映画のもう一人のプロデューサーと映画の音楽監督フィル・ラモーンにマドンナの話をしたのだと思いますが、フィルが彼女を自宅に食事に誘い、そこで他のプロデューサーたちと一緒に彼女のビデオを見て、彼女のルックスやキャラクターに強いインパクトを受けて、彼女の歌をテストしてみようということになります。

 

 それと並行して、映画用に新曲を作る作業が始められていました。仕事の依頼を受けたのが作詞家のジョン・ベティスと作曲家のジョン・リンドでした。彼らは映画の脚本を読み、シーンを想定しながら曲作りを始めました。

 

 ジョン・ベティスリチャード・カーペンターの大学の同級生で、リチャード、カレンと一緒にグループを組んだこともある人で、リチャードが作曲したカーペンターズの曲の作詞家として「イエスタデイ・ワンス・モア」や「トップ・オブ・ザ・ワールド」などの大ヒットを残しています。この頃の代表曲はマイケル・ジャクソンの「ヒューマン・ネイチャー」(作曲はTOTOのスティーヴ・ポーカロ)でしょうか。

 

 ジョン・リンドは、このブログにも登場しました”フィフス・アヴェニュー・バンド”の元メンバー、E,W&Fの「ブギー・ワンダーランド」などを作曲しています。

 

 そして、主人公の男女がクラブで踊るシーンを想定して「クレイジー・フォー・ユー」が完成した後、フィル・ラモーンからジョン・ベティスに電話があって、この曲を気に入ったからマドンナに歌わせたい、と言ってきたそうです。

 

 それは「ボーダーライン」がチャートに入ってきたくらいの頃の話で、ベティス「え、なんですって?マドンナが歌う?彼女、こういう曲歌えるんですか?」と答えたといいます。

 

 曲のアレンジは彼女のサウンド・プロデューサーであったジェリービーンが手がけることになりましたが、それまでダンスものしか作ったことのない彼には初めてのチャレンジということもあり、最初の仕上がりはよくなかったようです。レコーディングを見に行ったベティスとリンドは失望し、映画から外されるんじゃないかとまで懸念したそうです。

 そこで、アレンジャーで、マイケル・フランクスなどのプロデュースも手がけているロブ・マウンジーが助っ人として加わりアレンジを修正し、ベティスもリンドも納得する仕上がりになりました。

 

 ベティスはこう語っています。

 「マウンジーには僕らはすごく恩義を感じている。彼が本当にヒット・レコードを作ってくれたんだ」

 

 ウィキペディアではマウンジーを呼び入れたのはジェリービーンみたいに書かれていますが、マウンジーは主にジャズ、フュージョンの仕事をしていて、あきらかにフィル・ラモーンのほうに多く接点がありそうなので、これはフィルのジャッジじゃないかと僕は推測しています。細かいことなんですが、、。

 

 

 「クレイジー・フォー・ユー」が大ヒットしたため映画のタイトルを「ビジョン・クエスト」から「クレイジー・フォー・ユー」に変えて公開した国もあったそうです。

 

 その映画にマドンナ本人も出演していれば、みんな”カメオ出演”だと思ってしまうのは当然ですが、もともと脇役の予定だったわけですね。

 

 ともかく、この曲はもとはといえば彼女の並々ならぬ野心が引き寄せた仕事だったわけです。その後も彼女の勢いは止まることを知らない、そんな状況になっていきました。

 

クレイジー・フォー・ユー

クレイジー・フォー・ユー

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Crazy for You (Edit)

Crazy for You (Edit)

  • Sire/Warner Records
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popups.hatenablog.com

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 作者のジョン・リンドが在籍していたフィフス・アヴェニュー・バンド

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