まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲を選曲しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ロスト・イン・ラブ(Lost In Love)」エアサプライ(1980)

 おはようございます。

 今日はエア・サプライの「ロスト・イン・ラブ」です。


Air Supply - Lost In Love (best audio)

 

 " 愛の最高の部分は 一番薄いスライスだから

 たいした価値はないって気づいたよ

 でも僕は手放せない

 愛にはまだ信じれるものがまだたくさんあると信じているから

 

 だからもし君がやれそうだって思うなら 見上げてごらん

 星に手を伸ばして  君に僕の考えてることを教えるよ

 僕に必要だったのは 僕にそれを教えてくれる人だったんだ

 

 僕をからかったりできないはずだ

 君をずっと愛し続けてきたんだ

 簡単に始まった恋だったけど 君もずっと続けていきたいんだよね

 

   愛の中に迷い込んで (愛に夢中になって)       よくわからないまま

   ひとりごとをつぶやいて  現実の君から遠ざかっていたのかな?

   だけど僕は元に戻ったよ、そして君が望むような男になりたいんだ " (拙訳)

 

 エアサプライはオーストラリア、メルボルンで結成されたグループ。基本的にグラハム・ラッセルとラッセル・ヒッチコックのデュオです。

  当時大ヒットしていたミュージカル「ジーザス・クライスト・スーパースター」のオーストラリア版に出演していたことから知り合いバンド結成に至ったそうです。

    1980年初頭にアメリカで突然この曲が大ヒット(全米第3位)して世界中に知られるわけですが、結成したのは1975年で地元オーストラリアでは”そこそこ”の(?)存在でした。

   そして、1979年に「ロスト・イン・ラブ」のオリジナル・ヴァージョンがオーストラリアで13位まであがるヒットになります。

 

 *こちらがオリジナル。イントロのコーラスの位置が違うだけでも印象が変わりますね。


Air Supply - Lost In Love [ Original Australian Version - FULL AUDIO HD ] [ A Tribute Video ]

 この曲に目をつけたのがクライヴ・デイヴィスです。コロンビア・レコードの顧問弁護士から社長になった人で、この当時はアリスタ・レコードの社長でした。とにかくヒット曲を見つけ出す能力にかけては彼にかなう人はいないとされています。

 例えば、サイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」をシングルでリリースすることを推したのが彼だと言われています。当時(1970年)はロックの時代で、バラードでしかも長い曲をリリースすることはメンバーはじめとしてためらいがあったようですが、彼は、もしこれがヒットしたら古典的名作になる、と言ったそうです。

 当時アリスタ・レコードはバリー・マニロウディオンヌ・ワーウィックという王道ボーカルものが看板で、どんな曲を歌わせるかが命綱でした。バリーはソングライターとしても有能だったのですが、ヒットを作るためにクライブが他の作家の曲をメインで歌わせていたそうです。

 彼は社長でいながら、自ら音楽出版社や作家事務所に出向き、とにかくたくさんデモを聴いていたという話を僕は聞いたことがあります。

 

 クライヴは「ロスト・イン・ラブ」を聴いて気に入り、権利を買いとります。

   そして、新しいディケイド(年代)、1980年になるタイミングを待って1月に発売します。メンバーでこの曲を書いたグラハム・ラッセルは業界紙(キャッシュボッックス)に、ヒットチャート5位以内に入るのが運命付けられた曲、だという記事をたまたま見つけ驚いたそうです。当時彼は一文無しで、生活費を安くするために海外にいたそうで、あわててクライヴに会いにいくと、アルバムを作るよう指示されたとのことです。

 

 この曲についてグラハムはこう語っています。

 

「”ロスト・イン・ラブ”は本当にシンプルな曲だ。

 僕はいつも曲を書き始める前に、その曲について、その曲がどこに向かっているかについてまず考えるんだ。僕はインスピレーションが来るときがよくわかるんだ。本当に素早くやって来る、ダーツみたいに、しかも長くは続かない、まさに初期衝動なんだ。だからそいつがやってくるときは、それまで考えていたことがパッと散らばって消えて、そこにすごいスピードでやって来るから、僕は急いでそれを捕まえなくちゃいけないんだ。インスピレーションが来たと思ったらすぐに曲のことを考えなければいけない。

 曲が浮かんだときは奇妙な感覚になって、一人ぼっちでどこかに漂っていくような感じがする。でも実際にピアノを弾いたりやギターを手にしたら、あっという間にできる。僕の曲はシンプルなんだ、ジャズやフュージョンなんかをやっているわけじゃないしね。僕の曲は正統派なんだ、使っているコードも明快だし、シンプルなほどいいんだよ。

 だから”ロスト・イン・ラブ”なんて曲は使っているコードは4つだし、構成は2パートしかない。実際サビはない。Aメロ(verse)とブリッジだけ。だからこういう曲は、作るのに15分以上かからないんだよ(笑)」

 

 たしかに2つのパートを繰り返している、驚くほどシンプルな曲です。しかし、サウンド、アレンジ、ボーカルワークが見事に調和して聴き飽きないものになっています。

 そういう意味ではビー・ジーズの「愛はきらめきの中に」と、音楽的な成り立ちは近いのかもしれません。

 

 その次のシングル「オール・アウト・オブ・ラヴ」は全米2位の大ヒットになりますが、これはもともとすでに出来上がった曲で、サビの歌詞をクライヴが直したそうです。

 その後彼らはグラハム・ラッセルの曲を主軸に置きながら、他の作家の曲(「ヒア・アイ・アム」「あなたのいない朝」「渚の誓い」など)も歌って大ヒットさせていますが、それもやはりクライヴのセレクトだったのでしょう。

 

 そして、クライヴ・デイヴィスの”選球眼”ならぬ卓越した”選曲耳”の集大成となったのはエア・サプライの勢いが降下していくのとクロスするようにして現れたホイットニー・ヒューストンだったのだと僕は思っています。

 

ロスト・イン・ラヴ(期間生産限定盤)

ロスト・イン・ラヴ(期間生産限定盤)