まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。(現在は不定期で更新中)古今東西のポップ・ソングを、エピソード、和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などを交えて紹介しています。親しみやすいポップスは今の時代では”ニッチ(NIche)”な存在になってしまったのかもしれませんが、このブログがみなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。追加情報や曲にまつわる思い出などありましたらどんどんコメントしてください!text by 堀克巳(VOZ Record

「すべてをあなたに(Saving All My Love for You)」ホイットニー・ヒューストン(1985)

おはようございます。今日はホイットニー・ヒューストンの「すべてをあなたに(Saving All My Love for You)」です。

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A few stolen moments is all that we shared
You've got your family and they need you there
Though I try to resist being last on your list
But no other man's gonna do
So I'm saving all my love for you

It's not very easy living all alone
My friends try and tell me find a man of my own
But each time I try, I just break down and cry
'Cause I'd rather be home feeling blue
So I'm saving all my love for you

You used to tell me we'd run away together
Love gives you the right to be free
You said, "Be patient, just wait a little longer."
But that's just an old fantasy

I've got to get ready
Just a few minutes more
Gonna get that old feeling
When you walk through that door
'Cause tonight is the night for a feeling alright
We'll be making love the whole night through
So I'm saving all my love
Yes, I'm saving all my love
Yes, I'm saving all my love for you

No other woman is gonna love you more
'Cause tonight is the night that I'm feeling alright
We'll be making love the whole night through
So I'm saving all my love
Yeah, I'm saving all my loving
Yes, I'm saving all my love for you
For you, for you

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密かに奪ったわずかな時間だけが
二人分かち合えたもの
あなたには家族がいて 必要とされている
あなたのリストの最後にいるなんていやだけど
ほかの誰かじゃだめなの
だから私は、あなたへの愛をすべて取っておく

ひとりっきりで生きるのはそんな簡単じゃない
友達は言う、私だけの相手を探しなさいと
でもそうしようとするたびに
崩れそうになって泣いてしまう
ブルーな気持ちでひとり家にいるほうがましだから
だから私は、あなたへの愛をすべて取っておく

あなたは私に言っていた
一緒に逃げよう、愛は君に自由になる権利をくれるって
あなたは言った「我慢してほしい、もう少しだけ」
だけど、それはいつもの夢物語

準備しなきゃ
あともう数分で
いつもの気持ちが戻ってくる
あなたがドアを開けて入ってきたなら
今夜がそう 心が満たされる夜
ふたり夜通し愛し合う
だから私は愛を全部とっておく
そう、あなたへの愛を全部とっておく
そう、あなたへの愛を全部とっておくの

他の誰だってこれほどあなたを愛せない
今夜こそ気持ちが満たされる夜
ふたり夜通し愛し合う
だから私は愛を全部
ええ、すべての愛を
あなたのために取っておく
あなたのために、あなたのために (拙訳)

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「すべてをあなたに(Saving All My Love for You)」(ホイットニー・ヒューストン)のヤマハぷりんと楽譜はこちら

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 この「すべてをあなたに」はホイットニー・ヒューストンののデビューアルバム『そよ風の贈りもの(Whitney Houston)』からのセカンド・シングルとして発売されると全米シングルチャートで1位を獲得し、彼女を一躍トップスターの座にまで押し上げた曲です。あきらかな”不倫の歌”で、新人がそういう曲を歌うというのは本当に稀なことでした。

 この曲は実はカバーで、オリジナルは元フィフス・ディメンションの中心メンバー、おしどり夫婦のマリリン・マックー&ビリー・デイヴィス・ジュニア。1975年の「星空のふたり(You Don't Have to Be a Star (To Be in My Show))」が日本でも大ヒットしました。この曲は1978年リリースのアルバムMarilyn &Billy」に収録されていました。

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 マリリンもとても素晴らしいシンガーですが歌声がソフトなので、ホイットニーとは歌の印象が違って聞こえます。

  情報を探すためにChat GPTに二つのヴァージョンについてたずねたのですが、二つのヴァージョンの聴いた感じの違いまで説明してくれました(苦笑。

 マリリンは“秘めた恋を静かに受け入れている大人の女性””諦めと受容が混ざった静かな切なさ””つらいけど、もう運命として受け入れている”

 ホイットニーは“抑えきれない感情を抱えて苦しんでいる若い女性”希望・苦しみ・執着・純粋さが入り混じる””まだ諦めきれない。信じて待ち続けている”

 僕もまったくそう思います、、、(苦笑)マリリンからはそこはかとなく”金妻”感(古くてごめんなさい)を感じますが、ホイットニーはもっとまっすぐな切実さがあります。

 この曲が本来持っている世界観にぴったりなのはマリリンの方だと思います。ホイットニーは、彼女の母親がまだ若い彼女に不倫の歌を歌わせたくないと反対したという話もありますし、彼女の凛として真っ直ぐなヴォーカルには不倫のイメージは合わない気がします。しかし、そのミスマッチ、ギャップがかえって効果的に作用したんですね。

 カーペンターズの「遙かなる影(Close To You)」もそうでしたが、どんないい曲でもピッタリしたアレンジ、そして何よりもその曲に新たな魅力を付け加えることのできるシンガーがいなければヒットしない、ということは間違いなく言えるように思います。

 ちなみに、演奏に関してはマリリン版は、リー・リトナー(G)、デヴィッド・T・ウォーカー(G)、リーランド・スクラー(B)、ラス・カンケル(D)という西海岸のスーパー・プレイヤーが、ホイットニー版はダン・ハフ(G)、ポール・ジャクソンJR(G)、ネイザン・イースト(G)ジョン・ロビンソン(G)というフュージョンAORファンにはお馴染みの人たちがやっています。

 この曲を書いてプロデュースしたのはマイケル・マッサーダイアナ・ロス「タッチ・ミー・イン・ザ・モーニング」「マホガニーのテーマ」で一躍有名になった人です。僕は彼が1970年代から80年代のラブ・バラードの”公式”を作ったと思っています。

 彼がホイットニーを初めて目にしたのは、アリスタ・レコード社長のクライヴ・デイヴィスに招待されてニューヨークのクラブで彼女が歌っているのを見に行った時で、かな女はマッサーの書いた「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」を歌ったそうです。ライブ後に、ホイットニーは彼にこの曲がお気に入りの一つだと伝えた。そして彼はアリスタ・レコードからホイットニーのデビューアルバムのプロデュースを依頼され「グレイテスト・ラヴ・オブ・オール」と「セイヴィング・オール・マイ・ラヴ・フォー・ユー」をレコーディングしたのです。彼女の歌う「すべてをあなたに」を聴いたマッサーは、女性たちはこの曲に特別な親近感を覚えるだろう思ったそうです。また、ロサンゼルスのロキシー・シアターで彼女が「すべてをあなたに」を歌った後女性客全員が立ち上がれば次のシングルにすることをクライヴに提案して、その通りになったという話もあるそうです。(参考:ALLMUSIC)

 歌詞を書いたのはジェリー・ゴフィン。男性なんです。この歌詞を書いたときには40歳くらいだと思います。ただ、彼は1960年代にキャロル・キングのパートナーとして、数々のヒット曲を書いていて、シュレルズ「ウィル・ユー・ラヴ・ミー・トゥモロー」など、若い女性が歌うラブソングも数多く書いていた人です。1960年代にはティーンの女の子の切ない気持ちを書き、それから18年後に不倫の歌を書いた、時系列的にはいたって自然な(?)流れですね。

 最後はデビューした年に彼女がアメリカの有名なTV番組『レイト・ショー・ウィズ・デイヴィッド・レターマン』でこの曲を歌った映像を。緊張感も伝わってきますが、彼女が”不倫”の歌を”まっすぐに”歌うことで、この曲に新たな命を吹き込んだということがよく伝わってきます。

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