まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「ドント・アンサー・ミー(Don't Answer Me)」アラン・パーソンズ・プロジェクト(1984)

 おはようございます。

 今日はアラン・パーソンズ・プロジェクトの「ドント・アンサー・ミー」です。


The Alan Parsons Project - Don't Answer Me (Official Video)

If you believe in the power of magic
I can change your mind
And if you need to believe in someone
Turn and look behind
When we were living in a dream world
Clouds got in the way
We gave it up in a moment of madness
And threw it all away

 

Don't answer me, don't break the silence
Don't let me win
Don't answer me, stay on your island
Don't let me in


Run away and hide from everyone
Can you change the things we've said and done?

 

If you believe in the power of magic
It's all a fantasy
So if you need to believe in someone
Just pretend it's me
It ain't enough that we meet as strangers
I can't set you free
So will you turn your back forever on what you mean to me?

 

Don't answer me, don't break the silence
Don't let me win
Don't answer me, stay on your island
Don't let me in

Run away and hide from everyone

Can you change the things we've said and done

 

Don't answer me, don't break the silence
Don't let me win
Don't answer me, stay on your island
Don't let me in

Run away and hide from everyone

Don't answer me, don't break the silence
Don't let me win
Don't answer me, stay on your island
Don't let me in

Can you change the things we've said and done

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もしキミが魔法の力を信じるなら
ボクはキミの心を変えられるよ
もしキミが誰かを信じたいなら
振りかえって後ろを見てごらん
ボクらが夢の世界に住んでいた頃
雲に行く手を邪魔をされ
ボクたちは狂気の瞬間にあきらめ
すべてを捨ててしまった

 

ボクの呼びかけに答えないで、沈黙を破らないで
ボクを勝たせないで
答えないで、キミは自分の島にいればいい
ボクを入れちゃダメだ


逃げて、みんなから隠れるんだ
ボクらがしてきたことをキミは変えられるかい?

 

もしキミが魔法の力を信じるなら
それはすべてファンタジー
だからもし誰かを信じたいなら
それがボクだってふりをするだけさ
見知らぬ者同士として出会っても不十分
ボクはキミを自由にすることはできない
ボクにとって大切なものからキミは永遠に背を向けるのかい?

 

ボクの呼びかけに答えないで、沈黙を破らないで
ボクに勝たせないで
答えないで、キミは自分の島にいればいい
ボクを入れちゃダメだ


逃げて、みんなから隠れるんだ
ボクらがしてきたことをキミは変えられるかい?

 

答えないで、沈黙を破らないで
ボクに勝たせないで
答えないで、キミは自分の島にいればいい
ボクを入れちゃダメだ、、               (拙訳)

 

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 アラン・パーソンズはもともとバンドマン(ギタリスト)でしたが、19歳のときにアビーロード・スタジオのアシスタント・エンジニアとして職を得ると、ビートルズの「アビイ・ロード」と「レット・イット・ビー」の制作に立ち会うという幸運に恵まれました。その後も、ポール・マッカートニーウィングス)の「ワイルド・ライフ」「レッド・ローズ・スピードウェイ」、そしてピンク・フロイドの「狂気」のエンジニアとしてクレジットされることで大きな名声を得ることになります。

 その他、プロデューサーとしてパイロットの「マジック」、アル・スチュワートの『Year Of The Cat』アンブロージアなどのプロデュースを手掛けています。

 

 アラン・パーソンズ・プロジェクト1975年に彼がアビー・ロード・スタジオで知り合ったエリック・ウルフソンと組んだプロジェクトで、エリックは当初アランのマネジャーもつとめていたそうです。

 エリックはスコットランド出身で主にセッション・ピアニスト、作曲家(ストーンズのプロデューサー、アンドリュー・ルーグ・オールダムと契約していたこともあったそうです)として活動していました。

 彼らのファースト・アルバム『Tales Of Mystery And Imagination』はエドガー・アラン・ポーの作品を基にしたコンセプト・アルバムでした。

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 その後彼らはコンスタントにアルバムをリリースしていきますが、音楽性としてはいわゆる”プログレッシヴ・ロック”に分類されるものでした。

 

 そんな彼らがポップ・チャートに躍り出たのが1982年の6枚目のアルバム「アイ・イン・ザ・スカイ」のタイトル曲でした(1982年 全米3位。

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 そして、その次のアルバム「アンモニア・アヴェニュー」(1984)からのシングルとなったのがこの「ドント・アンサー・ミー」でした。

 「ドント・アンサー・ミー」はこのブログでもよく登場するフィル・スペクターサウンドを80年代らしく再現した作品です。

 「アイ・イン・ザ・スカイ」でポップになってきたとはいえ、彼らがフィル・スペクターサウンドをやるというのはあまりにも唐突で、今もなおこの曲は彼らのディスコフラフィーの中から浮いてしまっている存在のようにボクには思えます。

 

 アランはこう回想しています。

「”Don't Answer Me”では完全にフィル・スペクターサウンドを追求したんだ。50年代というより60年代的だった。ロネッツやライチャス・ブラザーズのようなウォール・オブ・サウンドを目指した。彼は素晴らしい音楽をたくさんプロデュースしたよ。この曲には、あの巨大でエコーがかかったようなサウンドが必要だったんだ。しっくりする感触を得るのにすごく苦労し、曲をアルバムから外すことも考えたが、この曲が必要なんだと気づいたんだ」

 (WE ARE CULT  11 March 2020)

 

 ただし、フィル・スペクターの”ウォール・オブ・サウンド”は、ギターやピアノやパーカッションなどの演奏者をそれぞれ複数人スタジオに入れていっぺんに演奏させ、いろんな楽器の音とスタジオの反響音が混ざり合って”塊”となって聴こえてくるというものでしたが、この「ドント・アンサー・ミー」は大人数では録っていません。

 あくまでも、フィル・スペクターっぽいリズムパターンを真似て、楽器を何度か重ねて録音し全体に深いリバーヴ(エコー)をかけることで、それっぽく聴こえるわけで、本質的にはまったく違うものといっていいでしょう。

 ただ、アラン・パーソンズはもともと超有名エンジニアだけあって、80年代らしいサウンドフィル・スペクター・テイストの合わせ方が実に見事です。80年代はモータウンなどの60年代ポップスのリバイバルが盛んで、フィル・スペクター風のアレンジもよく聴かれましたが、当時の海外のものでは僕はこれがベストだと思います(日本ではもちろん「君は天然色」。次点が佐野元春「Someday」でしょうか)。フィル・スペクターサウンドを作るには優れたエンジニアは絶対に欠かせない、そんなふうに思います。

 

 

  あと、この「ドント・アンサー・ミー」についてのトピックは、バック・ボーカルにこのブログで紹介したゾンビーズのボーカル、コリン・ブランストーンとクリス・レインボウというポップス・マニアには堪らないメンバーが参加していることです。

 アラン・パーソンズ・プロジェクトは本質的にはユニットではなく、パイロットやアンブロージアなどアランが関わったミュージシャンたちが参加する複合的なプロジェクトでした。特に、ヴォーカリストに関してはアランもエリックも歌が本業ではないため、様々なボーカリストを迎えてゆくられていました。この曲が収録されているアルバム「アンモニア・アベニュー」でもコリンとクリスのメイン・ボーカル曲が1曲ずつ収録されています。(「ドント・アンサー・ミー」のボーカルはエリックですが、アランは本当はエリックではなくもっと上手いシンガーに歌わせたかったようです)

 

 ちなみに、この曲のサビの

「僕の呼びかけに答えないで、沈黙を破らないで、僕を勝たせないで

 返事をしないで 君は島の上にいて 僕を入れないで」

 というフレーズの意味は、作詞したエリック・ウルフソンが亡くなってしまったので

アラン・パーソンズ自身もわからないそうです、、、。

 

 エリックはなくなってしまいましたが、その後もアランはこの曲をライヴで歌っているようです。その動画の中から、イスラエル・フィルハーモニック・オーケストラとの共演を。

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「ドント・アンサー・ミー(Don't Answer Me)」収録のアルバム

 

アラン・パーソンズのプロデュース作

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アラン・パーソンズ・プロジェクトの常連ヴォーカリスト

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 日本が世界に誇るフィル・スペクターサウンド

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