まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「メタフィクション・ガール」LUA(2020)

 おはようございます。

 今日は手前味噌みたいですみません!最近僕がプロデュースをした曲をぜひ一度聴いてみてください。LUAの「メタフィクション・ガール」という曲です。


LUA - メタフィクション・ガール【MusicVideo】

 

メタフィクション・ガール」 作詞作曲:LUA

愛の花なんて どこにも咲いていないよ この世界には

恋の雨なんて 降るとしても 私の住む街は避けていくでしょう

なんちゃって いじけちゃうくらい 大きな恋をした

ビー玉越しに見える君から 目が離せなくて

青春は いつも いつも いつも 一方通行だなあ

 

あれもしたい これもしたい 限りない恋は まるで片道切符

とめどなく 溢れ出す 言葉じゃない何かで繋がってみたくて

 

前髪を切って 少し後悔 なりたい私になれなくて

青春の上澄みだけ すくったみたいな毎日で

ふわふわした頭の中 ぷかんと浮かぶ 君のこと

どうしたって いつも いつも いつも 話し中のコール

 

あれもしたい これもしたい 水彩の恋は まるでワンデーパスポート

砂浜に描くLOVE 消えかかる いじわるな肌寒さだって 覚えていたくて

 

奇跡を待つくらいなら いっそ 何も知らないままでいいから

真っ白なページに書き込んで わかりやすく しるしを残して

「いつの日か思い出す」 なんて 俯瞰で見ている私 

可愛くないなあ

 

あれもしたい これもしたい 限りない恋は まるで片道切符

とめどなく 溢れ出す 言葉じゃない何かで繋がってみたくて

あれもしたい これもしたい 水彩の恋は まるでワンデーパスポート

砂浜に描くLOVE 消えかかる いじわるな肌寒さだって 

覚えていたくて

ラララ ぜんぶ 覚えていたくて

ラララ ひとつも 忘れたくなくて

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  LUA(ルア)は佐賀県出身の男性シンガー・ソングライターです(女の子みたいな声ですけど)。

 彼が自費制作した「魔法使いの恋」という曲を気に入って、このブログで紹介したのが

おととしの11月のことでした。 

popups.hatenablog.com

 そのあと、縁あって今回僕が制作を手伝わせてもらうことになり、今から1ヶ月ちょっと前(2020年12月9日)にこの「メタフィクション・ガール」を配信リリースをしました。。

 

 僕はVOZ Records(ボズレコード)という個人レーベルを2002年に作ったのですが、

ここのところずっと開店休業状態で、音楽の別の仕事をやっていました。ですので、こういうかたちで自分でプロデュースして、リリースというのは、もう10年以上ぶり(!)になります。

 こうして再開できたので、レーベルを閉めないでよかったです。

 

 「まいにちポップス」というブログを修行のように(?)毎日書いてきて、いわゆるポップな音楽というのは、今では世界的にはものすごく少数派、ニッチなもの、になったなあというのは痛感しています。。

 ポピュラー(人気がある)という言葉とつながっている”ポップ”が”ニッチ(隙間)”で少数派というのは、言語としてすごく矛盾しているのですが、(苦笑)。

 

 日本はまだポップなものが好きな土壌は残っていますが、とはいっても昨今メロディよりも言葉が優っていますよね。

 これはなによりも世相なんでしょう。現実社会のテンションが、ポップな明るい音楽と合わなくなった、という。

 とは言っても、ポップな曲を聴いた時のなんとも言えない気持ち良さというのは、他に替えのきかないものなのだよなあとも僕は思ったりするわけです。

 

 そんなことを僕が考えていた中で彼が「魔法使いの恋」を出した時にネットのインタビューで

「ポップであることを怖れない」

 と語っていたのはとても強く印象に残りました。

 ポップであることは、今の時代では決して”カッコいい”こととは言い切れないですしね。

 

 彼は、また他のインタビューでは、自分の武器は「聴いてきた音楽の幅の広さと深さ」だと語り、曲を作る秘訣は「とにかくたくさん音楽を聴くこと」と語っていて、実際話してみると、ほんとうにたくさん聴いています。

 彼の父親くらいの年齢の僕が同年代かと勘違いしてしまうような曲やアーティストの名前もホイホイ(笑)でできます(もちろん新しい曲もたくさん聴いています)。

 彼のお母さんが大変な音楽ファンで家でいつもレコードをかけていたらしく、その中でもマイケル・ジャクソン、アース、ウィンド&ファイアー、プリンスといったポップスとクロス・オーヴァーしたブラック・ミュージックの影響が彼に強くあるようです。

 そこに、今のアーティストらしく、UKロックや日本のナンバーガールゲスの極み乙女などのロック・バンドの影響があって、それが面白い感じでミックスされているようです。

 

 ラジオ番組に出演した時に彼は

「懐かしい音楽の影響が50%、今の時代の新しい感覚が50%、という風にちょうど半々になるようにいつも心がけている」

 と語っていて、

 実際に岩手のFMのDJの方から番組で

「もちろん、若い子たちが聴く感じだけど、30代40代以上の人にもよくわかる音楽」

 と評していただいたり、

 ネットで

「懐かしいような新しいような、気持ちいい曲」という書き込みがあったり

 そういうのってちゃんと伝わるものなんだなあ、とうれしくなりました。

 

 ちなみにLUA(ルア)はポルトガル語の「月」。

 おぼえやすく文字数が少なく、曲を聴いてくれる人にとって、なくてはならない存在&音楽でありたい、と考え、太陽と月が浮かんだそうですが、太陽は自分のキャラと合わないので月としたそうです。

 彼は蟹座なので月は守護星でもあります。

メタフィクション・ガール」の

 ”メタフィクション”は、フィクションの中のフィクション、例えば、登場人物が作者や読者を知覚したりすること、マンガでたまに登場人物が読者や作者に話しかけたりすることがありますよね、そういったものを指す言葉だそうです。

 

 この歌では、主人公の女の子が、

 ”「いつの日か思い出す」 なんて 俯瞰で見ている私 ”

と、恋している自分を別の自分が俯瞰で見ているさまを”メタフィクション”と重ねているわけです。

 

 何よりもこのブログでは、サンシャイン・ガール、バチェラー・ガール、透明ガール、モーニング・ガール、アップタウン・ガール、ディズニー・ガール、、とポップスの中でも「ガールもの」は特別視して扱ってきましたので、新たな「ガールもの」を作れたことも密かな喜びです。

 これは、僕が「ガールもの」を書いてくれと彼に懇願したわけじゃなくて、たまたまなんですが、、、。

 

 

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「美しき生命( Viva la Vida)」コールドプレイ(2008)

 おがようございます。

 今日はコールドプレイの「美しき生命( Viva la Vida)」です。


Coldplay - Viva La Vida (Official Video)

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I used to rule the world
Seas would rise when I gave the word
Now in the morning, I sleep alone
Sweep the streets I used to own

I used to roll the dice
Feel the fear in my enemy's eyes
Listen as the crowd would sing
Now the old king is dead! Long live the king!

One minute I held the key
Next the walls were closed on me
And I discovered that my castles stand
Upon pillars of salt and pillars of sand

I hear Jerusalem bells are ringing
Roman Cavalry choirs are singing
Be my mirror, my sword and shield
My missionaries in a foreign field
For some reason I can't explain
Once you go there was never, never a honest word
And that was when I ruled the world

It was a wicked and wild wind
Blew down the doors to let me in
Shattered windows and the sound of drums
People couldn't believe what I'd become

Revolutionaries wait
For my head on a silver plate
Just a puppet on a lonely string
Oh who would ever want to be king?

I hear Jerusalem bells are ringing
Roman Calvary choirs are singing
Be my mirror, my sword and shield
My missionaries in a foreign field
For some reason I can't explain
I know Saint Peter won't call my name
Never a honest word
But that was when I ruled the world


I hear Jerusalem bells are ringing
Roman Calvary choirs are singing
Be my mirror, my sword and shield
My missionaries in a foreign field
For some reason I can't explain
I know Saint Peter won't call my name
Never a honest word
But that was when I ruled the world

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”かつて私は世界を支配していた

  私が声を発すれば 海が隆起したものだ

  今では 朝は一人で眠り かつて私のものだった通りを掃除している

 

  私はよくサイコロを振っていたものだ

  敵の目に恐怖心が浮かんでいるのを感じたよ

  群衆が歌うのに耳を傾けた

  「古い王は死んだぞ!王様万歳!」

 

   鍵は私が持っていたのに もう壁が迫ってきた

   そして私は気づいたのだ 

   自分の城が塩の支柱と砂の支柱の上に立っていたことに

 

   エルサレムの鐘が鳴るのが聞こえる

   ローマ騎兵隊の聖歌隊が歌っている

 私の鏡になれ、私の剣に、私の盾に

 異国の地で私の宣教師となれ

 

 私には説明できないが何かの理由で

 王になってしまうとそこには、正直な言葉など決してひとつもなかった

 それは私が世界を支配していた時のことだ

 

 それは邪悪で荒れ狂った風だった

 ドアを吹き飛ばし 私は逃げ込んだ

 窓は粉々に割れ ドラムのような音が響いていた

 人々は私の成り果てた姿を信じられなかった

 

 革命家たちは待っているのさ

 私の首が銀の皿に載せられることを

 たった一本の糸しかない操り人形さ

 誰が王などなりたがるものか

 

 エルサレムの鐘が鳴るのが聞こえる

    ローマ騎兵隊の聖歌隊が歌っている

 私の鏡になれ、私の剣に、私の盾に

 異国の地で私の宣教師となれ

    私には説明できないが何かの理由で

    聖ペテロが私の名を呼ぶことは決してない

    正直な言葉など何一つない

 それは私が世界を支配していた時のことだ ” (拙訳)

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 ”Viva la Vida”とはスペイン語で、人生万歳という意味。

 昔は”ビバ!アメリカ”とか、日本でもビバって使っていたことがありましたが最近は全く聞かなくなりましたね。英語で言うと”Long Live Life”、歌詞の中に"Long Live the King"(王様万歳)というのが出てきます。

 この言葉はメキシコの画家フリーダ・カーロの描いた絵からとられたのだそうです。

artsandculture.google.com

 フリーダ・カーロは6才でポリオで右足が不自由になり、17才でバスの大事故で瀕死の重傷を負い、その後遺症に苦しみながら独学で絵画を極めた女性で、その波乱に満ちかつ恋多き人生は、2002年に「フリーダ」というタイトルで映画化もされています。

 

 コールドプレイのフロントマン、クリス・マーティンはこう語っています。

「もちろん、彼女はたくさんの痛みを経験したんだけど、彼女は家で『Viva la Vida』と書いた大きな絵を描き始めた。その大胆さに僕はただ強く心惹かれたんだ」

                                                                                (Songfacts)

 しかし、歌詞の方はフリーダとは全く関係がなく、”王の座を追われて落ちぶれた男の回想”を歌っています。

   冒頭の”私はかつて世界を支配していた”という一節が思い浮かんだ時、クリス・マーティン睡眠薬を飲んでまさに眠ろうとしていたらしく、眠さと格闘しながらギターを取りに行き作業したそうです。

 最初から破滅した王様の歌を書こうとしたわけじゃなく、突然ひらめいたフレーズからストーリーを生み出していったのかもしれません。

 

 

 コールドプレイは1997年にロンドンで結成されました。アルバム「パラシュート」でメジャー・デビュー。寒そうな海岸をひたすら歩くMVが印象的だった「Yellow」が大ヒットしました。


Coldplay - Yellow (Official Video)

  その後も2作目のアルバム「静寂の世界」、3作目「X&Y」と世界的なヒットを続け、順風満帆に思われましたが、彼らは次に大きな音楽的な変化を求めていました。

 メンバーは最初の3作を”3部作”ととらえ、ひとつの形が完結したのだと思っていたのです。

 そしてクリスは「X&Y」についてこう語っています。

「みんな少し音楽的にシャイになっていて、面白さを求めるということのサイズを間違っていたかもしれない」

                 (THE NEW ROCKSTAR PHILOSOPHY)

 

 4枚目で「美しき生命」が収録されたアルバム「美しき生命(Viva la Vida or Death and All His Friends)」を制作する際に、

 クリスは”白黒からカラーに移りたいという願望をエネルギーにして作った。というか、庭をもう少し手入れの行き届いていない状態で成長させることにしたんだ。ブラッドハウンドを放し飼いにして"(Coldplat Timeline)と語っていました。

 彼の発言のイメージは正確にはわかりませんが、聴き手は彼らの音楽に大きな変化があったことは確かにわかりました。そして、それを最も象徴していた曲が「美しき生命」でした。

 内向きでメラメラと燃えあがるような情念が、一気に反転するように外向きで力強いエネルギーへと変わったというイメージを僕は持ちました。それは「ヨシュア・トゥリー」のときのU2を思い出させるものでした。

 調べてみると、この「美しき生命」には「ヨシュア・トゥリー」のプロデューサーであったブライアン・イーノが加わっています。この彼らの音楽的な変化に、彼は何か関わっていたのでしょうか?

 

 具体的に彼らのサウンドをどうしたのかはわかりませんが、精神的なところからも彼らにアプローチしていったようです。

 以下、メンバーの発言です。

「(イーノと一緒にいると)まず最初は、愛やセックス、それにスタジオの外で役に立ちそうなことを学ぶ。それから音楽全般や、どうやってそれを作ったらいいか学ぶんだ。彼は教師みたいなものだ。教授ってとこかな。彼とは議論にならない。ブライアンは僕らの欠点を見つけてくれた。僕らをすごく自由にしてくれたよ。素晴らしい人だ」

                       クリス・マーティン(BARKS)

「彼は、極度の自己リラックスのプロセスと、想像力に制約がない状態にいるときにできることの可能性について話してくれたんだ」

             ウィル・チャンピオン(Coldplat Timeline)

 

「ブライアンが入ってきたとき、”みんなで一緒に歌わなきゃ”って言うんだ。彼はアカペラで歌うのが好きで、朝仕事を始める前に古いゴスペルの歌を歌うことでみんなスウィッチが入るんだ。あらゆることの喜びを思い出させてくれるような先生がいて幸せだったよ。彼は好奇心旺盛で失敗を恐れないんだ。これは、地位を確立してしまったアーティストにはとても大事なことなんだ。彼は馬鹿げたことを2時間も続けても気にしないんだ。だって2時間やったその3分後に何かカッコいいものが生まれるかもしれないから。だから、僕たちは何かが起こるまで喜んで演奏を続けたんだ」

                             (Pitchfork)

 

 「僕らは”もういい、自分たちが何を聴いているかを反映したレコードを作ろう、カテゴリーは関係ない”と思ったんだ。それがブライアン・イーノの哲学の一部だったんだ。周りの雑音を無視しなくちゃいけない、そして、1年のうち300日間、誰も見ていない部屋にいる間は、できるだけ楽しむんだ」

                                                                 (THE NEW ROCKSTAR PHILOSOPHY)

 

 いきなり大きな成功を手にしたことでプレッシャーを感じ、思いっきり音楽を楽しめなくなっていた彼らの気持ちをブライアンがじっくり時間をかけて解放させていった、その流れで生まれたのが「美しい生命」だったのかもしれません。

 


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「タイム・アフター・タイム(Time After Time)」シンディ・ローパー(1984)

 おはようございます。

 今日はシンディ・ローパーの「タイム・アフター・タイム」を。


Cyndi Lauper - Time After Time (Official Video)

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Lying in my bed I hear the clock tick
And think of you
Caught up in circles
Confusion is nothing new
Flashback, warm nights
Almost left behind
Suitcases of memories
Time after

Sometimes you picture me
I'm walking too far ahead
You're calling to me, I can't hear
What you've said
Then you say, go slow
I fall behind
The second hand unwinds

If you're lost you can look and you will find me
Time after time
If you fall I will catch you, I will be waiting
Time after time

If you're lost you can look and you will find me
Time after time
If you fall I will catch you, I will be waiting
Time after time

After my picture fades and darkness has
Turned to gray
Watching through windows
You're wondering if I'm okay
Secrets stolen from deep inside
The drum beats out of time

If you're lost you can look and you will find me
Time after time
If you fall I will catch you, I will be waiting
Time after time

You said go slow
I fall behind
The second hand unwinds

If you're lost you can look and you will find me
Time after time
If you fall I will catch you, I'll be waiting
Time after time

If you're lost you can look and you will find me
Time after time
If you fall I will catch you, I'll be waiting

Time after time,,,

 

Writer/s: Robert Hyman, Cyndi Lauper

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”ベッドに横たわり、時計の音を聞きながら

  あなたのことを想う

  堂々めぐりにハマって

  混乱するのは目新しいことじゃない

  フラッシュバックする 温もりのあった夜

   過去に置き忘れた

   思い出がつまった スーツケース 何度も、、

 

   時々あなたは想像するの

 私がずっと遠くを歩いていると 

 あなたが呼びかけても 何を言っているのか聴こえない

 そしてこう言う ”ゆっくり行って 僕が遅れてしまうよ” 

 秒針が動く

 

    あなたが迷った時は見てみて 私がいるから

 何度も何度でも

 あなたが倒れたら 私が捕まえる 待っているわ

 何度も何度でも

 

 私の想像が消えたあと 闇は白みはじめて

 窓の外を見ながら あなたは私が大丈夫が気にかけている

 心の深いところから盗まれた記憶

 ドラムは調子っぱずれのビートを刻む

 

 あなたが迷った時は見てみて 私がいるから

 何度も何度でも

 あなたが倒れたら 私が捕まえる 待っているわ

 何度も何度でも

 

 あなたは言った ゆっくり行って 僕が遅れてしまう

 秒針が進む

 

 あなたが迷った時は見てみて 私がいるから

 何度も何度でも

 あなたが倒れたら 私が捕まえる 待っているわ

 何度も何度でも                  ” (拙訳)

 

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 シンディ・ローパーニューヨーク州ブルックリン生まれで1970年代から音楽活動を始めていました。

   1979年から82年まで活動していた” BLUE ANGEL”というバンドは当時の流行を反映した、ニューウェイヴと60年代ポップスをミックスさせたようなバンドでした。

 

フィル・スペクター調のシングル「I Had a Love」


Blue Angel (Cyndi Lauper) - I Had A Love (Official Video)

 リー・マン&シンシア・ワイル作、オリジナルはフランキー・レインで大ヒットさせたのはジーン・ピットニーの「I'm Gonna Be Strong」(シンディは1994年に再カバーしています)


Blue Angel (Cyndi Lauper) I'm Gonna Be Strong on German TV (1980)

 マン&ワイルの朗々と歌い上げる曲をセレクトするあたりは、当時の他のバンドとセンスが一味違っていたようですね。外見では奇をてらいながらも、音楽は正攻法、という彼女のスタイルは最初から一貫していたようです。

 

 このブルー・エンジェル解散後、ソロで活動していたのをデヴィッド・ウルフという人物が気に入りマネージャーになり、彼が売り込んだ結果、彼女はメジャー・デビューを果たします。

 彼女をプロデュースすることになったのがリック・チャートフ。アリスタ・レコードのクライヴ・デイヴィスの元でA&Rをやっていた人で、彼のプロデュース作にはエア・サプライの「ロスト・イン・ラヴ」があります。

 コロンビア・レコードに移っていたリックは、シンディを手がけるにあたり、かつてのバンド仲間で大学時代のルームメイトでもあったロブ・ハイマンに協力を要請しました。

 ロブ・ハイマンはこの時期”フーターズ(The Hooters)”というバンドを結成し1985年にメジャー・デビューします。

 そしてアルバムがほぼ完成したかに思えた頃、リック・チャートフはもう1曲必要だと言い出したそうです。

 それで、シンディとロブはレコーディング後にスタジオに二人で残って、ピアノの前でいろんなアイディアをカセットに録音していきました。

 

 最初はレゲエ風のリズムがある感じだったそうです。サビのメロディが浮かび、そのあとAメロが浮かんできたといいます。

 

「一見シンプルな歌なんだ。Aメロは3つの音階のモチーフを繰り返しているだけのようなものだし、ほとんど動揺みたいに、とてもシンプルな歌なんだ。そして僕たちは何か特別なものを作っていることに気づいたんだ。歌詞の雰囲気は二人両方から出てきた。

シンディがまず入ってきて、歌詞の流れを作り始めたんだと思うんだけど、突然、この曲はそんなに弾むような曲ではなくて、もう少しほろ苦くて、もっと深い心情を描いた、もっと切ない曲だと気づいたんだ。だからメロディも少し変えてちょっとしたブリッジ・セクションを書いて、本当に最後に書いたのはサビだったと思う。Time After Timeというフレーズが決まっていたから、それを囲むような言葉を考える必要があったんだ。」

                     (ロブ・ハイマン  Songfacts)

 「タイム・アフター・タイム」というタイトルは、シンディが雑誌「TVガイド」を見ていた時に、1979年の映画「タイム・アフター・タイム」について書いてあって、そこからタイトルにしようと思ったそうです。

 その映画自体はタイム・トラベルものなので、あくまでもタイトルだけで、歌詞には全く反映されてはいません。

 

 本人たちもスタッフもこの曲に手応えを感じてデビュー・シングルにする話もあったそうですが、シンディがバラード・シンガーのイメージを避けたい(ブルー・エンジェルはニュー・ウェイヴ・バンドなのにバラードを歌って失敗したので、それで懲りたのでしょうか?)ということで、まず「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン(旧放題は、ハイスクールはダンス・テリア)」をファースト・シングルになりました。

 

 このジャッジは功を奏したのでしょう。インパクトは絶大でも一発屋的匂いもしていた「ガールズ・ジャスト・ワナ・ハヴ・ファン」のあとに、この曲を出すことで、シンディーローパーのアーティストとしての本物感がしっかり伝わったように思えます。

 この時、彼女はもう31才で、なんとしても成功しなければいけない、と強く思っていたのかもしれません。

 

  スタンダードになっているこの曲は、本当にたくさんのアーティストがとりあげていて、中でもマイルス・デイヴィスが有名ですが、僕が好きなのは1988年のタック&パティのカバー。これも当時FMで耳にしましたね。


Time After Time

 

 

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「FIVE」YAJICO GIRL(2020)

 おはようございます。

 今日は日本の最新のCITY POPチューン、YAJICO GIRLの「FIVE」です。


FIVE

  1980年代にFMから流れてきた日本のポップスに慣れ親しんだ人だったら、”これホントに新曲なの?再発じゃないの?”と思うんじゃないでしょうか。

 最近のCITY POPシーンが盛り上がっているのは知っていましたが、こんなテイストの楽曲が若いバンドの新曲として聴けることに僕も驚いてしまいました。

 

 この「FIVE」を演奏しているYAJICO GIRLは、大阪を拠点として活動している五人組(今年上京したようです)。

 彼らはもともとはASIAN KUNG-FU GENERATIONBUMP OF CHICKENなどに憧れてバンドを始めて、「出れんの!?サマソニ!?」や「未確認フェスティバル」といった、ロック・フェス系のオーディションなどで勝ち残って有名になった、いかにも日本のロック・バンドらしいプロフィールの持ち主で”CITY POP”との接点など全くなさそうなんですよね。

 

 2016年リリースの「いえろう」


YAJICO GIRL - いえろう[Official Music Video]

 

 興味深いのはバンドのフロントマンである四方颯人がインタビューで、2016年頃にフランク・オーシャンやチャンス・ザ・ラッパーやソランジュといったアーティストの作品を聴いて

「ファッションとして受け止めたわけじゃなくて、本当に、彼らの作品を聴いて、耳が変わってしまったんですよ。なにもかも今までと違った。そうなるともう、あとには戻れない」

                          (CINRA.NET)

 そしてSpotifyApple Musicといったストリーミング・サービスに適した音楽、海外の音楽シーンの動向が反映された作品作りへと、意識がシフトしていったようです。

 そして作ったのが「インドア」というアルバムでした。


YAJICO GIRL - NIGHTS [Official Music Video]

 このアルバムを作った後、四方は”明るいものを作りたいモード”になったと語り、

コロナ禍の中でリモートで制作していったのがこの「FIVE」だったようです。


 特に、CITY POPがどうとか、いう意識はなかったようで、今風であり、懐かしさもあるサウンドだと彼らはとらえているようです。

   "内向き"だった制作の後に、”揺り戻し”のように現れた、率直さや開放感が反映されたものなのかもしれません。

 ちなみに「FIVE」とはメンバー五人のことで、

 歌詞は

” 僕ら何度戸惑ってこの道を歩いてるだろう。何度も壊してやり直しても構わない。夢に描いたところまで あとどれくらいかな 幾つもの音重なって、僕はただ耳を澄ましている”

 とコロナ禍の中で自分たちの音楽制作について、自分たちの立ち位置について見直したようなものになっています。

 歌詞も含めて、これほど清々しい曲はいまどきめずらしいな、と僕は思い、閉塞感が強い今の時期に聴くと特に少し救われるような気持ちになります。

 

    


YAJICO GIRL - FIVE [ Studio Live at FS.]

 

 

 

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「He Don't Know Nothin' Bout It」ジャム&ルイス・フィーチャリング・ベイビーフェイス(2020)

 おはようございます。

 今日は1990年代の音楽シーンの二大プロデューサー、ジャム&ルイスとベイビーフェイスが共演を果たした「He Don't Know Nothin'Bout It」です。


Jam & Lewis x Babyface - He Don't Know Nothin' Bout It (Official Video)

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Talkin' about all of the things he's gon' do to you
When he gets you home
Coming up short, making all them excuses
You're better off alone
Think he's fire 'cause he drive a six hundred that
He don't even own
Talkin' like he's the guy
He could 'bout have any girl he want


He don't know nothin' 'bout it
'Bout time you found a man,
He just behaven 'round it,
Girl he don't understand
What you go through, he ain't got a clue
What love really mеans to you
He don't know nothin' 'bout it
He don't know nothin' 'bout it


Talkin' 'bout all of thosе things he's goin' buy for you
Can't even get a loan 
Runnin' 'round town frontin' like he take good care of you
But everybody knows 
How can a guy think he fly
When he's still living at his mama's home
Say goodnight, ain't it time
Think it's only right that you let him go


He don't know nothin' 'bout it
'Bout time you found a man
He just behaven' around it
Girl he don't understand
What you go through, he ain't go a clue
What love really means to you
He don't know nothin' 'bout it


You need a man to be strong
That will always be there
Whenever you need him
You shouldn't have to call him
A man who will be
Be right there when you fall 
If you put your heart in his hands
Then he needs to be your friend
A friend who will listen 
To all of your needs 
If for no other reason
But to love, and to trust
And to be your everything
Something that every woman needs


Baby, baby, baby
Get him off your mind
Get him off your head
Get him out your soul
Get him out your bed
He don't know nothin' 'bout it

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ヤツがどんなことをするつもりかを話しているんだ

ヤツが君を家に送った時に

君には物足りなくて、言い訳ばかりするから

一人でいた方がマシさ

ヤツはイカしていると思うかい メルセデスを乗りまわして

自分の車じゃないのに

ヤツは欲しい女性は誰でも手に入れる

そんな男だって言っているみたいだね

 

ヤツは何もわかっちゃいないんだ

君が一人の男性を見つけた時のことを

ただそんなフリをしているだけさ

ヤツには理解できないのさ

君がどんな経験をしてきてか

ヤツにはちっともわからないのさ

愛が本当に君にとってどんな意味があるのか

ヤツは何もわかっちゃいないのさ

 

ヤツが君のために買おうとしているものについて話すよ

ローンさえ組めないんだ

街を走り回っていると 自分を大切にしてくれているように思える

だけど、みんな知っているんだ

ヤツがどうやっていなくなってしまうのか

ヤツはまだママの家に住んでいるんだから

おやすみと言って、彼を行かせることだけが正しいと思うしかない

 

ヤツは何もわかっちゃいないんだ

君が一人の男性を見つけた時のことを

ただそんなフリをしているだけさ

ヤツには理解できないのさ

君がどんな経験をしてきてか

ヤツにはちっともわからないのさ

愛が本当に君にとってどんな意味があるのか

ヤツは何もわかっちゃいないのさ

 

君にはいつもそこにいてくれる強い男が必要なんだ

必要な時には、いちいち電話しなくてもいい

君が倒れた時にまさにそこにいてくれる男が

君がヤツの手に心を委ねるのなら

ヤツは君の友人でなくちゃいけない

君が必要としているもの全部に耳を傾けてくれるような友人に

たとえ愛したり 信頼するだけの理由であっても

君のすべてになるためであっても

あらゆる女性が必要とする何かになるために

 

ベイビー、ベイビー、ベイビー

君の心からヤツを追い払うんだ

君の頭からヤツを追い払うんだ

君の魂からヤツを追い払うんだ

君のベッドからヤツを追い払うんだ

奴は何もわかっちゃいないんだから”       (拙訳)

 

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  1990年代の洋楽のヒット曲に慣れ親しんだ人たちであれば、この時代の大ヒットプロデューサーといえば、ジャム&ルイスとLA&ベイビーフェイスが”二大巨頭”だったということに異論はないと思います。

 

 ジャム&ルイスことジミー・ジャム&テリー・ルイスはミネアポリス出身でプリンスの一派から独立してブレイクした人たちです。ジャネット・ジャクソンの代表作はほぼ全部彼らの作品で、他にマイケル・ジャクソンマライア・キャリージョージ・マイケルなど超大物たちとも組んでいますし、宇多田ヒカルの『Addicted To You』や『Wait&See ~リスク~』も彼らのプロデュースでした。

 

 ベイビーフェイスのほうは LA.リード(のちにEPICやデフジャムといったレコード会社の社長になる凄腕ビジネスマンです)と組んで、ホイットニー・ヒューストントニー・ブラクストンボーイズIIメン、マライア、TLC、ベイビーフェイス単独でもマドンナ、エリック・クラプトンなど、最近ではアリアナ・グランデなどと仕事をし、ソロアーティストとしてもコンスタントに活動しています。

 

 僕は1980年後半から90年代前半まで、この二組のプロデューサーの作品を主に追っかけて聴いていました。特にベイビーフェイスが好きで、レコード会社の洋楽部にいたときに彼の「THE DAY」というアルバムを担当できて、本人とも会えたことは今でも嬉しい思い出です。

 

 当時マスコミも彼らをライバル・チームとして扱っていましたが、不仲なわけではなく、売れ始めた頃にジャム&ルイスがベイビーフェイスに業界の大物を紹介したことがあったという記事を読んだ記憶があります。

    彼らはお互いの仕事を認め合い、4人で一緒に食事をしたこともあるそうです。

 

 2017年にジャム&ルイスとベイビーフェイスが同時に、ソングライターズ・ホール・オブ・フェイム(ソングライターの殿堂)入りしたときに、ひさしぶりに顔を合わせたそうです。

 その頃、ジャム&ルイスは華々しいキャリアの中で”まだやっていないこと”として、自分たちのアルバムを作るという構想がありました。

 それはいろんなゲストとコラボレーションをするというもので、彼らのそのトップ・プライオリティがベイビーフェイスだったそうです。

 

 ジャム&ルイスのアルバムの全貌はまだわかりませんが、まず彼らのプロデュースで1991年にアルバムをリリースした”サウンズ・オブ・ブラックネス”とのコラボ曲「Til I Found You」という曲がリリースされ、それに続いて昨年11月にこの「He Don't Know Nothin'Bout It」がリリースされたというわけです。

 

  この曲の作者はジャム&ルイスとベイビーフェイスに加え、元”サウンズ・オブ・ブラックネス”のメンバーでジャム&ルイスから目をかけられプロデューサーとなり、マライア・キャリーのプロデュース、ライヴの音楽監督をつとめていた、ビッグ・ジム・ライトの名前があります。

 彼は2018年10月に亡くなっていますので、この曲は彼の生前から取りかかっていたものなのでしょう。

 

 曲のほうは、淡々としたミディアム・テンポで最初はちょっと地味かなと思ったのですが、大サビで、これこそがベイビーフェイス!という究極の”せつなとろける”(今とっさに作った言葉です、、)メロディが出てきます。ここまでのメロディは、本当に久しぶりじゃないでしょうか。

 メロディアスなものは今の時代と逆行していますから、彼はずっとメロディが抑え気味でしたが、彼の持ち味をよく知るかつてのライバルが、お前のメロディを全開にしろ、とでも言ったのでしょうか。

 自分のカラーを押し付けず、相手の持ち味を最大限発揮させる、ジャム&ルイスの懐の深さを感じますし、かつてのベイビーフェイス・ファンの僕は「これなんだよなあ、これ」と感涙してしまったわけです。

 

 そして、90年代R&Bがリバイバルしないかな、なんて思ったりもしました。

 

 ジャム&ルイスの傑作

 

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若き日のベイビーフェイスの代表作

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「Say So」ドージャ・キャット(2020)

 おはようございます。

 今日は昨年大ヒットしたドージャ・キャットの「Say So」です。


Doja Cat - Say So (Official Video)

 

Day to night to morning, keep with me in the moment
I'd let you had I known it, why don't you say so?
Didn't even notice, no punches left to roll with
You got to keep me focused, you want it, say so
Day to night to morning, keep with me in the moment
I'd let you had I known it, why don't you say so?
Didn't even notice, no punches left to roll with
You got to keep me focused, you want it, say so

It's been a long time since you fell in love
You ain't coming out your shell, you really ain't been yourself
Tell me what must I do (do tell, my love)
'Cause luckily I'm good at reading
I wouldn't bug him and he won't stop cheesin'
And we can dance all day around it
If you frontin' I'll be bouncing
If you want it scream and shout it, babe
Before I leave you dry

Day to night to morning, keep with me in the moment
I'd let you had I known it, why don't you say so?
Didn't even notice, no punches left to roll with
You got to keep me focused, you want it, say so
Day to night to morning, keep with me in the moment
I'd let you had I known it, why don't you say so?
Didn't even notice, no punches left to roll with
You got to keep me focused, you want it, say so (yeah)

Let me check my chest, my breath right quick (ha)
He ain't never seen it in a dress like this (ah)
He ain't never even been impressed like this
Prolly why I got him quiet on the set like zip
Like it, love it, need it bad
Take it, only, steal it, fast
Boy, stop playing, grab my ass
Why you actin' like you shy?
Shut it, save it, keep it, push
Why you beating 'round the bush?
And knowing you want all this woman
Never knock it 'til you try (yeah, yeah)
All of them bitches hating I have you with me
All of my niggas saying you mad committed
Realer than anybody you had, and pretty
All of that body-ody, the ass and titties

Day to night to morning, keep with me in the moment
I'd let you had I known it, why don't you say so?
Didn't even notice, no punches left to roll with
You got to keep me focused, you want it, say so
Day to night to morning, keep with me in the moment
I'd let you had I known it, why don't you say so?
Didn't even notice, no punches left to roll with
You got to keep me focused, you want it, say so

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 ”昼から夜から朝まで その瞬間いつも あなたといたいの

   知ってたら許してあげたのに どうしてそう言わないの?

   気づきもしなかった どうしたらいいのかしら

      私をあなたに集中させなきゃ  そうしてほしいんでしょ

   なら、そう言ってよ

 

   ずいぶん長い間 恋してないのね

   自分の殻から出てこないわね それはホントの自分じゃないわ

   教えてどうしたらいいの?

   ラッキーなことに私は心を読むのが得意なの

      彼を困らせたくないけど 彼は作り笑いをやめないのよ

   私たちここで一晩中踊れるわ あなたが前に立ったら 私は飛び跳ねる

   そうしたいなら 大声をあげて叫んでいいのよ

    私があなたを見捨てる前に

 

   昼から夜から朝まで その瞬間いつも あなたといたいの

   知ってたら許してあげたのに どうしてそう言わないの?

   気づきもしなかった どうしたらいいのかしら

      私をあなたに集中させなきゃ  そうしてほしいんでしょ

   なら、そう言ってよ

 

       鼓動と呼吸をチェックさせて 大急ぎで

    こんなドレス姿 彼は見たことないのね

       こんな風に気持ちをつかまれたことはないのね

  たぶん私がジッパーを閉めるみたいに彼を静かにさせちゃったのね

  気に入って 愛して 求めて すごく

  奪って モノにして 盗んで すばやく

  ねえ 遊んでないで しっかりつかんで

  どうしてシャイなふりをするの?

  黙って 後にして 強気で押して

  どうして回りくどいことをしてるの

  この私がほしいんでしょ やってみなきゃわからないでしょ

  あの娘たちはみんな 私があなたといるのを嫌がっている

  あの男たちはみんな あなたが私に夢中だって言っている

  あなたが今まで付き合った誰よりも私は本物で かわいいわ

        この身体全部 お尻も胸も

 

    昼から夜から朝まで その瞬間いつも あなたといたいの

    知ってたら許してあげたのに どうしてそう言わないの?

    気づきもしなかった どうしたらいいのかしら

       私をあなたに集中させなきゃ  そうしてほしいんでしょ

    なら、そう言ってよ                                                     ” (和訳)

 

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   昨年BTSの「Dynamite」とともに、”四つ打ち、二拍四拍手拍子”という最強のディスコ・ビートのパワーで世界中を席巻したのがこの曲でした。

 そして、僕のようなオールド・ディスコ・ファンはこの曲のギターのカッティングからこの曲を思い出して、ニンマリしてしまうわけです(苦笑。


Good Times (2018 Remaster)

 

 LA出身のシンガーでラッパーのドージャ・キャットのこの曲は、2019年にリリースされたセカンド・アルバム「Hot Pink」から2020年に入ってからカットされた5番目のシングルでした。

 ファースト・シングル「Juicy」が全米41位に入っただけで、その次の3枚のシングルはチャートインすらしませんでした。

 この「Say So」がブレイクしたきかっけは、大人気Tik Tokerのヘイリー・シャープが

この曲に振り付けをして動画を投稿したからだと言われています。


Say so full dance tik tok yodelling haley

  その反響を受けてドージャがMVを作る時に、彼女の振り付けを取り入れ、その上に最後のディスコ・シーンでヘイリー本人を出演させ、そのことでいっそう話題が大きくなりました。

 そして、日本のTikTokerたちもこの曲のダンスをどんどんアップさせて広がっていったわけです。

 これが新しいヒットの生まれるシステムなんだなあ、と感心しながらも、僕のようなオールド・ファンは変な角度からまた見てしまいます。

 

 ディスコは、当然ベースとなっているのはブラック・ミュージックなんですが、そこに”白人”の解釈が入ると世界的に広まるという、すごくおおざっぱな”仕組み”がありました。そんなこと言っているのは僕ひとりだけなんですが(笑。

 たとえば、ビー・ジーズジョルジオ・モロダー、ジャック・モラーリ("YMCA"なんかを作った人です)とか、ですね。

 

 というわけで、ヘイリーさんは”振り付け”で新たなわかりやすい解釈をプラスしたんじゃないかと。彼女の動画を見ると後ろに流れている音楽は、もはやカーディガンズかなんかに聴こえてしまいますが。

 

 で、この「Say So」の曲と音作りをしているのも白人プロデューサーなんです。曲の共作者ルーカス・ゴットワルドとプロデューサーのタイソン・トラックスは同一人物で、かつて”ドクター・ルーク”という通称でケイティ・ペリーやケシャを大ブレイクさせた、大物プロデューサーです。

 楽曲制作の仕組みとしては、ジョルジオ・モロダーが自分のブレーンを使ってドナ・サマーの曲を作る、というのと基本的には変わっていないわけなんですね。

 

 ルーカスはケシャから暴行などの罪で訴訟を起こされ長い泥沼の裁判になったことで、彼は近年一気に評判を落としてしまいます。

 訴えは裁判で棄却されたようなので彼は仕事を続けていますが、疑いが完全に晴れたわけじゃなく、相変わらず世間の目は厳しいようです。この「Say So」は彼の久しぶりの大ヒットになりましたが、彼への賛辞はあまり見当たりません。

 

 そういえば、彼のプロデュースのケシャの代表曲に「Tik Tok」というのがありましたが、自身の久々のヒット曲が「Tik Tok」経由で生まれたと言う皮肉を、当のルーカスさんはどう受け止めているのでしょうか(考えすぎですね、、)。

 

 

 最後に、この曲を日本語で歌って話題になったアーティストがいます。

インドネシアのシンガー、Rainych(レイニッチ)。昨今の CITY POPブームで

「プラスティック・ラヴ」や「真夜中のドア」のカバーをやって話題になっている人です(日本語は全然しゃべれないそうですが、歌の日本語はホント見事です)。

 この「Say So」はドージャ・キャット自身がコメントするビデオもアップされるというサプライズもあって、すごい回数、再生されています。

 

 黒人シンガーが歌う、白人プロデューサーが手がけた曲を、インドネシアの女性が日本語でCITY POPのマナーで歌う、という、国境や人種のボーダーを完全に超えたものが作られるというのは、今の時代の素晴らしいところだと思います。

 


【Rainych】 SAY SO - Doja Cat | Japanese Version (cover)

 

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「辛い別れ(You Needed Me)」アン・マレー(1978)

 おはようございます。

 今日もバラードを。アン・マレー、1978年の全米NO.1の大ヒット「辛い別れ」です。

www.youtube.com

 

I cried a tear, you wiped it dry
I was confused, you cleared my mind
I sold my soul, you bought it back for me
And held me up and gave me dignity
Somehow you needed me

You gave me strength to stand alone again
To face the world out on my own again
You put me high upon a pedestal
So high that I could almost see eternity
You needed me, you needed me

And I can't believe it's you
I can't believe it's true
I needed you and you were there
And I'll never leave, why should I leave?
I'd be a fool 'cause I finally found someone who really cares

You held my hand when it was cold
When I was lost you took me home
You gave me hope when I was at the end
And turned my lies back into truth again
You even called me "friend"

You gave me strength to stand alone again
To face the world out on my own again
You put me high upon a pedestal
So high that I could almost see eternity
You needed me, you needed me

You needed me, you needed me

 

Writer/s: Randy Goodrum

 

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” 涙をひとつこぼしたら あなたが拭ってくれた

   私が混乱した時は 気持ちをすっきりさせてくれた

   私が魂を売り払っても あなたが買い戻してくれた

   私を包むように支え 自分を大切にする気持ちをくれた

  そしてどういうわけか、私を必要としてくれた

 

   あなたは、もう一度一人で立ちあがって

   自分の力で世の中に立ち向かう強さをくれた

   私を高く、台座の上にのせてくれた

   とても高く、ほとんど永遠が見えてしまいそうなほどだった

   あなたは私を必要としてくれた

 

    信じられない それがあなただなんて

    信じられない それが本当のことだなんて   

  私にはあなたが必要で あなたはそこにいてくれた

     だから決して離れない どうして離れなければいけないの?

  そんなことをしたらバカだわ、本当に大切な人をやっと見つけたのに

 

     寒い時は あなたが手を握ってくれた

  道に迷った時は あなたが家に連れ帰ってくれた

  行き詰った時には あなたが希望をくれた

  私がついた嘘を 真実に戻してくれた

  あなたはそんな私を”友達”とさえ言ってくれた

 

    あなたは、もう一度一人で立ちあがって

    自分の力で世の中に立ち向かう強さをくれた

    私を高く、台座の上にのせてくれた

    とても高く、ほとんど永遠が見えてしまいそうなほどだった

    あなたは私を必要としてくれた                                                  ”(拙訳)

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 タイトルが「辛い別れ」で原題が"You Needed Me"と過去形ですから、捨てられて今は相手から必要とされなくなってしまったという、悲しい歌なんだと長い間思い込んでいました。 

 しかし、あらためて歌詞を読むと、どうも相手に捨てられたわけじゃなく、やむにやまれぬ事情で別れることになった女性が、辛さも感じながらも、相手のおかげで自分の力で歩いていけるようになったという前向きな感情にも気づくという、”光を感じる”別れの歌だったんですね。

 "YOU NEEDED ME"という言葉に込められているのは”未練”ではなく”感謝”だったわけです。

 

 さて、アン・マレーの代表曲を駆け足で紹介します。

 彼女はカナダ出身のシンガー。1968年にデビューし、1970年に「スノー・バード」が全米8位の大ヒットになります。

www.youtube.com

 

  その後、ケニー・ロギンズが書いた「ダニーの歌」(1972年全米7位)と「ラブ・ソング」(1973年全米12位)、ビートルズのカバー「You Won't See Me」(1974年全米8位)などのヒットを飛ばしますが、その後ヒットから遠ざかり、子供が生まれる1976年から2年ほど休業していました。

 

「ダニーの歌」

www.youtube.com

 

「You Won't See Me」

www.youtube.com

 そして、この「辛い別れ」が収録されたアルバム「愛の香り(Let's Keep It That Way)がカムバック作でした。

 

  この曲を書いたのはランディ・グッドラム。ナッシュビルを拠点とするシンガー・ソングライターで、この後にスティーヴ・ペリー「オー・シェリー」、TOTO「アイル・ビー・オーヴァー・ユー」、デバージの「ドナは今」などの大ヒット曲をアーティストやプロデューサーと共作で書いています。

 

 このころのことを彼はこう回想しています。

「最初の頃のヒット曲は共作じゃなく自分一人で書いていたんだ。ソングライターとして食べていくことがメインじゃなくて、キーボーディストだったから。でも曲を書くことは好きだったんだ。だから音楽業界向けには書いたわけじゃなかったんだ。」

 この曲については

「正直言って失敗したんだ。いつもは歌詞と曲を並行して書くやり方をやっていて、それが僕の曲を書くモードだったんだけど、そのときは曲ができた時に「いいインスト曲になりそうだ」と思っちゃったんだ、それで、何年もの間、この曲にいつも立ち返って歌詞を書こうとしたんだけどうまくいかなくて、ある日突然冒頭のフレーズが出てきたんだ」                                      

                                                                                                   (TENNESEAN)

最初のつかみができると、どうすればいいかわかって、すごく早く書けるんだ。そして、妻のゲイルに聴かせたんだ。そしたら「まあまあね」って、それだけで僕はがっかりして一度曲を捨ててしまったんだ。それからまた、やっぱりなんとかしようと決めて、何人かに聴かせたんだ。僕の最初の音楽出版社の友人のボブ・ミルサップが「サビかブリッジのパートがあったほうがいい」と言って、僕はサビじゃなくブリッジを書いた。そして、他の人に聴かせると「サビがいるよ」って「そうしたら曲が長くなるよ」と言うと「どんな曲にもサビはある」だって」

                           (Songfacts)

 そして、結局友人のボブがデモテープを送ってくれたそうです。

「彼が、アン・マレー、ヘレン・レディ、シェールを選んで曲を送ってくれた。どうやって送ったか僕はわからないけど、直接彼女たちの家に送ったのかもしれない。でもどうにかして、彼女はそれを手にしたんだ。多分郵便に入っていて、聴いたんじゃないかな」

                           (TENNESEAN)

 大きな会社であればアーティストやプロデューサーに直接聞かせることができるわけですが、友人は小さな会社でしたからコネがなかったんですね、ランディの予想通り、デモは郵便で送られてきていたようで、育児で忙しかった彼女は "Listen To Again "と書いた箱にそのテープを入れていました。

「あの頃私は本当にたくさんのテープをチェックしていました。毎日私のところに送られてきて、何百ものテープがあったのです。時々耳が限界になって何を聴いているのかわからなくなったわ。そんな時は一度中断するしかない。少しでも可能性のある曲はその箱に入れておいて。「辛い別れ」はその箱の中にあったわ」

 

「その曲をもう一度聴いた時は、それが初めて聴いた曲だなんて信じられなくて座りこんでしまうしかなかった。とんでもなく美しく、とんでもなくいい曲だった。息もできないほどだった」         

                     (NMC AMPLIFY)

 

 彼女はすぐに自分が所属する会社に電話をして、この曲についてすぐに調べるように頼んだそうです。

 手元にあったはカセットだけで、そこには「ランディ・グッドラム」としか書いてなかったので、電話帳で名前を調べて、ようやく彼の連絡先をつかんだそうです。

 そして、この曲のレコーディングは、彼女が”魔法の瞬間”だったというほどのすばらしいものだったそうですが、この曲にはいわゆる”サビ”のパートがないことから、レコード会社はシングルにせず、他の曲をリリースすることに決めレコードをプレスする直前までいったそうです。

 

 この曲を心から気に入っていた彼女は納得できず、思い切った行動に出ます。

 キャピトル・レコードの社長に直接会いに行き「辛い別れ」をシングルにした欲しいと直談判したのです。

「私は今まで一度たりとも彼にお願いしたことはなかったの。普段、私はレーベルから何か言われたらそれに従っていたわ。だけど、どういうわけだかその時は、彼(社長)は私を見つめて「オーケイ」と言って、電話をとってレコードをプレスするのを止めてくれたのよ。結果、全米ナンバーワンになったから、私たちはどちらともヒーローみたいだったわ」

                        (NMC AMPLIFY)

 

 まさに、彼女の熱意が生んだナンバーワン・ヒットだったわけですね。

 ランディがメロディを思いついてから、アンがデモテープを聴くまでになんと7〜8年もの年月がたっていたそうです。

 

 ちなみに、日本ではこの曲は1980年に「幸福」というTBSドラマの主題歌になっています。

 

1999年にボーイゾーンがカバーし、全英ナンバーワンになっています。


Boyzone - You Needed Me (Official Video)

ランディ作のアン・マレーのもう一つのヒット「愛の残り火(Broken Hearted Me)」


Broken Hearted Me

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 「辛い別れ」など、ランディ・グッドラムが自身が書いた代表曲をセルフカバーしたアルバム

 

 ランディ・グッドラムの代表曲の一つ

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