まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲(せんきょく)を選曲(せんきょく)しました。。。古今東西のポップ・ソングのエピソード、洋楽和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。キャッチーでメロディアスなポップスは今の時代では”ニッチ”なものになってしまったのかなあとも思いますが、このブログを読んでくださる方の音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればと願っています。みなさんからの追加情報や曲にまつわる思い出などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「He Don't Know Nothin' Bout It」ジャム&ルイス・フィーチャリング・ベイビーフェイス(2020)

 おはようございます。

 今日は1990年代の音楽シーンの二大プロデューサー、ジャム&ルイスとベイビーフェイスが共演を果たした「He Don't Know Nothin'Bout It」です。


Jam & Lewis x Babyface - He Don't Know Nothin' Bout It (Official Video)

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Talkin' about all of the things he's gon' do to you
When he gets you home
Coming up short, making all them excuses
You're better off alone
Think he's fire 'cause he drive a six hundred that
He don't even own
Talkin' like he's the guy
He could 'bout have any girl he want


He don't know nothin' 'bout it
'Bout time you found a man,
He just behaven 'round it,
Girl he don't understand
What you go through, he ain't got a clue
What love really mеans to you
He don't know nothin' 'bout it
He don't know nothin' 'bout it


Talkin' 'bout all of thosе things he's goin' buy for you
Can't even get a loan 
Runnin' 'round town frontin' like he take good care of you
But everybody knows 
How can a guy think he fly
When he's still living at his mama's home
Say goodnight, ain't it time
Think it's only right that you let him go


He don't know nothin' 'bout it
'Bout time you found a man
He just behaven' around it
Girl he don't understand
What you go through, he ain't go a clue
What love really means to you
He don't know nothin' 'bout it


You need a man to be strong
That will always be there
Whenever you need him
You shouldn't have to call him
A man who will be
Be right there when you fall 
If you put your heart in his hands
Then he needs to be your friend
A friend who will listen 
To all of your needs 
If for no other reason
But to love, and to trust
And to be your everything
Something that every woman needs


Baby, baby, baby
Get him off your mind
Get him off your head
Get him out your soul
Get him out your bed
He don't know nothin' 'bout it

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ヤツがどんなことをするつもりかを話しているんだ

ヤツが君を家に送った時に

君には物足りなくて、言い訳ばかりするから

一人でいた方がマシさ

ヤツはイカしていると思うかい メルセデスを乗りまわして

自分の車じゃないのに

ヤツは欲しい女性は誰でも手に入れる

そんな男だって言っているみたいだね

 

ヤツは何もわかっちゃいないんだ

君が一人の男性を見つけた時のことを

ただそんなフリをしているだけさ

ヤツには理解できないのさ

君がどんな経験をしてきてか

ヤツにはちっともわからないのさ

愛が本当に君にとってどんな意味があるのか

ヤツは何もわかっちゃいないのさ

 

ヤツが君のために買おうとしているものについて話すよ

ローンさえ組めないんだ

街を走り回っていると 自分を大切にしてくれているように思える

だけど、みんな知っているんだ

ヤツがどうやっていなくなってしまうのか

ヤツはまだママの家に住んでいるんだから

おやすみと言って、彼を行かせることだけが正しいと思うしかない

 

ヤツは何もわかっちゃいないんだ

君が一人の男性を見つけた時のことを

ただそんなフリをしているだけさ

ヤツには理解できないのさ

君がどんな経験をしてきてか

ヤツにはちっともわからないのさ

愛が本当に君にとってどんな意味があるのか

ヤツは何もわかっちゃいないのさ

 

君にはいつもそこにいてくれる強い男が必要なんだ

必要な時には、いちいち電話しなくてもいい

君が倒れた時にまさにそこにいてくれる男が

君がヤツの手に心を委ねるのなら

ヤツは君の友人でなくちゃいけない

君が必要としているもの全部に耳を傾けてくれるような友人に

たとえ愛したり 信頼するだけの理由であっても

君のすべてになるためであっても

あらゆる女性が必要とする何かになるために

 

ベイビー、ベイビー、ベイビー

君の心からヤツを追い払うんだ

君の頭からヤツを追い払うんだ

君の魂からヤツを追い払うんだ

君のベッドからヤツを追い払うんだ

奴は何もわかっちゃいないんだから”       (拙訳)

 

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  1990年代の洋楽のヒット曲に慣れ親しんだ人たちであれば、この時代の大ヒットプロデューサーといえば、ジャム&ルイスとLA&ベイビーフェイスが”二大巨頭”だったということに異論はないと思います。

 

 ジャム&ルイスことジミー・ジャム&テリー・ルイスはミネアポリス出身でプリンスの一派から独立してブレイクした人たちです。ジャネット・ジャクソンの代表作はほぼ全部彼らの作品で、他にマイケル・ジャクソンマライア・キャリージョージ・マイケルなど超大物たちとも組んでいますし、宇多田ヒカルの『Addicted To You』や『Wait&See ~リスク~』も彼らのプロデュースでした。

 

 ベイビーフェイスのほうは LA.リード(のちにEPICやデフジャムといったレコード会社の社長になる凄腕ビジネスマンです)と組んで、ホイットニー・ヒューストントニー・ブラクストンボーイズIIメン、マライア、TLC、ベイビーフェイス単独でもマドンナ、エリック・クラプトンなど、最近ではアリアナ・グランデなどと仕事をし、ソロアーティストとしてもコンスタントに活動しています。

 

 僕は1980年後半から90年代前半まで、この二組のプロデューサーの作品を主に追っかけて聴いていました。特にベイビーフェイスが好きで、レコード会社の洋楽部にいたときに彼の「THE DAY」というアルバムを担当できて、本人とも会えたことは今でも嬉しい思い出です。

 

 当時マスコミも彼らをライバル・チームとして扱っていましたが、不仲なわけではなく、売れ始めた頃にジャム&ルイスがベイビーフェイスに業界の大物を紹介したことがあったという記事を読んだ記憶があります。

    彼らはお互いの仕事を認め合い、4人で一緒に食事をしたこともあるそうです。

 

 2017年にジャム&ルイスとベイビーフェイスが同時に、ソングライターズ・ホール・オブ・フェイム(ソングライターの殿堂)入りしたときに、ひさしぶりに顔を合わせたそうです。

 その頃、ジャム&ルイスは華々しいキャリアの中で”まだやっていないこと”として、自分たちのアルバムを作るという構想がありました。

 それはいろんなゲストとコラボレーションをするというもので、彼らのそのトップ・プライオリティがベイビーフェイスだったそうです。

 

 ジャム&ルイスのアルバムの全貌はまだわかりませんが、まず彼らのプロデュースで1991年にアルバムをリリースした”サウンズ・オブ・ブラックネス”とのコラボ曲「Til I Found You」という曲がリリースされ、それに続いて昨年11月にこの「He Don't Know Nothin'Bout It」がリリースされたというわけです。

 

  この曲の作者はジャム&ルイスとベイビーフェイスに加え、元”サウンズ・オブ・ブラックネス”のメンバーでジャム&ルイスから目をかけられプロデューサーとなり、マライア・キャリーのプロデュース、ライヴの音楽監督をつとめていた、ビッグ・ジム・ライトの名前があります。

 彼は2018年10月に亡くなっていますので、この曲は彼の生前から取りかかっていたものなのでしょう。

 

 曲のほうは、淡々としたミディアム・テンポで最初はちょっと地味かなと思ったのですが、大サビで、これこそがベイビーフェイス!という究極の”せつなとろける”(今とっさに作った言葉です、、)メロディが出てきます。ここまでのメロディは、本当に久しぶりじゃないでしょうか。

 メロディアスなものは今の時代と逆行していますから、彼はずっとメロディが抑え気味でしたが、彼の持ち味をよく知るかつてのライバルが、お前のメロディを全開にしろ、とでも言ったのでしょうか。

 自分のカラーを押し付けず、相手の持ち味を最大限発揮させる、ジャム&ルイスの懐の深さを感じますし、かつてのベイビーフェイス・ファンの僕は「これなんだよなあ、これ」と感涙してしまったわけです。

 

 そして、90年代R&Bがリバイバルしないかな、なんて思ったりもしました。

 

 ジャム&ルイスの傑作

 

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若き日のベイビーフェイスの代表作

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