まいにちポップス(My Niche Pops)

令和初日から毎日、1000日連続で1000曲を選曲しました(苦笑)。古今東西のポップ・ソングをエピソード、歌詞の和訳、マニアックなネタ、勝手な推理、などで紹介しています。みなさんの音楽鑑賞生活に少しでもお役に立てればうれしいです。みなさんからの情報や思い出話などコメントも絶賛募集中です!text by 堀克巳(VOZ Records)

「マイ・シャローナ(My Sharona)」ザ・ナック(1979)

 おはようございます。

 衝撃のデビュー、というといろんなアーティストが浮かぶと思いますが、この曲はポップ・ミュージック史上でも屈指の”衝撃のデビュー”なのは間違いないでしょう。ザ・ナックの「マイ・シャローナ」です。


The Knack - My Sharona (HQ)

 

  ”おお、僕のカワイイ人、カワイイ人よ

   いつ僕の相手をしてくれるの、ねえシャローナ

   僕のモーターを動かすのはキミさ

   暴走しようぜ ねえシャローナ

 

   止められない、あきらめない、こんなみだらな気持ちは

         盛り上がる、いつも 若い子に触れたくて

    僕の、僕のシャローナ

 

      もっとそばに来て、来てよ

   僕の瞳をのぞき込めるくらい近くに、シャローナ

         謎めいたまま、じらされる 僕の太ももをなぞるように シャローナ

 

    止められない、あきらめない、こんなみだらな気持ちは

          いつも盛り上がるのさ 若い女の子に触れたくて

    僕の、僕のシャローナ

 

   いつになったら僕にくれるの ご褒美を

   もう時間の問題じゃない?シャローナ

   それは運命、運命かな、それともただの僕の妄想?シャローナ

 

           止められない、あきらめない、こんなみだらな気持ちは

          いつも盛り上がるのさ 若い女の子に触れたくて

     僕の、僕のシャローナ                            ” (拙訳)

 

 

 

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Ooh, my little pretty one, my pretty one
When you gonna give me some time, Sharona
Ooh, you make my motor run, my motor run
Gun it coming off o' the line, Sharona

Never gonna stop, give it up, such a dirty mind
I always get it up, for the touch of the younger kind
My, my, my, aye-aye, whoa!
M-m-m-my Sharona

Come a little closer, huh, a-will ya, huh?
Close enough to look in my eyes, Sharona
Keeping it a mystery, it gets to me
Running down the length of my thigh, Sharona

Never gonna stop, give it up, such a dirty mind
I always get it up, for the touch of the younger kind
My, my, my, aye-aye, whoa!
M-m-m-my Sharona  M-m-m-my Sharona

When you gonna give to me, a gift to me
Is it just a matter of time, Sharona?
Is it d-d-destiny, d-destiny
Or is it just a game in my mind, Sharona?

Never gonna stop, give it up, such a dirty mind
I always get it up, for the touch of the younger kind
My, my, my, aye-aye, whoa!
M-m-m-my Sharona     M-m-m-my Sharona
M-m-m-my Sharona     M-m-m-my Sharona

 

Writer/s: BURTON AVERRE, DOUG FIEGER

 

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 ザ・ナックはバンドのフロントマン、ダグ・フィーガーが生まれ育ったミシガン州からロサンゼルスに移って結成されたバンドです。彼らの楽曲のほとんどが、ダグ単独もしくはリード・ギタリストのバートン・アヴェールとダグの共作によるもので、この「マイ・シャローナ」は二人の共作です。

   ちなみに、ダグは高校生の時に「Sky」というバンドをやっていて、ローリングストーンズのプロデューサーに手紙を書いてレコーディングしたいと直訴し、ロンドン録音でメジャーから二枚のアルバムを発売しています。

 

(アルバム・フルの音源です)


Sky - Don't Hold Back (1970 vinyl rip) 🇺🇸 Power Pop [Pre-Knack]

 

 このスカイが解散したことで、彼はロサンゼルスに行き再出発をはかったわけです。

 

    ザ・ナックは当時”ビートルズの再来”というキャッチ・フレーズが飛び交うほどの大騒ぎになりました。しかし、ダグ・フィーガーがのちに語ったところによると、ザ・ナックはザ・フーキンクスの影響を受けたバンドというコンセプトで作られたのだそうです。

(もちろん、彼はビートルズの大ファンでもありましたが)

 

 

 この曲の”シャローナ”というのは実在した女性で、ダグが彼女に一目惚れして書いたものだと言われています。

 ギターのバートンが以前から聴かせてくれていた短いフレーズを使って、そこに”シャローナ”の歌のアイディアを当てはめることで、わずか15分で書きあがったそうです。

 

 モデルの女性はシャローナ・アルペリンといって、彼がたまたま入った洋服屋で働いていました。彼女はまだ17歳で25歳のダグとは年が離れていて、しかもそれぞれ付き合っている相手がいました。

 しかし、ダグは猛烈にアタックしたようで、自分のコンサートにも頻繁に招待したようです。

 熱意に押し切られたシャローナは一年後にダグと付き合い始め、「マイ・シャローナ」が爆発的なヒットになるのをバンドのすぐそばで目の当たりにすることになります。

 また、「マイ・シャローナ」のオリジナルのシングル・ジャケットには彼女がモデルとして写っています。

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   1978年の6月にザ・ナックはロサンゼルス中のクラブでライヴをやり始めると11月には噂を聞きつけて来たレコード会社から契約の申し込みが殺到したそうです。彼らが演奏した中でも、この「マイ・シャローナ」はお客さんの反応も、関係者の反応もずば抜けていたそうです。

 そして、一年後の1979年の6月に「マイ・シャローナ」が発売され大ブレイクするわけですから、初ライヴからわずか一年でミリオン・ヒットを出したバンドなんて、音楽史上他にはいないんじゃないでしょうか。

 

 「マイ・シャローナ」が売れた原因はもちろん曲のインパクトの強さによるものでしょうが、時代の流れとしてシンプルなロックンロールが蘇ってきた時期でもありました。

 イギリスで起こったパンクが最大の起爆剤ですが、そのシーンの中でエルヴィス・コステロ、プリテンダーズ、や”パブ・ロック”など1960年代のロックンロール・サウンドを見直すアーティストが数多く現れました。アメリカではパンクじゃなくそっちがウケたんですね。そういったアーティストと同じスタンスのアメリカ人バンドだったのが”ザ・ナック”でした。

 そういうムーヴメントの追い風がある中で、最もわかりやすくしかも”つかみ”が強い曲をば〜んと打ち出したので、瞬く間に売れたのだと僕は考えています。でなければ、新人なので売れるのにもっと時間がかかったはずです。

 

 

 急すぎる成功は代償を求められるのがこの世界の法則のようで、彼らは次のアルバムで一気に失速し、ダグはアルコール依存症になり、シャローナとも破局してしまったそうです。

 

 セカンド・アルバムはマスコミの多くが酷評したことが、彼らの失速に大きな影響を与えることになったわけですが、ダグの心境は複雑でした。というのも、セカンド・アルバムの曲もファースト・アルバムと同じくデビュー前にすでに出来上がっていたもので、ダグは二枚組アルバムでデビューしたいという考えがあったのです。

 彼にとってファーストとセカンドは同じ作品のようなもので、片方は絶賛され爆発的に売れ、片方は酷評されコケてしまったわけです。

 

 2010年にダグは癌で亡くなると、ザ・ナックの活動も終わりました。

 

 ちなみに、シャローナ・アルペリンはロサンゼルスでエンターテイメント業を得意先とする不動産業で大成功しています。

 彼女のHPは<mysharona.com>というアドレスで、彼女の写真と『MY SHARONA』の文字が浮かび、ザ・ナックの「マイ・シャローナ」が流れてきます。

 

 別れた後も、ふたりは友人として長く交流していたようです。

 

  

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